7月17日、Hassan Mujtabaが「Kimi K3 Built A Chip In Just 48 Hours, Which Pushes Over 8700 Tokens/s, As China's Moonshot Delivers A 2.8 Trillion Parameter Frontier AI Model」と題した記事を公開した。中国のAI企業Moonshotが公開した2.8兆パラメータの大規模オープンウェイトモデル「Kimi K3」の技術仕様と、同モデルが48時間でチップ設計を自律完遂した実証が詳しく取り上げられている。
48時間でチップを設計したAIモデル
Kimi K3の最も際立った実証は、AIがAIのためのチップを設計したという点だ。Kimi K3は自身のNanoモデル向けに、人間の介入なしで48時間の自律ランを完了させ、チップの設計を仕上げた。ただし元記事の記述はRTLシミュレーションベースの成果であり、物理的な製造・実機動作の検証を指すものではない点に留意が必要だ。
完成したチップの仕様は以下のとおりだ:
- 面積: 4mm²
- クロック: 約100MHz
- スタンダードセル数: 146万セル
- SRAM: 0.277MB
- 演算ユニット: INT4 MACアレイ(Fused Dequantization付き)
- 推論スループット(シミュレーション): 8,721 tokens/s
- ツール: オープンソースEDA(Nangate 45nmライブラリ)使用
設計・最適化・検証・タイミング解析・シミュレーションのすべてをモデルが単独で処理した。オープンソースEDAツールのみを使用してここまでの結果を出した点は、チップ設計の民主化という観点で注目される動きだ。
2.8兆パラメータのMoEモデル:主要スペック
Kimi K3はMoE(Mixture-of-Experts)アーキテクチャを採用した大規模オープンウェイトモデルだ。Moonshotは「3Tクラスのオープンウェイトモデルとして世界初」と主張している。MoEとは、推論時にすべてのパラメータを使わず必要な部分だけを活性化する設計で、巨大モデルを現実的なコストで動かすための手法として近年主流になりつつある。
主要スペックをまとめる:
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| パラメータ数 | 2.8兆(MoE) |
| コンテキストウィンドウ | 1,048,576トークン(1M) |
| マルチモーダル | テキスト・画像・動画をネイティブサポート |
| アーキテクチャ | Kimi Delta Attention (KDA) + Attention Residuals(100万トークンコンテキスト時に最大6.3倍高速なデコード) |
| 重みの量子化形式 | MXFP4重み / MXFP8アクティベーション |
| API Price | 入力$3 / 出力$15(100万トークンあたり)、キャッシュ入力は約$0.30 |
| 重み公開予定 | 2026年7月27日ごろ |
ベンチマークについては、元記事ではMoonshot自己申告の数値として、Terminal-Bench 2.1で88.3を記録したと報告されている。他モデルとの比較数値も同記事内で言及されているが、いずれもMoonshotによる自己申告ベースの結果であり、独立した第三者評価ではない点を踏まえて参照されたい。
チップ設計以外の自律タスク実証
Kimi K3はチップ設計以外にも2つの注目すべき自律タスクを実証している。
GPUコンパイラのゼロからの開発:MiniTritonという独自のGPUプログラミングシステム(コンパイラ)を完全に自力で構築した。一部のベンチマークではNVIDIAの公式Tritonコンパイラに匹敵するか上回る結果を出したと報告されている。
プロモーション動画の自律編集:56本の生映像クリップから、クリップ選定・動作の連続性確保・音楽へのフレーム単位ビート同期・音声処理・複数回のリビジョンを経て、完成度の高いティザー動画を制作した。また、自身のアーキテクチャを説明するモーショングラフィクスも制作したとされる(元記事での表現を引用している)。
ゲーム・デジタルコンテンツへの応用
Kimi K3は3Dリーズニング・コーディング・ビジョン能力も備えており、画像や動画をプレイ可能なインタラクティブ体験へ変換するデモも公開されている。公式デモでは、農場と湖を背景に馬に乗るキャラクターが雨の中を移動するシーン生成が示されている。元記事ではこれらはあくまで初期段階の例示として位置付けられており、実用レベルの完成度や再現性についての詳細な評価は今後に委ねられている。
入手方法
現時点ではKimiアプリ、Kimi Code、MoonshotのOpenAI互換API、およびOpenRouterから利用可能だ。オープンウェイトは2026年7月27日ごろに公開予定とされている。