7月16日、Crunchbaseが「China And AI Lead Asia's Startup Funding To Multiyear Peak In Q2」と題した記事を公開した。2025年初頭に低コスト・高性能モデルで米国AI業界に衝撃を走らせたDeepSeekが、わずか1年余りで74億ドルという桁外れの資金調達を完了した。この1件だけで、2026年Q2におけるアジア全体のAI調達総額の約3割近くを占める計算だ。
DeepSeekが74億ドル調達——AI資金調達の異常な集中
Crunchbaseのデータによると、2026年Q2にアジア全域のスタートアップに流入した資金は総額428億ドルに達した。これは過去3年超で最高の四半期総額だ。
その中でも突出しているのがAI分野への資金集中だ。AIスタートアップがアジア向けベンチャー資金の60%超、約260億ドルを獲得した。これも過去最高水準だ。
最大の調達案件は、中国の大規模言語モデル開発企業DeepSeekによる74億ドルの資金調達(6月、企業評価額は報道ベースで500億ドル)。DeepSeekは2025年初頭に低コストで高性能なモデルをリリースして米国AI業界に衝撃を与え、その後もオープンソース戦略を継続している企業だ。今回の調達規模はアジアのスタートアップ単体としても異例の水準となる。
2位タイは2社、各25億ドル。中国の基盤モデル開発スタートアップ**StepFun(2023年創業。元Microsoft Asiaの研究者らが設立し、大規模マルチモーダルモデルの開発を手掛ける)と、シンガポールを拠点とするAIデータセンター開発企業DayOne**(中国・香港でデータセンターを展開するGDS International系列の企業で、アジア太平洋地域向けにAIインフラを提供する)だ。
資金が少数の企業に極端に集中している構造は、件数データにも表れている。Q2の投資件数は数年来の低水準を記録した。金額は過去最高、件数は数年来の低水準——という二極化が進んでいる。
中国が圧倒的首位、前年比424%増
国別では、中国企業が300億ドル超を獲得し、他を圧倒した。前年同期比で424%増、前四半期比でも76%増という急増ぶりだ。
2位以降はシンガポールが約36億ドル、インドが約33億ドルと続く。中国との差は歴然としており、Q2のアジア全体の資金調達は実質的に「中国+AI」によるものだといえる。
ステージ別でも全面高
資金調達の増加は特定のステージに限られていない。全ステージにわたって前年比での増加が確認されており、AI投資ブームの広がりを裏付けている。
- レイトステージ(シリーズC以降):約210億ドル。4年超ぶりの高水準で、前年同期比で3倍超。DeepSeekをはじめとする大型案件が押し上げた。
- アーリーステージ(シリーズA・B):約184億ドル。2021年以来の高水準、前年同期比で約3倍、前四半期比57%増。大型案件の恩恵がアーリーフェーズにも波及している形だ。
- シード:約37億ドル。前四半期とほぼ横ばいで推移しているが、Crunchbaseは報告遅延(実際の調達からデータベースへの反映に数週間〜数ヶ月かかる)を考慮すると最終的にはさらに上振れする見通しと補足している。
「選ばれた創業者」への集中が加速
記事の締めくくりでCrunchbaseは、全体的に明るい数字が並ぶ一方で、「投資家の選別姿勢は依然として厳しい」と指摘している。大型資金が流れ込む創業者がいる一方、小規模な調達さえ苦戦している創業者も多い、という二極化の構造は続いているという。件数が低水準にとどまる中での金額の急膨張は、まさにその構造を数字で示している。
詳細はChina And AI Lead Asia's Startup Funding To Multiyear Peak In Q2を参照していただきたい。