7月15日、Futurismが「Meta Used Its Own Flawed AI to Pick Which Employees to Lay Off, Lawsuit Claims」と題した記事を公開した。Metaが独自の社内AIプラットフォームを使ってレイオフ対象者を選定したとして、元従業員26人が集団訴訟を起こした件について詳しく報じている。
「AIが人事を決めた」――Metaの元社員26人が訴訟
Reutersの報道によると、Metaの元従業員26人が今年初めに実施された大規模リストラに関して集団訴訟を提起した。訴状によれば、Metaは「Checkpoint」と呼ばれる社内のAI統合型人事評価プラットフォームを使い、解雇対象者を選定した。
原告には、エンジニア、マネージャー、研究者、デザイナーのほか、Checkpointに直接アクセスできる立場にあったディレクター1名も含まれる。いずれも氏名は訴状から伏せられている。
問題の核心:「育休・病気休暇が評価に不利に働いた」
訴訟の最も深刻な主張は、Checkpointが従業員の休暇取得を"エンゲージメント不足"と誤認識したという点だ。
原告の約半数が、産休・育休を取得したことがレイオフの直接的な原因だったと主張している。これらは米国法上、FMLA(家族・医療休暇法)などで保護された活動だ。Checkpointはそうした保護対象の休暇と「業務への不関与」を区別できなかったとされる。
また、障害による医療休暇、忌引き休暇、家族の介護のための休暇を取得した従業員も同様に標的にされたと訴えている。
さらに衝撃的なのは、経営幹部から休暇取得を直接思いとどまらせる発言があったケースが存在する点だ。訴状に登場する匿名のディレクターは、主治医に勧められたFMLA休暇を取得しようとした際、マネージャーから「リストラ対象になる」と警告を受けたと述べている。
Checkpointが使用した評価指標についても問題視されている。訴状によれば、同プラットフォームは不透明な生産性メトリクスおよびLLMのトークン使用量を判断基準の一部として用いていたとされる。なお、LLMのトークン使用量とはAIツールの利用量を示す指標だが、これがCheckpointの基準として訴状に明記された事実として記述されているのか、原告側の解釈として主張されているのかは、元記事の範囲では明確に判別できない点に留意が必要だ。いずれにせよ、職種によって利用量に自然な差が生じる指標を普遍的な生産性の尺度として用いることへの疑義が訴訟の論点の一つとなっている。
Metaの反論:「意思決定したのは人間だ」
Metaの広報担当者はReutersに対し、訴訟の基本的な事実関係を否定するコメントを出した。
「人員管理と組織に関する意思決定は、過去も現在もAIではなく人間が行っている」
ただし、Checkpointの存在や、同プラットフォームが人事評価プロセスで何らかの役割を果たしていたかどうかについては、明確な言及を避けている。
なぜこの訴訟が重要か
今回の訴訟は、AIを人事プロセスに組み込む企業が増えるなかで、法的・倫理的リスクがどこにあるかを示す事例として注目される。
特に問題となるのは、AIシステムが保護対象の行動(育休・病休の取得)を不利な評価として扱ってしまう構造的バイアスだ。アルゴリズムがブラックボックスであるほど、こうした差別は発見しにくく、是正も困難になる。
現時点で訴訟が求める救済内容についてはReutersの報道が参照元となるが、Metaとの法的合意の関係上、各原告はそれぞれ個別に独立した訴訟を起こす必要があるとReutersは伝えている。
詳細はMeta Used Its Own Flawed AI to Pick Which Employees to Lay Off, Lawsuit Claimsを参照していただきたい。