7月16日、The Next Platformが「AI Chips Drive Around A Third Of TSMC Revenues」と題した記事を公開した。TSMCの2026年第2四半期決算では売上高が前年同期比33.7%増にとどまる一方、純利益は74.7%増という非対称な伸びを記録した。先端プロセスへのシフトがウェハー単価とマージン双方を押し上げる構造が鮮明になっており、AIチップがその牽引役となっている。
AIチップ売上が四半期で1.3兆円超え
The Next Platformの推計によると、2026年第2四半期(6月末)において、TSMCが製造したAI学習・推論チップの売上高は約133億ドル(約1.3兆円)に達し、前年同期比で68.3%増となった。これはTSMC全体の売上高の約3分の1、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング:データセンターやAIワークロードを担う大規模演算基盤)セグメントの約半分に相当する。
この成長速度は、TSMCが今年初めに示した「2026〜2030年のAI関連事業のCAGR(Compound Annual Growth Rate:年平均成長率)は50%台半ば〜後半」という予測をすでに上回るペースだ。TSMCのCEO兼会長のCC・ウェイ(CC Wei)氏は7月の決算説明会でこの数字の更新を明言しなかったものの、「CAGRは強く、強く、強くなっている」と述べるにとどめた。
Q2 2026決算:増収よりも増益のペースが速い
Q2 2026の決算数値をまとめると以下の通り:
- 売上高:402億ドル(前年同期比+33.7%、前四半期比+12%)
- 純利益:223.7億ドル(前年同期比+**74.7%**)
- 純利益率:55.6%
増収率33.7%に対して増益率が74.7%という非対称な伸びが目を引く。ウェハー1枚あたりの売上高は9,271ドルで、前年同期比+14.6%。記事によれば、4年前のウェハー単価は現在の半分、7年前は3分の1だったという。先端プロセスへのシフトが価格とマージン双方を押し上げている構造だ。
HPCがスマートフォンを大きく上回る主力セグメントに
セグメント別の売上高:
- HPC(データセンターXPU、スイッチASIC、FPGA、デスクトップ/ラップトップCPU等):265.3億ドル(前年同期比+47.1%)
- スマートフォン:88.4億ドル(前年同期比+8.9%、前四半期比−5.2%)
- IoT・自動車・その他:48.2億ドル(前年同期比+23.4%)
かつてTSMCの主力だったスマートフォン向けが、HPCセグメントに大きく水をあけられた格好だ。
なお、HPCセグメントに含まれる「XPU」とは、GPU・TPU・NPUなどCPU以外の演算プロセッサの総称として業界で広く使われる表現で、文脈上はNvidiaのH200/B200シリーズやAMDのMI300/MI350などAIアクセラレータを主に指す。TSMCはこれらを受託製造するファウンドリとして、AIインフラ投資の恩恵を直接受ける立場にある。
プロセスノード別:2nmが初めて売上貢献
記事では、プロセスノード別の売上構成についても触れている。
- 3nm: 売上は急拡大中だが、5nmがわずかに上回る状況
- 5nm: 依然として最大の売上構成ノード
- 2nm: 今四半期初めて売上計上、12.1億ドルを記録
2nmのラインアップ立ち上げを牽引しているのはAMDの「Venice」ことEpyc 9006シリーズと、年内投入予定のMI450 GPUだ。記事ではNvidiaが数年前にTSMCの4nmプロセスのラインアップ立ち上げを牽引したことと対比して言及されている。
設備投資を上方修正、アリゾナに追加1000億ドル
TSMCは今回の説明会で、アリゾナ州の工場拡張に追加で1000億ドルを投じると発表した。これにより米国での総投資額は2650億ドルに達する。追加される4棟のファブは2nm以下のプロセスに特化する予定だ。
年間設備投資(capex)の見通しも引き上げられた:
| 年度 | capex |
|---|---|
| 2024年実績 | 298億ドル |
| 2025年実績 | 409億ドル(前年比+37.4%) |
| 2026年当初予測 | 520〜560億ドル |
| 2026年修正後 | 600〜640億ドル(前年比最大+56.5%) |
なお、ウェイ氏はファブ建設には5〜7年かかると改めて強調した。年間capexの数字が長期コミットメントより小さく見えるのはこのためだ。
「供給不足は意図的か」という読み方
記事は、TSMCが需給ギャップを完全に解消しようとしていない可能性を示唆している。供給不足は価格交渉力を高め、利益率を押し上げるからだ。一方で、過度な供給不足はIntel FoundryやSamsung Foundry、さらには中国のSMIC(Semiconductor Manufacturing International Corp:中芯国際集成電路製造)の台頭を招くリスクもある。記事によれば、SMICは現在ファウンドリ市場の**約6%**を占めており、中国政府の後ろ盾のもとシェア拡大を続けている。
ウェイ氏自身も、顧客から集めた需要データについて率直な発言をしている。要旨は「顧客全員が正直に需要を申告しても、それを単純集計すると過大推計になる。CEOは本来攻めの姿勢なので数字は強気になる。だからTSMC自身が最終的な判断を下さなければならない」というものだ。どこまで増産するかのその「判断」が、AI半導体サプライチェーン全体に影響する。
詳細はAI Chips Drive Around A Third Of TSMC Revenuesを参照していただきたい。