7月17日、PyMNTSが「UnitedHealth Says AI Now Runs Every Function of Its Business」と題した記事を公開した。米国最大級の医療保険グループであるUnitedHealthが、全社業務をAIで刷新した実績を「商品」として外部販売する戦略に乗り出している。事前承認の初回承認率96%、臨床医の認知的疲労90%低減——これらの数字は単なる業務改善の成果ではなく、すでに外部クライアントへの販売実績を持つ製品の仕様値でもある。
「使って売る」モデルへの転換
UnitedHealthは、売上高4000億ドル規模(2024年度)を誇る米国最大手の医療保険・ヘルスケアサービス複合企業だ。傘下には医療サービス部門のOptum Healthと、テクノロジー・データ分析部門のOptum Insightがあり、保険引き受けから医師グループの運営、ITソリューションの提供まで垂直統合的に手がけている。日本で言えば、健康保険組合・病院グループ・医療ITベンダーを一社で兼ねるようなイメージに近い。
UnitedHealthが7月15日に開催した2026年第2四半期決算説明会で、会長兼CEOのStephen Hemsleyは「われわれが行うほぼすべての業務が、将来の運営インフラそのものになっている」と発言した。保険金請求の処理、事前承認(prior authorization)の審査、患者対応——これらの業務がすべてAIを通じて処理されているという。
注目すべきはその先の戦略だ。社内で積み上げたAI活用のノウハウを、そのまま外部の医療機関や保険会社向けの商品として販売している。自社の業務改革が、そのままビジネスになるという構造である。
数字で見るAI導入の効果
成果は業績に直接表れている。
- 事前承認の初回承認率:96%
- 今四半期末までに事前承認の30%削減を約束
- 小児科の事前承認要件は3分の2近くを撤廃予定
- 第2四半期の営業利益:前年同期比55%増(80億ドル)
事前承認とは、医師が特定の治療や薬を処方する前に保険会社の承認を得るプロセスで、米国医療業界では慢性的な行政コストと遅延の原因とされてきた。UnitedHealthは2027年末までに事前承認の80%をリアルタイム処理する方針も示した。
財務面では、調整後EPSが6.38ドル(前年同期4.08ドル)、総収益は1120億ドル、医療費率(MCR)は86.7%(前年同期89.4%)、営業キャッシュフローは約110億ドル(純利益の約1.9倍)となった。7月2日にはAlegeus Technologiesの買収も完了している。
医師の負担を減らす「環境音声AI」
Optum Healthは2000万人の患者に直接医療サービスを提供している。同部門では、診察中の会話をリアルタイムで文字起こしする「アンビエントリスニングAI」を雇用臨床医の70%に展開済みで、年内に90%へ拡大する計画だ。
Optum CEOのPatrick Conwayによれば、このツールを使用した臨床医の認知的疲労(cognitive burnout)が90%低減したという。これは業務上の認知負荷の軽減を指す指標であり、臨床診断としての燃え尽き症候群(burnout syndrome)とは概念が異なる点に留意が必要だ。また、看護師が複雑な患者ケースをまとめる速度が40%向上し、AI支援によるスケジューリングで専門医の待ち時間も短縮。上半期に患者対応時間が約20万時間増加した。西部・南部地域では昨年末以降、入院件数が10%減少している。
内製ツールの外販化:Optum Insightの役割
Optum Insightは、Optum Healthが社内で構築・実証したAIツールを外部向け商品として展開する部門だ。UnitedHealthグループ全体の今年の技術投資の約3分の1がこの外販化に充てられており、内製→実証→外販という一気通貫のサイクルが同社の成長エンジンになっている。
昨四半期に「Optum Real」ブランドで立ち上げたデジタル事前承認製品は、外部クライアント向けに約50万件の事前承認を処理し、6万9000時間の管理業務を削減した。
電子カルテ(EHR)に直接組み込まれるAIインサイトプラットフォーム「Value Connect」は、初期展開クライアントで薬剤費を17%削減する結果を示している。
詳細はUnitedHealth Says AI Now Runs Every Function of Its Businessを参照していただきたい。