7月21日、The Atlanticが「The AI Bubble Is No Ordinary Bubble」と題した記事を公開した。現在進行中のAIバブルが過去のバブルと構造的に異なる理由、そしてそれが崩壊した際に何が起きるかを論じている。
「普通のバブル」ではない理由
ドットコムバブル(1990年代後半)や住宅バブル(2000年代後半)は、一般家庭が広く巻き込まれた現象だった。個人投資家がE-Tradeで株を買い漁り、住宅ローンで投資物件を購入した。1995年から2001年の間に米国の株式保有世帯は13ポイント増加し、2,752社以上がIPOを実施した。住宅バブル時は、最盛期に発行された住宅ローンの40%が投資・別荘用物件向けだった。
今回は違う。一般市民の株式保有率はほぼ横ばいで、家計債務は可処分所得とGDP比で低下している。OpenAIもAnthropicも非上場企業であり、「AIバブルで全財産を賭けている知人がいる」という人はほとんどいない。
このバブルを動かしているのは、超富裕層の企業群だ。
二重構造のバブル:設備投資と株式評価額の両面
記事では、AIバブルを「二つの重なり合うバブル」として捉えるべきだと指摘する。この二重構造こそが、今回のバブルの最大の特徴であり、崩壊時のリスクの複雑さを生み出している。
ひとつ目は設備投資バブルだ。 AIは従来のデジタルビジネスと異なり、極めて資本集約的な産業である。スタートアップが1つのアルゴリズムを訓練するために必要な計算能力は、通常のソフトウェア製品開発の数千倍に上る。現在、米国内では1,500か所以上のデータセンターが建設中であり、Amazon、Microsoft、Alphabet、Metaの4社だけで今年の設備投資は7,000億ドル超に達する。このAIインフラ投資が、事実上現在の米国GDP成長のほぼすべてを支えている状態だ。これが止まれば、米国は景気後退に陥りかねない。
ふたつ目は株式評価額バブルだ。 NvidiaはMetaにチップを売り、AmazonはOpenAIにクラウドコンピューティング基盤を提供する。この収益の急増と「AIがいずれ生産性と利益を押し上げる」という期待が株価を押し上げた。「マグニフィセント・セブン」(Alphabet、Amazon、Apple、Meta、Microsoft、Nvidia、Tesla)はS&P 500の3分の1の時価総額を占める。OpenAI単体の評価額は、Eli Lilly、JPMorganチェイス、Visa、コストコ、エクソン・モービル、ウェルズ・ファーゴ、CVS Health、マクドナルド、ボーイングを合わせた額を超える。
この二つのバブルは互いに依存し合っている。設備投資が株価を支え、高い株価評価がさらなる資金調達を可能にし、それがまた設備投資に回る——という構造だ。
収益化の構造的矛盾と「ウロボロス」の閉じた循環
この規模の評価額を正当化するには、急速な収益化が不可欠だ。元記事によれば、PitchBookのアナリストHarrison Rolfesの試算では、OpenAIは2030年までに約1,000億ドルのフリーキャッシュフローを生み出す必要がある。一方、同じく元記事が引用するアナリスト予測では、同年にOpenAIが100億〜300億ドルの赤字を計上するとされている。この二つの数字の乖離が、構造的矛盾の核心だ。
そして記事が描く最も鋭い構図が、元記事中で「兆ドル規模のウロボロス(自分の尾を食べるヘビ)」と表現される循環構造だ。ビッグテックがAIスタートアップに資金を提供し、そのスタートアップがビッグテックのクラウドサービスを購入し、その収益でビッグテックが新たなAIモデルを動かす——サンフランシスコとサンノゼの間で閉じた循環が続く。7,000億ドルの投資は経済全体に広がっているのではなく、同じプレイヤーたちの間を回っているにすぎない。一般市民はこの循環の外に置かれており、それゆえ恩恵も届きにくいが、崩壊の波及リスクだけは免れない。一社に何かが起きれば、連鎖する可能性がある。
高金利下でのレバレッジという新たなリスク
過去のバブルは「低金利」が燃料だったが、今回は金利が比較的高い状況でも拡大している点が異なる。当初はベンチャーキャピタルや大手テック企業が手元資金で投資していたが、建設コストの増大により、社債やプライベートクレジット(銀行以外の機関が行う融資)への依存が高まっている。
コロンビア・ビジネス・スクールのStijn Van Nieuwerburgh氏の研究によれば、これらの取引は複雑で不透明であり、伝統的なバランスシートには現れない構造になっているため、「リスクの最終的な分配が見えにくい」状態だ。Morningstarは市場の最近の貸し渋りを「バイサイドの消化不良(buy-side indigestion)」と表現している。
なお、OpenAIのSam Altman自身も「われわれはAIバブルの中にいる」と発言しており、IMFも7月の世界経済見通し更新でAIバブルを金融安定への重大リスクとして挙げている。
バブル崩壊時の影響
バブルに直接参加していない一般市民も無傷ではない。退職年金や企業年金はシリコンバレー株に投資されており、中小企業は信用収縮の影響を受ける。記事は最後に皮肉を込めてこう締める——「そのすべてが起きる前に、AIに仕事を奪われている可能性もあるが」。
詳細はThe AI Bubble Is No Ordinary Bubbleを参照していただきたい。