7月18日、The Next Webが「TSMC posted record $40 billion revenue. Its stock fell 4%. Investors are no longer buying the AI spending story on faith.」と題した記事を公開した。TSMCが過去最高売上を記録したにもかかわらず株価が下落するという、通常の市場論理では説明しにくい現象が起きた。この出来事が示すのは、AI投資をめぐる市場センチメントの構造的な転換点かもしれない。
好決算なのに株価は4%下落
TSMCが発表した2025年第2四半期の売上高は400億ドル超と過去最高を更新した。前年同期比で36%増、純利益に至っては77%増という内容だ。本来であれば市場から好意的に受け止められるはずの数字だった。
しかし蓋を開けてみると、TSMCの株価は4%下落。連動してNasdaq 100も1.4%下落した。
問題は業績ではなく「設備投資額」
市場が嫌気したのは業績の中身ではなく、合わせて発表された設備投資(capex)の上方修正だ。TSMCは2026年のcapex見通しを従来の520〜560億ドルから600〜640億ドルへ引き上げた。
AI向けインフラへの巨額投資が続く中、投資家はその支出を「将来の収益への信頼」でそのまま受け入れることをやめつつある。業界全体でこの10年間にAI開発へ投じられた資金は累計約1.6兆ドルに上るが、それに見合うリターンはまだ十分に示されていない。
TSMCは「AI投資の晴雨計」
TSMCはNvidiaやAppleをはじめ、AIブームを牽引するほぼすべての企業の半導体製造を担うファウンドリ(半導体受託製造企業)だ。その意味で、TSMCの業績はAI産業全体の需要を映す鏡とも言える。
その企業が過去最高の四半期決算を出して売られたという事実は、投資家が「約束」ではなく「証拠」を求め始めたことを示すシグナルだ。
半導体株の指数はすでに史上最高値から約19%下落しており、AI関連株のバリュエーションは深刻な水準に達している。記事が特筆するのは、その集中度がドットコムバブル期の市場集中度をも超えるという点だ。2000年前後のバブル崩壊時、NasdaqはピークからIT関連株を中心に約80%下落した。現在のAI関連株の時価総額集中度がそれを上回るという指摘は、単なる修辞的な警句ではなく、市場構造上のリスクとして受け止めるべき数字だ。
BIS・Goldman・Manが数週間前から警告していた
今回の株価反応は、複数の大手機関が事前に発していた警告とも符合する。
国際決済銀行(BIS)は、AI関連インフラへの過剰投資が金融安定性に与えるリスクを指摘するレポートを公表しており、収益化の目処が立たないままcapexが膨張するシナリオへの懸念を示していた。ヘッジファンドのMan Groupは、AI関連株のバリュエーションが実態の収益見通しから乖離していると警告。Goldman SachsもAI投資のROI(投資収益率)に対する懐疑的なリポートを相次いで発表し、「AIは本当に生産性を押し上げるのか」という問いを市場に投げかけていた。TSMCの決算発表は、これらの警告が現実の株価反応として結実した瞬間と見ることもできる。
「約束」から「証拠」へ——市場が立てている問い
記事が問いかけるのは単純だ。TSMCからチップを購入している企業群が、この兆ドル規模の集団的賭けを正当化するだけのリターンを生み出せるか否か。あるいは、設備投資サイクルが、需要の到来が遅れるか、規模が想定より小さいか、あるいは来ない可能性に対してインフラを積み上げているだけに終わるか、だ。
AI支出が続く限り、TSMCは記録的な売上を出し続けるだろう。しかし市場はすでに、その先の問いを立て始めている。今回の株価下落は、その問いが「いずれ考えること」から「今すぐ答えが必要なこと」へと変わりつつあることを示している。
詳細はTSMC posted record $40 billion revenue. Its stock fell 4%. Investors are no longer buying the AI spending story on faith.を参照していただきたい。