7月17日、Techstrong.aiが「NVIDIA Partners with Japanese Giants to Reinvent Manufacturing Through Physical AI」と題した記事を公開した。NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが東京を訪問し、富士通・FANUC・安川電機など日本の産業大手と連携して製造業向け物理AIの普及を推進すると発表した。その核心にあるのが、クラウド不要でわずか1日でカスタマイズ可能なエッジ向けワールドモデル「Cosmos 3 Edge」だ。
Cosmos 3 Edge——クラウド不要で「1日でカスタマイズ」できるエッジ向け世界モデル
今回の発表の核心は、フアンCEOの東京訪問中に披露されたCosmos 3 Edgeだ。40億パラメータの「ワールドモデル」(world model)と呼ばれるこのAIは、従来のLLM(大規模言語モデル)とは異なり、物理的・視覚的な多様な入力を処理するマルチモーダルなアーキテクチャを持つ。
最大の特徴は、NVIDIAのJetsonエッジハードウェア上でローカル動作し、クラウドインフラへの依存が不要な点だ。Jetsonは製造・ロボティクス・医療機器など組み込み用途向けに設計されたNVIDIAのエッジAIコンピューティングプラットフォームで、現場への設置がしやすい。Cosmos 3 Edgeはこの上でリアルタイムに周囲を認識でき、特定の環境への適応(ファインチューニング)が約1日で完了するとされている。製造現場への導入障壁を大きく下げる設計思想が見える。
「Cosmos Coalition」——富士通が主導する産業ロボット連合
Cosmos 3 Edgeの普及を加速するため、NVIDIAはオープンな物理AIモデルを構築するCosmos Coalitionを発足させた。
富士通が協調制御プラットフォームの開発をリードし、ロボット分野の老舗であるFANUC・安川電機・川崎重工が参画する。このプラットフォームはNVIDIAのAIを、デジタルツイン、ロボットシミュレーション、事前検証ツールと統合する構成だ。デジタルツインとは物理的な設備や工場をソフトウェア上に忠実に再現する技術で、実機を動かす前にAIの動作を仮想空間で検証できる。
その他の主要メンバーにはソニー・NEC・日立・ソフトバンクが名を連ねる。ソフトバンクはNVIDIAのOmniverse(3Dシミュレーション・デジタルツイン開発基盤)を活用した物理AI開発プラットフォームを構築中だ。
共同記者会見では、日本の深刻な労働力不足と急速な高齢化が連合結成の主な動機として挙げられた。クボタの自律農業機械から介護ロボットまで、用途は産業の枠を超える。
なぜ今、日本なのか
背景として、日本政府の動きがある。元記事によれば、日本政府は2040年までに官民合わせて370兆円(約2.3兆ドル)を半導体・データセンター・物理AIに投資する目標を掲げた。日本のAI市場は2029年に279億ドル規模に達すると予測されており、マイクロソフトが100億ドルのローカルAIインフラ投資を表明するなど、米国企業の参入も相次いでいる。
テックアナリストのJack Gold氏は次のように分析する。
「日本はチャットAIやエージェントAIの波に乗り遅れた後、物理AIを主要プレーヤーになるための突破口として押し進めている。中国も物理AI分野でリードを狙っており競争は激しいが、日本には強固な産業基盤があり、ロボティクスや関連技術では米国や欧州よりはるかに進んでいる。韓国企業との協力体制も厚い」
同氏はNVIDIAの戦略についてもこう述べている。
「OpenAIやAnthropicが必要とするような巨大モデルを使わず、物理AIのような特定市場向けにモデルを提供できるのはNVIDIAにとって大きな強みだ。エッジデバイスで自律動作するマルチモーダルな『ワールドモデル』は、今後ますます増える」
製造業にとどまらず医療分野にも
NVIDIAは製造業以外にも日本での展開を広げている。三井物産傘下のXeurekaが運営するAI創薬コンソーシアムTokyo-1を拡張中だ。NVIDIAのBioNeMo Agent Toolkitを活用し、アステラス製薬・第一三共・小野薬品工業などが自律型AIエージェントを分子研究や臨床ワークフローに組み込んでいる。物理AIの応用が工場の床面だけでなく、創薬の研究室にまで広がりつつある点は注目に値する。
今後の展開
Cosmos Coalitionは現時点で正式な合弁会社設立には踏み込んでいないが、協調プラットフォームの初期フェーズは今年後半にローンチ予定だ。
詳細はNVIDIA Partners with Japanese Giants to Reinvent Manufacturing Through Physical AIを参照していただきたい。