7月21日、AWSが「Introducing the Amazon GuardDuty investigation agent: on-demand AI-powered threat assessment」と題した記事を公開した。この記事では、Amazon GuardDutyに新たに追加されたAIによる調査エージェントがセキュリティ調査の時間を数時間から数分に短縮する機能について詳しく紹介されている。
セキュリティ調査を数時間から数分へ
SOCアナリストの慢性的な人手不足やアラート疲れ(Alert Fatigue)が業界全体の課題となる中、GuardDutyのアラートを受けてから実際に脅威を評価するまで、複数のツールをまたいだデータ収集・相関分析に数時間を費やすことは珍しくない。Amazon GuardDuty investigation agent(現在パブリックプレビュー中)はその作業を自動化し、調査時間を大幅に短縮する。
出力結果には以下が含まれる:
- リスクレベル(Info / Low / Medium / High / Critical)
- 信頼スコア(Unknown / Low / Medium / High)
- MITRE ATT&CK®テクニックマッピング(どの攻撃手法に該当するかの分類)
- 影響を受けたAWSリソースのマッピング
- 優先順位付きの推奨アクション(AWSCLIコマンド込み)
アカウント単位の調査は2〜5分、特定のfinding(検出結果)の詳細調査は10〜12分で完了する。
自然言語でトリガーできる調査プロンプト
注目すべき設計が --trigger-prompt パラメータだ。最大2,048文字の自由記述で調査の文脈を与えられる。GuardDutyのメタデータだけでは捉えきれない背景情報(「このIPは社内の既知の踏み台だ」「昨日から不審な動きがある」等)をエージェントに伝えることができる。
aws guardduty create-investigation --region=us-east-1 \
--detector-id 12abc34d567e8fa901bc2d34eexample \
--trigger-prompt "Investigate this finding ID 1ab2c3d4e5f6a7b8c9d0e1f2a3b4c5d6"
組織全体を対象にした調査も一行で実行できる:
aws guardduty create-investigation --region=us-east-1 \
--detector-id 12abc34d567e8fa901bc2d34eexample \
--trigger-prompt "Investigate findings across my AWS Organization"
調査はAPIの性質上非同期で実行される。ステータス確認は30秒ごとのポーリングが推奨されており、RUNNING → COMPLETED の遷移を待つ設計だ。
実際の調査レスポンス例
CLIで get-investigation を呼ぶと、以下のような構造化レスポンスが返る:
{
"Investigation": {
"Status": "COMPLETED",
"RiskLevel": "Critical",
"Risk": "Active multi-stage runtime compromise on EKS worker node with root-privileged reverse shell, Docker socket access, malicious file execution, and 500 multi-tactic runtime signals — behavioral evidence is consistent with a genuine intrusion.",
"Confidence": "High",
...
}
}
このサンプルはEKSワーカーノードへの多段階侵害(root権限リバースシェル、Dockerソケットアクセス、悪意あるファイル実行)を検出したケースで、RiskLevel: Critical / Confidence: High と判定されている。単なるアラートではなく、侵害の確信度まで含めた判断がAPIから直接得られる点が従来と大きく異なる。
AWS MCP Serverとの統合
investigation agentのAPIは**AWS MCP(Model Context Protocol)サーバー**経由でも呼び出せる。これにより、Claude等のAIアシスタントと組み合わせたセキュリティオペレーション(SecOps)ワークフローへの組み込みが可能になる。既存のSIEMや第三者ツールへGuardDuty findingsを転送しているパイプラインに対しても、調査結果を付加してから流す構成が取れる。
前提条件と権限設定
利用にはGuardDutyが有効なAWSアカウントと、サポート対象リージョンでの実行が必要。IAM権限は以下の3つを付与する:
{
"Version": "2012-10-17",
"Statement": [
{
"Effect": "Allow",
"Action": [
"guardduty:CreateInvestigation",
"guardduty:GetInvestigation",
"guardduty:ListInvestigations"
],
"Resource": "*"
}
]
}
権限モデルの注意点として、メンバーアカウントは自分のアカウントの調査結果の取得・一覧表示のみ可能で、調査の新規作成はできない。調査の作成は管理者アカウントに限られる。これはマルチアカウント構成を取る組織にとって実運用上の重要な制約となる。AWS Organizationsの委任管理者(Delegated Administrator)としてセキュリティ専用アカウントを指定し、そこから一元的に調査を実行する構成が現実的な対応策となる。
なお、調査の実行時にはクロスリージョン推論(Cross-Region Inference Service:地理的に最適なリージョンでLLM推論を行う仕組み)が使われる。データ自体は調査リクエスト元のリージョンに保存されるが、推論処理は別リージョンで行われる場合がある点は把握しておく必要がある。特にGDPRや国内のデータレジデンシー規制の対象となる環境では、推論処理がどのリージョンで実行されうるかをAWSの公式ドキュメントで事前に確認しておくことが望ましい。
詳細はIntroducing the Amazon GuardDuty investigation agent: on-demand AI-powered threat assessmentを参照していただきたい。