7月16日、Los Angeles Timesが「Big Tech's $725-billion AI binge is starting to pay off, report says」と題した記事を公開した。この記事では、ビッグテックが投じた総額7,250億ドル規模のAI投資が、収益面で減価償却コストを上回り始めたという調査結果について詳しく紹介されている。
AIへの巨額投資、初めて「採算ライン」を超えた
調査会社Exponential Viewのレポートによると、2026年第1四半期、中国を除くAIのグローバル売上高はハイパースケーラーおよびネオクラウド(後述)で250億ドルに達し、データセンターやチップへの投資に紐づく推定減価償却コスト210億ドルを上回った。これは2四半期連続での超過であり、AI企業が設備投資コストを売上でカバーし始めたことを示すマイルストーンだ。
ただし、余裕はほとんどない。減価償却費だけで収益の3分の2以上を消費しており、電力・人件費・資金調達コストをカバーする余剰は薄い。レポートは「今のところ経済性は成立している。しかし誤差の許容範囲は狭い」と述べている。
この結果が意味するのは、AI投資の持続可能性をめぐる業界最大の問いへの、暫定的な答えだ。Meta、Alphabet、Microsoft、Amazonの主要4社は、2025年以降の設備投資計画として総額7,250億ドルを表明しており、その多くがAIインフラに充てられる。これは歴史的規模の企業支出だ。
Exponential Viewの創業者でスタートアップ投資家でもあるAzeem Azharは、Bloomberg Newsに対し次のように語った。「辛うじて減価償却のハードルを越えた、という状況だ。大雑把に言えば、時間とともに改善はしている。設備投資のこの段階で、ハードルをドラマチックに超えていたとすれば、むしろ何かを取りこぼしていたということになる」。
オープンモデルとDeepSeekへのシフト
採算ラインの達成と並んで注目すべきデータがある。複数のAIモデルへのアクセスを開発者に提供するプラットフォーム「OpenRouter」のデータによると、Google・OpenAI・Anthropicのモデルへのトークンリクエストのシェアは、2025年6月の72%から2026年6月には33%に低下した。代わりにオープンウェイトモデルやDeepSeekなど中国製モデルへの移行が進んでいる。
Azharはこれをパワーユーザーが単純なタスク向けに安価・高速なモデルに移行している現象と解釈する。「領収書から数字を抜き出して経費精算スプレッドシートに入れるだけの作業に、ノーベル賞級の頭脳は必要ない」と彼は表現した。
ただし、これが主要基盤モデル企業の終わりを意味するとは限らない。高価格を維持するには「追加サービス、ロックイン、プレミアム課金を可能にするあらゆる要素」で競争する必要が出てくる、とAzharは指摘している。
「ネオクラウド」とは何か
本レポートで繰り返し言及される「ネオクラウド」とは、AWS・Azure・Google Cloudといったハイパースケーラーのインフラを借り受け、GPUクラスタをAI企業向けに提供する新興クラウド事業者を指す(CoreWeave、Lambda Labsなどが代表例)。これらの企業はリース・債務・株式を通じてより多くの金融リスクを資本市場に転嫁しており、レポートはその点を財務リスクとして明示している。
GPU減価償却の仮定が問われている
レポートの分析はGPUを含むIT機器の耐用年数を6年と仮定している。チップの世代交代が速い現状を考えれば楽観的との見方もある。
※編集部の考察:過小な減価償却費計上はAI企業の財務開示をめぐる論点の一つとして業界内で議論されており、本レポートの仮定もその文脈で読まれる可能性がある。
ただし、レポートのデータはその懸念を部分的に打ち消す。NvidiaのH100チップ(2023年発売)の1時間あたりレンタル価格は、発売時の約80%を維持している。Azharは「4年目に入っても完全に需要がある。実際、NvidiaのBlackwellチップの供給が需要に追いつかない中で、この1年で価格は上昇している」と述べた。Amazon Web ServicesのCEO Matt Garmanも2月、継続的な需要を理由に6年前のNvidia A100サーバーを退役させていないと発言している。
生成AI収益は「過去最速の技術普及速度」
レポートによると、中国を除く生成AIの過去12ヶ月の累積収益は1,100億ドルに達した。インターネット、モバイルアプリ、クラウドといった過去のITウェーブと比較して、3倍の速度でスケーリングしているという(チップ製造は含まない)。
分析はExponential Viewが1,000社以上を対象に構築したデータセットに基づく。企業の決算開示、経営陣の発言、プレス報道、クラウドプロバイダーの開示を組み合わせ、AIサプライチェーン各層での二重計上を避けるよう調整されている。
詳細はBig Tech's $725-billion AI binge is starting to pay off, report saysを参照していただきたい。