7月20日、PYMNTSが「Medical AI Startup OpenEvidence Weighs $200 Million Funding Round」と題した記事を公開した。医療特化型AIスタートアップのOpenEvidenceが、評価額200億ドル(20 billion USD)での2億ドル(200 million USD)調達を検討しているとの報道を詳しく紹介している。
年間収益が7ヶ月で倍増、調達・評価額ともに検討段階
OpenEvidenceは、米国の臨床医向けAI医療検索エンジンを提供するスタートアップだ。The Informationの報道(7月17日付)によると、同社は評価額200億ドル(20 billion USD)での2億ドル(200 million USD)調達を検討していた。ただし、創業者および既存株主の持分希薄化を懸念し、実際の調達には踏み切らない可能性が高いという。評価額・調達ともに現時点では未確定であり、あくまで検討・交渉段階の情報である点に留意が必要だ。
財務面での数字が目を引く。同社の年間換算収益は現在約3億ドル(月次換算で約2,500万ドル)に達している。これは約7ヶ月前——評価額120億ドル(12 billion USD)での資金調達交渉時——の約2倍だ。短期間での急成長が、投資家の評価を大きく押し上げている。
また、The Informationの情報筋によれば、同社はここ数ヶ月で大手テック企業との買収交渉も並行して行っていたという。具体的な企業名は明かされていないが、キャッシュフローベースでは損益分岐点に達しており、財務的な安定も確認できる段階にある。
86万人の臨床医が使うプロダクト
OpenEvidenceのプロダクトは、米国の認定・検証済み臨床医86万人に使われている医療AIサーチエンジンだ。医学論文の検索や医療記録の生成など、臨床現場での実務支援を担う。
最近追加された機能「Voice Mode」は、スクリーンに触れずに音声で質問し、エビデンスに基づいた回答を音声で受け取れるハンズフリー機能だ。OpenEvidenceの臨床AI担当副社長で、UCSFおよびKaiser Permanenteで救急医として勤務するAnia Bilski医師はFierce Healthcareにこう述べている。
「救急部門にいるとき、実際に答えが必要な瞬間にワークステーションの前にいることはほとんどない」
臨床の現場感を起点にプロダクトが設計されている点が、同サービスの導入が広がっている背景にある。
競合はOpenAI——ChatGPT for Cliniciansとの競争
医療AIの競争環境も激化している。OpenAIは2026年4月にChatGPT for Cliniciansをリリースしており、医療専門家の文書作成や医学研究を支援するサービスを展開している。大手AIラボがアプリケーション層に進出することで、OpenEvidenceのようなスタートアップが飲み込まれるリスクが投資家の間で懸念されていた。
ただし、今回の急速な収益成長はこうした懸念を和らげる材料になり得ると記事は指摘している。汎用AIと異なり、医療特化モデルの訓練・検証コストや、臨床医への信頼獲得には相応の時間と専門性が必要であり、大手が即座に代替できる領域ではない。
医療AIへの投資トレンド
PYMNTSのリサーチ部門は、医療業界でのAI導入について、金融や広告など他セクターと比較して「包括的な自動化」よりも「特定業務の摩擦軽減」に集中している傾向があると指摘している。同部門によれば、データや系統統合が成熟した段階で、より広範な変革へと移行していく構えだという。
医療AIへの大型資金流入は、この慎重かつ段階的なアプローチを支える動きとも見られる。OpenEvidenceの事例は、収益実績と現場採用率を武器に、大型評価額を正当化しようとするスタートアップの一典型例だ。なお、今回報じられた評価額200億ドル・調達額2億ドルはいずれも検討・交渉段階であり、最終的な条件や実施可否は未確定である。
詳細はMedical AI Startup OpenEvidence Weighs $200 Million Funding Roundを参照していただきたい。