7月18日、Runtime Wireが「Anthropic is rumored to be pursuing robot AI developer Physical Intelligence」と題した記事を公開した。AnthropicがロボットAI基盤モデル開発企業Physical Intelligenceの買収を検討しているという未確認情報を伝えている。
情報源は「著名投資家」のみ——取引の実態は不明
この買収話の出所は、テクノロジー業界のインフルエンサーRobert Scoble(@Scobleizer)が7月18日にXへ投稿した一文だ。「ある無名の投資家から聞いた」として、Anthropicがロボット基盤モデル開発企業のPhysical Intelligenceを買収しようとしており、「まだクローズしていない」と述べた。その後Scobleは情報源を「著名な投資家」と補足したが、人名も取引価格も構造もタイムラインも一切明かしていない。
7月18日時点で、AnthropicもPhysical Intelligenceも公式サイトで買収を発表していない。情報源が1名の匿名投資家のみで、条件も未開示という点は記事中でも明確に強調されている。この噂が注目を集める理由は、信憑性よりも両社の技術的な補完関係にある。
なぜAnthropicにとって「技術的に合理的」か
AnthropicのClaude APIはソフトウェア生成、視覚入力の解釈、コンピュータ操作に対応している。しかしAnthropicは自社のロボティクス実験が「低レベルアクチュエーションポリシー(低水準作動制御)」、つまり意思決定を実際の物理動作に変換するシステムに対応していなかったと認めている。
Physical Intelligenceはまさにその「制御層」に2年間取り組んできた企業だ。
- CEO Karol Hausmanらが2024年にサンフランシスコで設立
- 共同創業者にロボティクス研究者のSergey Levine、Chelsea Finn、Brian Ichterが名を連ねる
- 目標は「あらゆるロボットを動かせる汎用モデルの構築」
同社のオープンソースモデルpi 0は、単腕・双腕・移動プラットフォームのいずれにも対応し、開発者が自社ロボットデータでファインチューニングできる設計だ。最新のpi 0.7(4月16日リリース)は、未知のロボットを制御し、言語ベースのコーチングに反応し、これまで学習した能力を組み合わせて新しいタスクに対応できるとされている。
実際の展開例として、洗濯物折りたたみロボット「Weave」はPhysical Intelligenceのモデル導入後にグラスプミス(把持失敗)を42%削減、人間の介入を50%削減したと報告。倉庫向けロボット「Ultra」は96.4%の自律稼働率で連続出荷作業を実現したという(いずれもPhysical Intelligence側の発表であり、独立した監査は未実施)。
元記事によれば、Anthropicは自社のロボティクス実験を通じて「精密な物理的操作にはまだ課題がある」と認めており、Physical Intelligenceの制御モデルはまさにその未解決部分に対応する技術スタックを持つ。
買収には高いハードルがある
Physical Intelligenceは、AI系スタートアップのなかでも特に高額な評価額がついている企業だ。
- 2025年11月:Alphabetのグロースファンド「CapitalG」主導で6億ドル調達、評価額56億ドル(Lux Capital、Thrive Capital、Jeff Bezosも参加)
- 2026年3月:評価額110億ドル超での追加10億ドル規模の資金調達を協議中と報道(Founders Fund、Lightspeed VP等が参加予定)
なお、OpenAIも初期出資者の一人であり、Anthropicの主要ライバル2社(OpenAIとAlphabet)が出資者として入っているという複雑な資本構成になっている。
さらに、Physical IntelligenceはTechCrunchに対して「商業化のタイムラインは持っていない」と述べており、約80人の従業員を抱えながら収益化モデルを開示していない段階での評価額となる。
Anthropicの買収姿勢は変わってきている
Anthropicはここ最近、技術チームの獲得を目的とした買収を積極化している。コンピュータ操作(computer-use)開発のVercept、JavaScriptランタイムのBunに続き、2026年5月にはAPI基盤開発のStainlessを買収した。いずれもClaudeに隣接するソフトウェア・インフラ領域の補強だった。Physical Intelligenceの買収が実現すれば、非構造化環境でのロボット制御という、より難易度の高い領域への参入を意味する。
ただし現時点では、Scobleの投稿は匿名1人の情報源に基づくものであり、取引が完了するかどうかを示す根拠にはなっていない。
詳細はAnthropic is rumored to be pursuing robot AI developer Physical Intelligenceを参照していただきたい。