7月21日、The Decoderが「Alibaba's Qwen Audio 3.0 TTS Plus tops the competition in the text-to-speech rankings」と題した記事を公開した。Alibabaのテキスト音声合成モデル「Qwen-Audio-3.0-TTS-Plus」がArtificial AnalysisのSpeech Arenaリーダーボードで首位を獲得したという内容だ。
TTS市場の競争と「Qwen Audio」シリーズの位置づけ
テキスト音声合成(TTS)モデルの市場は、OpenAIやElevenLabs、Cartesia、Googleといった大手が品質・速度・多言語対応の各軸でしのぎを削る競争領域だ。Alibabaは音声理解と音声生成の両方を扱うマルチモーダルシリーズとして「Qwen Audio」を展開してきており、今回のQwen-Audio-3.0-TTS-Plusはその最新世代にあたる。前世代と比べてボイスクローニング精度や感情表現の柔軟性が強化されており、今回の品質評価首位獲得はシリーズとしての到達点を示すものといえる。
Eloスコア1,236でリーダーボード首位
Artificial AnalysisのText to Speech Leaderboard(プロバイダーボイス部門)で、Qwen-Audio-3.0-TTS-PlusがEloスコア1,236で首位に立った。
このリーダーボードはいわゆるSpeech Arena方式を採用している。ユーザーが2つのモデルの出力を聴き比べ、どちらが優れているかを投票する「ペアワイズ比較」を繰り返し集計することで、チェスのレーティングとして知られるEloスコアを算出する仕組みだ。主観的な音声品質をユーザー評価として定量化できる手法として、LLM評価の分野で普及したChatbot Arenaと同様のアプローチが音声モデルにも適用されている。
2位はSpeechifyAIのSimba 3.2(スコア1,234)で、その差はわずか2ポイント。3位にGemini 3.1 Flash TTS(1,214)、4位にSonic 3.5(1,207)が続く。

Qwen-Audio-3.0-TTS-PlusがSimba 3.2をわずか2ポイント差で上回った。画像: Artificial Analysis
自然言語でスタイルを制御、16言語対応
モデルはFlashとPlusの2バージョン構成だ。Flashは約300ミリ秒のレイテンシでリアルタイム対話向けに設計されており、Plusは高品質な音声出力を重視した仕上がりになっている。
対応言語は16言語。タガログ語、マレー語、タイ語、ベトナム語といったTTSモデルではカバーが手薄になりがちな言語のほか、複数の中国語方言にも対応している。
話し方のスタイルは自然言語の指示で変更できる。さらに[angry]や[giggles]のようなタグを使って非言語的な表現(感情表現や笑い声など)を差し込む機能も持つ。
ボイスクローニング(参照音声を元に声質を再現する機能)においては、ノイズやエコーが多い音声を参照した場合でも、前バージョンより精度が向上したとAlibabaは説明している。
音声サンプルは公式デモページで確認できる。
速度は明確な弱点
品質面では首位に立つ一方、速度は大きな課題だ。生成速度は毎秒16文字にとどまり、4位のSonic 3.5(120文字/秒)と比べると約7.5分の1、2位のSimba 3.2(30.2文字/秒)と比べても半分程度に過ぎない。タイトルに掲げた「速度は競合の7分の1」という数値は、この16文字/秒÷120文字/秒≒1/7.5という、Sonic 3.5との比較に基づくものだ。リアルタイム性が求められる用途ではFlashバージョンでも補いきれない場面が出てくる可能性がある。
料金はAlibaba Cloud Model Studio経由で100万文字あたり27.60ドル。
まとめ
品質評価では首位を取ったが、スループット(処理速度)の面では競合に大きく劣る——というのが現時点での評価だ。低レイテンシが必要な用途にはFlashバージョンが用意されているものの、処理速度の低さはリアルタイム系アプリケーションでは依然として制約になりうる。一方で、東南アジア系言語を含む16言語への対応幅と感情表現の柔軟性は、グローバル展開を視野に入れたコンテンツ制作やナレーション用途において競争力になりうる。
今後の注目点は、この速度の壁をAlibabaがどう縮めていくかだ。Eloスコアでは首位とはいえ2位のSimba 3.2との差は2ポイントと僅差であり、リーダーボードの順位は今後も入れ替わる可能性が高い。TTSモデルの評価競争がLLM同様に激化しつつある現在、品質・速度・コストの三軸をどう最適化するかが各プレイヤーの課題となっている。
※上記のまとめにおける今後の展望は編集部の考察を含む。
詳細はAlibaba's Qwen Audio 3.0 TTS Plus tops the competition in the text-to-speech rankingsを参照していただきたい。