7月21日、MarkTechPostが「Poolside Releases Laguna S 2.1, an Open-Weight Agentic Coding Model Punching Above Its Weight Class on SWE-Bench Multilingual」と題した記事を公開した。この記事では、Poolsideが公開したオープンウェイトのエージェント型コーディングモデル「Laguna S 2.1」が、パラメータ規模で大幅に上回る競合モデルに匹敵するベンチマーク性能を示したことについて詳しく紹介されている。
118Bパラメータで1.6Tモデルに対抗
Poolsideが公開したLaguna S 2.1は、総パラメータ数118B(1,180億)のMixture-of-Experts(MoE)モデルだ。MoEとは、推論時に全パラメータを使わず一部の「専門家(エキスパート)」だけを活性化するアーキテクチャで、Laguna S 2.1はトークンあたり約8Bパラメータ(全体の6.8%)のみを使用する。残りはメモリに常駐するが演算には関与しない。これがスケールに対するコスト効率の源泉だ。
この設計で最も如実に現れるのが、DeepSWE v1.1ベンチマークの結果だ。Laguna S 2.1は**40.4%を記録したのに対し、DeepSeek-V4-Pro-Max(総パラメータ1.6T、活性化49B)は9.0%**にとどまった。活性化パラメータ比で約6分の1のモデルが、このベンチマーク上で4倍以上のスコアを出した格好だ。なお、DeepSeek-V4-Pro-MaxはDeepSeekが開発した大規模MoEモデルであり、同社のフラッグシップラインナップに位置づけられるモデルだ。ただしDeepSWE v1.1は特定タスクに特化したベンチマークであり、後述の他指標では両者の差は異なる。
ベンチマーク比較
Poolsideが公開した主要ベンチマークの結果は以下の通り。
| ベンチマーク | Laguna S 2.1 (118B-A8B) | Tencent Hy3 (295B-A21B) | DeepSeek-V4-Pro-Max (1.6T-A49B) | Kimi K3 (2.8T-A50B) | Claude Fable 5 |
|---|---|---|---|---|---|
| Terminal-Bench 2.1 | 70.2 | 71.7 | 64.0 | 88.3 | 88.0 |
| SWE-Bench Multilingual | 78.5 | 75.8 | 76.2 | – | – |
| SWE-Bench Pro (Public) | 59.4 | 57.9 | 55.4 | – | 80.3 |
| DeepSWE v1.1 | 40.4 | – | 9.0 | 69.0 | 70.0 |
SWE-Bench Multilingualでは**78.5%**で公開モデル中トップ。Terminal-Bench 2.1は70.2%で、クローズドの大規模モデル(Claude Fable 5、Kimi K3)には届かないが、開示サイズのオープンモデルとしては首位に立つ。一方でDeepSWE v1.1ではKimi K3(69.0%)やClaude Fable 5(70.0%)が上位におり、Laguna S 2.1の40.4%が全ベンチマークで首位というわけではない点は留意が必要だ。PoolsideはDeepSWE v1.1の評価軌跡(トレース)をtrajectories.poolside.aiで公開している。
「Thinkingモード」が性能を大きく左右する
Laguna S 2.1にはoffとmaxの2つの推論モードがある。maxがデフォルトで、モデルが自分でテスト時の計算量を決める。現時点ではユーザーによる細かい調整(low/medium/high等)は提供していない。
maxモードがスコアに与える影響は大きく、Terminal-Bench 2.1は60.4%→70.2%、DeepSWEは16.5%→40.4%に跳ね上がる。代償はトークン消費量で、DeepSWEの軌跡では思考モード時に平均249kトークンを使うのに対し、非思考モードでは99kにとどまる。
実際に何をやったか:3つの公開トレース
Poolsideはモデルの挙動を示すため、編集なしの3つの実行ログを公開している。
- ブラウザエンジンの自作:空のフォルダからHTML/CSSブラウザエンジンを構築。50分間・181ステップ、人間の介入なしで完了し、ヘッドレスChromiumで自己検証まで行った。
- エージェントハーネスの最適化:Poolside自身のエージェント基盤を最適化。O(n²)の文字列結合をバッファに置き換え、速度5.2%向上・メモリ割当を約71%削減した。
- 数学問題の再導出:サンドボックスにPythonがなかったためPerlを使い、Erdős Problem #397を68分で独立再導出。GPT-5.2 Proが2026年1月に解いた同問題を、知識カットオフ(2025年11月)のモデルが独自に再発見した格好だ。
実際に動かせるか?
MoEは活性化パラメータが少なくても全パラメータをメモリに保持する必要があるため、運用コストの見積もりは活性化8Bではなく総パラメータ118Bで考える必要がある。
- NVFP4/INT4(4bit量子化):約59GB → NVIDIA DGX Spark(統合メモリ128GB)1台で動作
- FP8:約118GB → DGX Spark 1台またはH200 1台
- BF16:約236GB → DGX Spark 2台またはマルチGPUノード
推論フレームワークは**vLLM、SGLang、Ollama**をリリース初日からサポート。ホスト型アクセスはOpenRouter経由で提供され、256Kコンテキストは無料、1Mコンテキストは入力$0.10/出力$0.20/キャッシュ読み込み$0.01(各1Mトークンあたり)。
ウェイトはHugging FaceでOpenMDW-1.1ライセンスのもと公開されており、BF16、FP8、INT4、NVFP4に加えGGUFおよびMLX変換済みファイルも提供している。
開発速度も目を引く
学習開始から公開まで9週間未満。2026年5月22日に4,096台のNVIDIA H200 GPUで事前学習を開始した。強化学習をFP8精度で実施したのはPoolsideモデルとして初めてだという。Laguna XSファミリーのスケールアップ版であり、3カ月足らずで3本目のモデルリリースとなる。
詳細はPoolside Releases Laguna S 2.1, an Open-Weight Agentic Coding Model Punching Above Its Weight Class on SWE-Bench Multilingualを参照していただきたい。