7月16日、Aqsa Qaddus Tahirが「Google ordered to open search data to AI rivals under EU rules」と題した記事を公開した。欧州委員会がGoogleに対し、検索サービスの最適化に使用してきた収集データを競合他社へ開放するよう正式に命じた——これは、BigTechの市場支配力に対するEUの規制が具体的な「データ共有義務」という形で結実した歴史的な決定だ。
EUがGoogleに「検索データ開放」を命令
欧州委員会(European Commission)は、デジタル市場法(DMA: Digital Markets Act)に基づき、Googleに対して検索データを競合他社へ開放するよう正式に命じた。DMAは、BigTechの市場支配力を抑制し、AIおよび検索市場における透明性と公正な競争を確保することを目的とした規制であり、2024年3月から主要ゲートキーパー企業への適用が開始されている。今回の命令は、Googleへの正式手続き開始から6ヶ月後に発せられたものだ。
なお、元記事では受益者となる競合企業の具体名は明示されておらず、「AI rivals(AIの競合他社)」と総称されている点に留意されたい。
2つの柱:検索データとAndroid
今回の措置は大きく2つに分かれる。
① 検索データの共有(2026年1月から)
Googleが検索サービスの最適化に使用してきた収集データを、他社へ提供することが義務付けられる。実施時期は2026年1月からとされており、Googleはデータ提供に先立ってセキュリティおよびデータ保護リスクの分析を行うことが認められている。
ここで言う「収集データ」とは、Googleが検索ランキングや結果表示の改善に活用してきたユーザー行動・クエリデータ等を指す。Googleが長年にわたって蓄積・活用してきた検索最適化データそのものの共有が求められるものであり、Googleの検索インデックス(ウェブページのクロール・格納データベース)を直接開放するものではない点に注意が必要だ。
② Androidの11機能開放(2027年7月から)
次世代Androidでは、11の機能をAI競合に開放することが求められる。具体的には、GoogleのAIサービス「Gemini」と公平に競争できるよう、サードパーティ製AIアシスタントへのアクセスを改善するのが狙いだ。2027年7月リリース予定の次期Androidでは、ユーザーが音声コマンドで競合AIアシスタントを起動しやすくなる。またこれらの措置には、ユーザーのプライバシーとデバイスセキュリティの保護も含まれるとされている。
Googleの反発
Googleはこの決定に強く反発している。同社の法務責任者であるKent Walkerは次のように述べた。
「今回の決定は、何百万人ものヨーロッパ市民にとって不可欠なプライバシーおよびセキュリティ上の保護を損なうリスクがある。我々はDMAの目標を満たしながらユーザーを守るための解決策を繰り返し提案してきたが、これらの裁定はユーザー被害に関する広範な証拠を軽視している。」
Googleの主張は「データ開放=セキュリティリスク」という論点であり、規制当局との対立構図は今後も続く見通しだ。
背景:DMAとGoogleをめぐる規制の流れ
DMAは、一定規模以上のプラットフォーム事業者を「ゲートキーパー」に指定し、競合他社への公正なアクセスを義務付けるEUの規制だ。2022年に成立し、2024年3月からGoogle・Apple・Meta・Amazonなど主要プラットフォームへの適用が開始された。Googleは検索・広告・モバイルOSなど複数の領域でゲートキーパーに指定されており、今回の命令はその一環として下されたものだ。
EUによるGoogleへの規制は今回が初めてではなく、過去には検索結果における自社サービス優遇(Google Shopping事件)やAndroid抱き合わせ問題でも巨額の制裁金が科されている。DMA施行後は制裁金による事後規制から、行動変容を直接義務付ける事前規制へとアプローチが転換されており、今回の命令はその新フェーズにおける重要な事例となる。
検索データの共有義務が実際に機能すれば、Googleが長年にわたって蓄積してきた検索最適化のノウハウが競合他社にも部分的に開放されることになり、AI搭載型の検索・アシスタントサービスの競争環境に影響を与える可能性がある。ただし、その具体的な範囲や影響度は、今後のデータ提供スキームの設計次第となる。
詳細はGoogle ordered to open search data to AI rivals under EU rulesを参照していただきたい。