7月15日、Inside AI News が「US Publishers Sue Google Over Gemini AI Training With Copyrighted Books」と題した記事を公開した。Googleは自社の社内文書で最大1,000億ドルの罰金リスクを認識しながら、著作権保護された書籍をGeminiのAI学習データとして転用し続けたと訴状は主張している。米大手出版社3社とベストセラー作家がニューヨーク連邦裁判所に提訴した。
Googleは「内部文書で法的リスクを認識していた」と訴状が主張
訴訟を起こしたのはHachette Book Group、Cengage Learning、Elsevierの大手出版社3社と作家のScott Turow。7月14日(月)、ニューヨーク連邦裁判所に提訴した。
訴状の核心は、GoogleがGoogle BooksやGoogle Play Books向けに締結した限定的なライセンス契約のもとで提供された書籍を、無断でGeminiのAI学習データとして転用したというものだ。訴状はこれを「史上最も大規模な著作権侵害の一つ」と表現している。
さらに踏み込んだ主張がある。Googleの社内文書を引用し、同社はGoogle Play Booksのテキスト使用によって100億〜1,000億ドルの罰金リスクがあると自ら試算していたにもかかわらず、AI開発を優先して使用を続けたと訴状は指摘している。
訴状には具体的な書籍名も記載されており、N.K. ジェミシンの『The Fifth Season』やLemony Snicketの『Who Could That Be at This Hour?』が例として挙げられている。
著作権侵害の経済的損害:「100ページの小説が39セント、20分で生成」
訴状が強調するのは、著作者の収入基盤への直接的な打撃だ。GeminiはAI学習済みコンテンツをもとに、100ページのミステリー小説を20分・39セントで生成できるという。人間の作家が同様の作品を書くコストとは比較にならない。
訴状はこの点について「AIが原著作物の安価な代替品を大量生成できるようになることで、著作業の経済的基盤が崩壊する」と主張している。
法的な背景:2016年の勝訴がGoogleの盾になるか
Googleは過去、著作権をめぐる訴訟で「フェアユース(公正利用)」を主な根拠として戦ってきた。2016年にはGoogle Booksのスキャン行為についてフェアユースが認められ、勝訴している。
ただし、その判決が認めたのはスニペット(断片)の表示であり、AI学習のためのフルテキスト取り込みではない。今回の原告側はこの点を突く構えで、「目的と規模が根本的に異なる」と主張している。
この訴訟は2023年に同じGoogleを相手取った作家・イラストレーターによる別訴訟とも関連する。その訴訟は、Googleが画像生成AIの学習にクリエイターの作品を無断使用したとして提起されたものだ。HachetteとCengageはその訴訟への参加を試みたが、Googleが反対したため、今回の別訴訟に至ったという経緯がある。
業界全体での著作権訴訟の動向
生成AIをめぐる著作権訴訟はGoogleだけの問題ではない。OpenAIやMetaも同様の訴訟を抱えており、結果は割れている。
- Anthropicは昨年、出版社との著作権訴訟で裁判外和解を成立させた(和解金額は元記事には記載なし)
- Metaは昨年6月、同様の訴訟で勝訴(フェアユースが認められた)
また訴訟の外では、カズオ・イシグロやフィリッパ・グレゴリーを含む数千人の作家が今年初め、AI企業による無断使用への抗議として「空白の本」を象徴的に出版するという行動に出ている。
Googleは今回の件についてコメントを出していない。今後の争点は、AI学習が**変容的利用(transformative use)**として認められるか、それとも原著作物の市場代替として判断されるかに集約される見通しだ。原告側は損害賠償、永久差止命令、学習に使用したコピーの破棄命令を求めている。
詳細はUS Publishers Sue Google Over Gemini AI Training With Copyrighted Booksを参照していただきたい。