7月17日、The Expressが「Godfathers of AI in rare agreement on AI regulation」と題した記事を公開した。タイトルの「Godfathers of AI(AIの教父たち)」とは、現代のAI産業を牽引してきた人物を指す呼称で、ここではGoogle DeepMindのDemis Hassabis、OpenAIのSam Altman、AnthropicのDario Amodeiの3人を指している。この記事では、競合関係にあるAI大手3社のCEOがAI規制の必要性と基本的な方向性で初めて一致したことについて詳しく伝えている。
Hassabis・Altman・Amodeiが規制の必要性で一致
Google DeepMindのDemis Hassabis、OpenAIのSam Altman、AnthropicのDario Amodeiの3人が、AI規制に関して初めて「同様の診断と処方箋」を示した。
これは業界内では異例の出来事だ。この3社はAGI(汎用人工知能)開発において最前線で競合しており、これまで規制をめぐる立場のすり合わせはほとんど見られなかった。
きっかけはHassabisが火曜日にSubstackで公開した論考だ。彼は「AGIに近づきつつある今、リスクへの対処に向けた緊急の行動が必要だ」と警告した。
HassabisのSubstack論考:FINRAモデルの提案
Hassabisが最も具体的な提案を示した。
「フロンティアモデルがサイバーセキュリティにもたらす課題はすでに顕在化している。能力が向上し続ける中で、核・生物リスクを含む他の脅威も間もなく現れるかもしれない。さらに先には、ますます自律的に、再帰的に自己改善するシステムを制御するための堅牢なセーフガードが必要になる。」
— Demis Hassabis
彼が提案したのは、米国に**FINRA(金融業規制機構)のような標準化機関**を設立するモデルだ。FINRAは証券会社を監督する米国の民間自主規制機関で、政府機関ではなく独立した専門家集団による監督という点が特徴である。Hassabisはそのボードに「独立した第一線の技術専門家とオープンソース代表者」を含めるべきだと主張した。
この提案に対し、OpenAIのAltman、MicrosoftのSatya Nadella、さらにElon Muskらも賛意を表明した。MuskはxAIのCEOであり、前述の主要3社とは別の立場の人物だ。AI開発において競合・対立関係にある面もあるMuskがこの提案に賛意を示した点は、規制の方向性に対するより広い業界的合意の存在を示唆するものとして注目される。
3者それぞれの立場と主張
Hassabisが制度設計の具体案を先導した一方で、AltmanとAmodeiもそれぞれの立場から規制の必要性を訴えている。
AltmanはOpenAIとしての公式見解として、AIシステムの社会的影響が拡大する中で企業の自己申告に依存した現行の枠組みは不十分であると繰り返し主張してきた人物だ。今回の論争でも、Hassabisの提案内容に同調する形で賛意を表明している。
Amodeiは、Anthropicの共同創業者としてAI安全性研究を企業の中心的ミッションに据えてきた経緯がある。同じく共同創業者のJack Clarkも「AIのフロンティアにいる全員が、第三者によるテストと、それに基づく政策標準の策定に賛成している」と明言した。Anthropicはもともとの設立動機がAI安全性への危機感にあるだけに、規制強化への支持は同社の一貫した姿勢の延長線上にある。
3人が過去5週間でそれぞれ独自の見解を公表し、結果として大きく重なり合ったという事実は、単なる偶然ではなく、業界全体に蓄積されてきた問題意識の表れとも読める。
3者が合意している点、していない点
3人の主張を整理すると、以下の点では明確に一致している。
- AIシステムが公開される前に第三者による独立テストが必要
- 業界の自己申告モデルからの脱却
- 規制の枠組みは国際的な影響力を持つ機関を軸に据えるべき
- その機関の設立は米国が主導すべき
一方、米国政府が単独で最終的な審判者であるべきかについては、3者の見解は一致していない。
なぜ今これが重要か
従来のAI業界は「自己報告」が規制の主な手段だったが、それへの批判は長年くすぶっていた。モデルの能力が急速に向上し、サイバーセキュリティや生物・核リスクへの影響が現実の懸念として浮上する中、業界内部からも独立した監視機構を求める声が高まっている。
競合関係にある3社のトップが同じ方向性を示したことは、規制立法の議論を加速させる可能性がある。ただし、規制の「最終的な決定権を誰が持つか」という核心的な問いについては、まだ答えが出ていない。
詳細はGodfathers of AI in rare agreement on AI regulationを参照していただきたい。