7月22日、Ars Technicaが「Google announces Gemini 3.6 Flash and cybersecurity AI, teases 3.5 Pro and Gemini 4」と題した記事を公開した。Googleが新たに3つのAIモデルを発表し、さらにGemini 3.5 ProとGemini 4の開発状況についても言及した内容だ。
Gemini 3.6 Flash:コード生成の弱点を修正した実質的なアップデート
今回の発表で最も注目すべきは、Gemini 3.5 Flashをわずか数ヶ月で置き換えた「Gemini 3.6 Flash」だ。5月のGoogle I/Oで登場したばかりのGemini 3.5 Flashはすでに非推奨(deprecated)となり、開発者・ユーザーは3.6 Flashへの移行を求められる。
3.6 Flashへの改善は、3.5リリース後のユーザーフィードバックを受けたものだ。特にコード生成の性能については、3.5 Flashが期待を下回っていたとArs Technicaは指摘している。Googleがトークンコスト削減に注力するあまり、品質面でのトレードオフが生じていた可能性がある。
コーディング性能の指標となるDeepSWEベンチマークでは、3.5 Flashの37%から3.6 Flashは49%へと大幅に向上した。コンピューター操作(computer use)の評価指標OSWorldでも78.4%から**83%**に改善している。
さらに実用面で大きいのがトークン効率の向上だ。同等のタスクをこなしながら、使用トークン数が約17%削減された。エージェント型ワークフロー(複数のAI呼び出しを組み合わせて自動処理するシステム)では、より少ないステップ・少ないトークンでタスクを完了できるため、開発者にとって直接的なコスト削減につながる。
APIの価格は以下のとおりだ:
| モデル | 入力(1Mトークンあたり) | 出力(1Mトークンあたり) |
|---|---|---|
| Gemini 3.5 Flash(旧) | $1.50 | $9.00 |
| Gemini 3.6 Flash(新) | $1.50 | $7.50 |
出力コストが$9→$7.50と削減されており、出力量の多いアプリケーションほど恩恵を受ける。また、computer useがGemini API上で標準機能として提供されるようになった点も変更点の一つだ。
サイバーセキュリティ特化モデル「Gemini 3.5 Flash Cyber」
今回の発表でユニークなのが、「Gemini 3.5 Flash Cyber」だ。Googleが提供するAIモデルとしては初のサイバーセキュリティ特化版となる。詳細な仕様はまだ限定的だが、セキュリティ用途に最適化されたモデルとして3.5系列から派生している。
セキュリティAI領域では、MicrosoftがSecurity Copilotを展開し、OpenAIもサイバーセキュリティ向けの取り組みを強化するなど、大手テック各社が参入を競っている。Googleとしては、セキュリティオペレーションセンター(SOC)向けのGoogle Security Operationsなど既存のセキュリティ製品群とGeminiを統合する方向性を以前から示しており、「Cyber」モデルの登場はその流れと一致する。脆弱性解析、マルウェア解析、インシデント対応といった専門的なセキュリティタスクにモデルを特化させることで、汎用モデルでは対応しきれない精度や判断基準の厳格さを実現しようとしているとみられる。
※編集部の考察:セキュリティ特化モデルは、一般公開よりもエンタープライズ契約や政府機関向けに段階的に展開されるケースが多い。今後の正式発表に注目したい。
超高速・超低コストの「Gemini 3.5 Flash Lite」
もう一つの新モデル「Gemini 3.5 Flash Lite」は、Googleの現行ラインナップで最も効率的なモデルと位置づけられている。処理速度は350トークン/秒を達成しており、大規模なエージェントシステムを低コストで運用したいケースを想定している。
ベンチマーク上の性能は「約1年前のフロンティアモデル並み」とGoogleは説明する。価格は入力$0.30/1M・出力$2.50/1Mで、前世代の3.1 Flash Lite($0.25/$1.50)より若干高くなっている。
※編集部の考察:前世代比で価格が上がっている点は一見逆行するように映るが、「約1年前のフロンティアモデル並み」という性能水準を踏まえると、単純なコスト比較よりも性能あたりの費用対効果で評価すべき側面がある。350トークン/秒という処理速度はリアルタイム応答が求められる用途では大きな差別化要因であり、Googleとしては純粋な最安値路線ではなく「高速かつ十分に賢い」ニッチを狙った価格設定とも読める。
Gemini 3.5 ProとGemini 4は?
今回の発表で開発者が気にするのは「Gemini 3.5 Proはどこへ行ったのか」という点だろう。もともと6月のリリースが予告されていたが、現時点でも「テスト中」の段階にとどまっているとGoogleは説明している。
※編集部の考察:Proクラスのモデルは、Flashと比べて規模が大きい分、品質・安全性評価に要する時間も長くなる傾向がある。また、Gemini 4のトレーニング開始が示唆された今、3.5 Proを急いでリリースするよりも次世代の準備を優先している可能性も否定できない。Googleがリリース予告に対して慎重さを欠いているとの批判も出ているが、未成熟なモデルを急いで出した3.5 Flashの教訓が影響している面もあるだろう。
さらにGoogleはGemini 4のトレーニング開始も示唆しており、モデルの世代交代が急速に進んでいることが伝わってくる。3.5 Flashが数ヶ月で非推奨になったことからも、Geminiのリリースサイクルは従来のAIモデル開発より明らかに短く、Gemini APIのバージョン管理ポリシーを定期的に確認しておくことが開発者には求められる。
詳細はGoogle announces Gemini 3.6 Flash and cybersecurity AI, teases 3.5 Pro and Gemini 4を参照していただきたい。