7月22日、SiliconAngleが「AI data center builder Fluidstack raises $830M at $7.5B valuation」と題した記事を公開した。AIデータセンターをプレハブ工法とロボット自動化で通常の数年から6ヶ月に短縮するスタートアップ・Fluidstackが、8億3000万ドル(約1200億円、1ドル≒145円換算)の資金調達を完了し、評価額75億ドル(約1兆円超)に達した。Anthropicと組んで米国内に500億ドル規模のAIインフラを構築する計画の中核企業として注目を集めている。
「6ヶ月でデータセンターを建てる」という命題
AIインフラ需要の急増を背景に、データセンターの建設速度がボトルネックになりつつある。通常、マルチギガワット規模のデータセンター建設には数年単位の工期が必要だ。Fluidstackはこれを6ヶ月に短縮することを目標に掲げている。
その手法の核心は、プレハブ(工場製造済みモジュール)方式の採用だ。従来の建設フローでは、建材や機器を現地に搬入し、現場で組み立てる。作業の多くは人手に依存している。Fluidstackはこの工程の一部を工場内に移すことで、ロボットによる自動化を可能にする。
求人ページの内容から、同社がカスタムロボットセル(ロボットアームと補助システムで構成される自動化ユニット)の開発を進めていることが確認できる。具体的には、データセンター部品の溶接や塗装工程にロボットを活用している。製造ラインではコンベアベルト沿いに複数のロボットセルを配置し、各モジュールが異なる工程を担う構成だ。
Anthropicとの提携と巨額ラウンドの背景
Fluidstackが広く知られるようになったのは2024年11月、Anthropicとのデータセンター大規模建設プロジェクト提携が発表されたときだ。両社は今後数年間で米国内に500億ドル相当のAIインフラを建設する計画を持つ。500億ドルという規模は、複数のマルチギガワット級施設を米国各地に展開することを前提とした長期計画であり、最初の施設は2026年中に稼働予定とされている。
今回のシリーズAラウンドのリード投資家はSituational Awarenessだ。同ファンドの詳細については元記事を参照していただきたいが、本記事では元記事の記述を超えた注釈は付けない。
ハードウェア製造だけでなく、電力確保・運用管理まで
Fluidstackの事業領域はモジュール製造にとどまらない。
- 電力確保の支援:AIインフラプロジェクト最大の難題の一つとされる、データセンター向け電力の調達をサポートする
- 建設後の運用管理:完成後の施設管理も提供
- クラスターマネジメントプラットフォーム:AIモデルへのハードウェア割り当てを自動化するソフトウェアを内製開発中。オブザーバビリティ(可観測性)やアラートツールも提供予定
求人情報によれば、プロダクトデザイナー職でこのクラスター管理基盤の開発が明示されており、インフラのハードウェア側だけでなくソフトウェアスタック全体を自社で抱える垂直統合モデルを志向していることがわかる。
競合Crusoeも30億ドル調達報道
Fluidstackの発表直前には、競合のCrusoe Inc.が30億ドル調達・評価額300億ドルを目指して資金調達中との報道も出ている。CrusoeもFluidstack同様、プレハブモジュールによるAIデータセンター組み立てとカスタムソフトウェアによるサーバー管理を手がける。評価額ベースではCrusoeが上回るが、今回の調達額単体ではFluidstackが大きい。
AIデータセンターの「建設会社」カテゴリに、巨大な資本が流入しつつある局面だ。
詳細はAI data center builder Fluidstack raises $830M at $7.5B valuationを参照していただきたい。