7月14日、PYMNTSが「JPMorgan Wants Employees to Go Easy on AI Usage」と題した記事を公開した。この記事では、JPモルガンが従業員に対しAIの使いすぎを控えるよう呼びかけ、コスト意識を持ったモデル選択を促していることについて詳しく紹介されている。
「最新モデルをアナリストレポートの要約に使う必要はない」
AI活用に積極的な姿勢で知られるJPモルガン・チェースが、7月14日の決算説明会で意外な方向性を示した。CFO(最高財務責任者)のJeremy Barnumは、従業員に対してAIの使用量を抑えるよう促していると語った。
具体例として挙げたのがレポートの要約業務だ。
「ツールはそれが得意だが、アナリストレポートを要約するためにわざわざ最新の超高価なモデルを使う必要はない。目的に合ったモデルを使い、オープンソースが適切な場面ではそちらを活用し、最終的に価値を得ているかを確認する——それが考え方だ」
この発言が示すのは、「AIを使うかどうか」ではなく「どのAIを、いつ使うか」という問いへの移行である。トークンコスト(AIモデルに処理させるテキスト量に応じて発生する費用)は、現時点では「財務的に重大な数字ではない」としながらも、Barnumは「今年下半期には意味のある加速を見込んでいる」と述べており、コスト管理を将来の重要課題と位置付けている。
一方で1,000件のAIユースケースを開発中
抑制を呼びかける一方で、CEOJamie Dimonは同じ決算説明会で、JPモルガンが現在約1,000件のAIユースケースを開発中だと明かした。そのうち約50件が主要プロジェクトで、不正検出、リスク管理、マーケティング、顧客開拓、議事録作成、文書レビューなどが含まれる。
Dimonは「会社の特定部門において大きな効率化をもたらす」と期待を示した。すでに一部の事業部門では人員を大幅に削減し、多くの従業員を他部門へ再配置しているという。
ただし、Dimonはこう釘を刺した。「AIの最終的な受益者は顧客だ。競争によって、生産性向上の多くは銀行マージンの永続的な拡大ではなく、より良い製品、コスト削減、エラー削減へと転化していく」。
バンク・オブ・アメリカも同日、管理の重要性を強調
同じ7月14日、Bank of AmericaのCEO Brian Moynihanも決算説明会でAIへの慎重なアプローチを語った。
「非常に有用だが、慎重に管理しなければならない。データを完璧にし、ルールベースを整備して、ミスを起こさないようにする必要がある」
JPモルガンが「コストに見合うモデル選択」を問題意識の中心に据えているのに対し、Bank of Americaは「データ品質とガバナンスの整備」をAI活用の前提条件として強調している点が対照的だ。両社ともAI投資を積極的に拡大しているが、そのリスク認識のフレームはやや異なる。JPモルガンが運用効率の最適化を重視するのに対し、Bank of Americaはオペレーショナルリスクの制御を優先する姿勢を前面に出している。
大手金融機関が相次いでAIの「使い方の質」に言及し始めたのは、単なるコスト削減の話ではない。金融業界全体がAI投資を拡大する中で、PYMNTS Intelligenceのレポートは、金融サービスや保険、ヘルスケア、メディア・広告分野の企業がAI投資を増やしている一方、「どのプロジェクトに本当の資本を投じ、どれがまだ実証段階か」を選別し始めていると指摘している。両社の発言はその選別プロセスが経営トップレベルの議題として定着しつつあることを示している。
「使う・使わない」から「何をどう使うか」へ
JPモルガンの動きは、企業のAI戦略が「導入フェーズ」から「最適化フェーズ」へ移行しつつあることを示す一例だ。最新・最高性能のモデルを何にでも使うのではなく、タスクに応じてモデルを使い分け、オープンソースも積極活用する——この方針は、AI活用コストの増大に頭を悩ませる多くの企業にとっても現実的な指針となりうる。1,000件ものユースケースを同時並行で開発しながら「使いすぎるな」と通達する姿は、AI活用の成熟度が上がるほど「量」より「質と費用対効果」が問われるという現実を端的に体現している。
詳細はJPMorgan Wants Employees to Go Easy on AI Usageを参照していただきたい。