7月16日、Bruno Ferreiraが「Linus Torvalds rebukes anti-AI stances in the Linux kernel code review process, says 'Linux is not one of those anti-AI projects'」と題した記事を公開した。LinuxカーネルのコードレビューへのAIツール導入をめぐり、Linus TorvaldsがAI反対派の開発者を正面から批判した件を伝えている。
Linuxカーネルのメーリングリスト上で、Torvaldsは次のように述べた。「AIを強く嫌う人たちがいることは分かっている。だが、これは私が絶対に譲らない領域だ。(中略)Linuxはアンチ・AIプロジェクトのひとつではない。それが不満なら、オープンソースらしくフォークするか、去るかすればいい。」さらに「AIはツールだ。私たちが使う他のツールと同じように。そして明らかに有用なツールだ」とも断言している。Torvaldsは2024年時点ではAIツールを「誇大宣伝されすぎ」として懐疑的に見ていた。それが約2年を経て明確なAI容認へと転換した発言であり、開発コミュニティに大きな波紋を呼んでいる。
この議論の発端は、Sashikoと呼ばれるAIベースのコードレビューツールをめぐる対立だ。GoogleのエンジニアRoman Gushchinらが開発したSashikoは、オプトイン形式(メーリングリスト単位で導入を選択できる)の多段階コードレビューツールで、カーネルパッチを自動解析する。プロジェクトの説明によれば、提案されたパッチに含まれるバグの53.6%を検出できるとされており、しかもそのパッチはすでに人間によるレビューを通過したものだという。誤検知率は「20%以内」とされている。重要なのは、Sashikoはコメントを投稿するのみで、自律的にアクションを起こすわけではない点だ。
Sashikoをカーネルレビューに活用していたGushchinに対し、開発者のLaurent Pinchartが「パッチ作者へコメントを送る前にSashikoの出力を人間がトリアージすべきだ」と提案した。根拠として挙げたのは、AI生成コードに批判的な立場を取るSoftware Freedom Conservancyのガイドラインだ。同団体はAI生成コードが著作権やライセンス上の問題を引き起こしうるとして警戒を呼びかけている。Gushchinはこの提案に「それではツールの意義が失われる」と反論。Torvaldsも同じ見解を示し、PinchartのスタンスをAIに対して過度に否定的だと批判した。
Torvaldsの発言で特に印象的なのは「自然知能が常にそれほど優れているわけでもない」という一言だ。人間によるレビューをすり抜けたバグをSashikoが検出しているという現実を踏まえた上での発言であり、AI礼賛でも人間否定でもなく、純粋に実用主義的な視点である。Torvaldsはまた「このツールは恥ずかしいバグを見つけ続けている」とも述べ、AIツール活用に反対する開発者については「大声で無視する」と明言した。
オープンソースコミュニティにおけるAI活用の方針は、各プロジェクトで判断が割れている。GentooやCurl、GhosttyといったプロジェクトはLLMによるコントリビューションを制限または禁止する措置を取っているとされる。一方、Linuxカーネルの主要メンテナとして知られるGreg Kroah-Hartmanがローカルのボットを使ってバグを探していることも報じられており、現場レベルでのAI活用はすでに進んでいる。TorvaldsがこれだけはっきりとAI活用を支持する立場を表明したことは、Linuxカーネルコミュニティの今後の方針に実質的な影響を与えるはずだ。
詳細はLinus Torvalds rebukes anti-AI stances in the Linux kernel code review process, says 'Linux is not one of those anti-AI projects'を参照していただきたい。