7月17日、The Next Webが「Verizon cuts 3,000 retail jobs as AI replaces customer service and stores move to franchises」と題した記事を公開した。米通信最大手Verizonがコスト削減策の一環としてAI活用を推進しながら小売店舗従業員約3,000人を削減する方針を詳しく紹介している。AIによる雇用代替を公言しながらも、実態は「仕事を消している」のではなく「コスト負担を別の帳簿に移している」だけではないかという批判的な視点も含んでおり、同種の構造改革が業界全体に拡大している現状を考えれば、この動向は通信業界にとどまらない問題提起として読める。
3,000人削減とフランチャイズ転換の全容
Verizonは、直営の小売店舗から約3,000人を削減し、274店舗を独立オーナーへ移管する。変更は8月16日に発効し、移管後の店舗構成は直営1,000店舗と、約5,000店舗のフランチャイズという体制になる。移管店舗の従業員の多くは新オーナーに引き継がれる見込みとされているが、Verizonの給与台帳からは外れる。
フランチャイズ転換とは、企業が直営店をブランド契約を結んだ独立事業者(フランチャイジー)に運営委託する仕組みだ。本部(フランチャイザー)は店舗の固定コストや雇用リスクを切り離し、ロイヤルティ収入や販売マージンで収益を確保する。コンビニやファストフードで広く普及したこのモデルが、通信キャリアの小売部門にも本格的に導入されつつある。
この決定を主導しているのはVerizonのCEO、Dan Schulmanだ。Schulmanは元PayPal CEOとして知られ、2023年末にPayPalを退任後、2025年にVerizonのトップに就いた人物だ(※元記事にはSchulmanの就任時期について「2025年10月」とも取れる記述があるが、正確な就任経緯については公式発表を参照されたい)。今回の削減は彼の下での3度目の大規模リストラにあたる。2025年11月には非組合員の20%、約13,000人を整理し、2026年末までに50億ドルの運営費削減を目標に掲げた。さらに5月にも数百人規模の追加削減を実施している。
AIがカスタマーサービスを代替する
Schulmanは6月のBloombergインタビューで、カスタマーサービス業務の「大部分」をAIが代替すると明言した。具体的には請求照会やアカウント変更といったルーティン作業が特に影響を受けやすいと指摘している。
Verizonが公表している数字は具体的だ。AI対応の顧客満足度スコアは、同等の問い合わせにおいて人間エージェントを約13%上回るという。これをもって、Schulmanは人件費削減の根拠を明確にしている。
「コスト削減」か「責任の付け替え」か
直営店をフランチャイズへ転換するモデルは、固定の小売コストを削減しながら運営リスクを第三者オーナーに移す手法だ。記事はこれを「給与費を資本支出に変換する業界の定石」と表現しており、Verizon固有の話ではなく広く見られる動きだとしている。
ただし記事が鋭く指摘するのは、AIが本当に店舗スタッフの仕事を代替しているのかという点だ。店頭での業務は請求照会にとどまらず、デバイスの下取り、ハードウェアのトラブルシューティング、対面での販売クロージングといった作業を含む。フランチャイズに移管される274店舗では、同じ仕事をする同じ人員が引き続き必要になる。仕事が消えているのではなく、コスト負担が別の帳簿に移っているだけだという見方だ。
Schulmanはこの点について明確な説明をしていない。
業界全体に広がるAI起因のコスト削減
Verizonの動きは孤立した事例ではない。JPMorganのJamie Dimon CEOは、一部部門でAIがすでに雇用の30〜40%を削減したと述べている。テック業界全体でも2026年に95,000人超の人員削減が発生しており、調査対象の採用担当者の約半数がAIを主因として挙げている。
こうした動向はVerizonやJPMorganに限らず、構造的な変化として広がっている。ILO(国際労働機関)の報告書はAIが既存業務の一部を代替しつつも新たな職種を生む可能性を示す一方、McKinsey Global Instituteの試算では数億人規模の業務が自動化の影響を受けうるとしており、雇用の「消滅」ではなく「移動・変容」という視点がより正確な現状認識に近いと指摘されている。Verizonのフランチャイズ転換はまさにその縮図と言えるかもしれない。
また、Verizonは最近、料金プランの簡素化と既存顧客向けロイヤルティ報酬プログラムも発表している。T-Mobileやケーブル系プロバイダーとの競争激化を受けた顧客流出対策だ。Verizonの第2四半期決算発表は7月24日の予定で、そこでの説明にも注目が集まる。
詳細はVerizon cuts 3,000 retail jobs as AI replaces customer service and stores move to franchisesを参照していただきたい。