7月23日、Matthias Bastianが「Cisco bets its small open cybersecurity models can outperform GPT-5.5 at vulnerability detection for a fraction of the cost」と題した記事を公開した。Ciscoが公開した小型セキュリティ特化AIモデル「Antares」は、500件のコードリポジトリを約15分・1ドル未満でスキャンできるという。同じ作業をGPT-5.5に行わせると5時間・100ドル超かかるとされており、そのコスト差は約100倍に上る。
500リポジトリを15分・1ドル未満でスキャン
Ciscoのセキュリティ研究部門Cisco Foundation AIが公開したAntares-350MとAntares-1Bは、ソフトウェアコードの脆弱性を検出するための小型AIモデルだ。パラメータ数はそれぞれ3億5000万と10億と小さいが、そのコストパフォーマンスが際立っている。
Axiosの報道によれば、CiscoのテストではAntaresが500件のコードリポジトリを約15分・1ドル未満でスキャンした。一方、同じ作業をGPT-5.5に行わせると5時間・100ドル超かかったという。
開発者のAman PriyanshuはXへの投稿で、最小モデルのAntares-350Mは1ドルあたりに検出できる脆弱性の数が、Cognition社のDevin Security Swarmのような大型AIエージェントの約150倍に上ると主張している。

CiscoのAntaresモデルは脆弱性検出のコストパフォーマンスで優位を示す。画像: Aman Priyanshu via X
ローカル実行でコードが社外に出ない
両モデルはローカルで動作するため、機密性の高いソースコードが外部に送信されない点も実務上の強みだ。大規模言語モデルのAPIに社内コードを送ることへの懸念は、セキュリティエンジニアの間では長年の課題だった。クラウドAPIへのコード送信を社内ポリシーで禁じている企業にとっては、ローカル実行可能な小型モデルという選択肢は実用上の意味が大きい。
技術レポートによれば、モデルの学習データは約72%がセキュリティ概念に関するデータ、約15%がコード検索履歴で構成されているという。汎用モデルとは異なり、セキュリティ特化のドメインデータで訓練された設計だ。
なお、Cisco Foundation AIはCiscoが2025年に設立したセキュリティ特化のAI研究部門で、サイバーセキュリティ領域に絞ったオープンモデルの研究・公開を主なミッションとしている。セキュリティ特化の小型モデルが注目される背景には、汎用大規模モデルのAPI利用に伴うコスト・プライバシー・レイテンシの課題があり、特定ドメインに絞ることでパラメータ数を大幅に削減しつつ実用的な精度を維持しようという方向性は、近年のLLM研究における一つの潮流でもある。
社内向けに30億パラメータ版を温存
Ciscoはさらに大きな30億パラメータ版を自社製品向けに非公開で保有しているとされる。このモデルはGPT-5.5に近い性能を発揮し、自身の最大200倍のサイズのオープンモデルを上回ると報じられている。
また、Ciscoはオープンなセキュリティ向けAIツールのための業界コンソーシアム設立も検討中だという。公開モデルをエコシステムの入口として位置づけ、業界横断の標準化や知見共有を目指す動きと読める。
「大きいほど良い」への疑問符
今回の発表は、セキュリティ用途においては汎用の大規模モデルよりも小型の特化モデルの方が現実的な選択肢になりうることを示す事例だ。脆弱性検出のように対象ドメインが明確なタスクでは、モデル規模よりも学習データの質と特化度が効くという議論は以前からあり、Ciscoの取り組みはその実証に近い。
ただし、元記事タイトルにある「outperform(上回る)」はコストパフォーマンス面での主張が主であり、検出精度の全面的な同等性・優位性を示すものではない点には留意が必要だ。Ciscoが公表したベンチマーク結果の詳細は技術レポートで確認できる。
※編集部の考察:セキュリティスキャンのような高頻度・大量実行が求められるユースケースでは、推論コストの差は運用コスト全体に直結する。「精度で勝てなくてもコストで選ばれる」モデルが登場してきたことは、企業のAI調達の判断軸に変化をもたらす可能性がある。
詳細はCisco bets its small open cybersecurity models can outperform GPT-5.5 at vulnerability detection for a fraction of the costを参照していただきたい。