7月15日、Inside AI Newsが「New York, Amsterdam, and Dublin Restrict Data Centers Amid AI Boom」と題した記事を公開した。AIブームによる電力・水資源・土地利用の負荷を背景に、ニューヨーク州がアメリカ初の州レベルでの建設凍結を宣言し、アムステルダムは2030年まで新設・拡張を禁止する方針を打ち出した。データセンターの立地問題は、いまや議会や住民投票に持ち込まれる政治的イシューへと変質しつつある。
ニューヨーク州がアメリカ初の「一時凍結」を宣言
最も注目すべき動きはニューヨーク州だ。Kathy Hochul知事は50MW以上の電力を消費するデータセンターを対象に1年間の建設モラトリアム(凍結)を発令した。アメリカの州レベルで完全凍結に踏み切ったのはニューヨークが初めてである。凍結期間中、環境保全局(DEC)は新規の裁量的許可を停止し、環境影響評価の基準策定を進める。
対照的な動きもある。メイン州では20MW超のデータセンターを対象とした18ヶ月間のモラトリアム法案が超党派で可決されたものの、Janet Mills知事が拒否権を行使した。特定プロジェクトへの例外規定が欠如していることへの異議で、州政策と地域経済利益の衝突という、データセンター建設問題に繰り返し現れる構図を体現している。
なお、元記事の主要3都市(NY・アムステルダム・ダブリン)の事例とは別に、カリフォルニア州モントレーパーク市では2026年6月、住民投票によってデータセンターの永久禁止が決定されたと伝えられている(※本稿執筆時点での付加情報。元記事における扱いの比重については原文を確認されたい)。アメリカの都市が投票でデータセンターを永久禁止した初の事例とされており、雇用や税収を材料にした業界側の説得を住民が退けた形だ。この直接民主主義的アプローチが他都市に波及する可能性がある。
ヨーロッパの主要拠点も続々と規制を強化
ヨーロッパでも規制の包囲網が狭まっている。
アムステルダムは2019年にすでに1年間のモラトリアムを実施しており、2025年4月には少なくとも2030年まで新設・拡張を禁止する方針を打ち出した。NYの1年間の一時凍結と比べると、その期間・強度は明らかに異なる長期的な措置である。オランダ全土でも2022年以降、超大規模(ハイパースケール)データセンターを2ヶ所の指定地域に限定している。ただし、Microsoftは2026年1月、施設を3棟に分割して規制の閾値をそれぞれ下回るという形で承認を取得しており、業界側の「規制への適応」も着実に進んでいる。
ダブリンでは、グリッド(電力網)への過負荷を理由に、送電系統の運用者が2021年から市内へのデータセンター新規接続を事実上遮断していた。この凍結は2025年12月に解除されたが、新規接続にはオンサイト(自前)の発電設備が義務付けられるようになった。エネルギーの自己調達を事業者に求めるこの条件は、再生可能エネルギーのマイクログリッドを整備できる資本力のある事業者に有利に働く。
規制の背景:電力と水、二重の圧力
国際エネルギー機関(IEA)によれば、世界のデータセンターの電力消費量は2030年までに現在の2倍になると予測されている。大規模なAIモデルの学習・推論処理が主要な要因であり(※「GPT-5のような大規模モデル」という具体例は編集部が例示したもので、元記事に同表現が存在するかは原文を確認されたい)、単一のハイパースケール施設が小都市に匹敵する電力を消費するケースもある。
電力だけではない。冷却のために1日あたり数百万ガロンの水を蒸発させる施設も存在し、水資源が逼迫している地域では深刻な問題となっている。2024年にはチリでGoogleが計画していた施設が水使用への懸念を理由に裁判所に差し止められた。
業界団体は、モラトリアムが投資を規制の緩い地域に逃がし、化石燃料依存の地域での建設が増えることで地球全体の排出量がかえって増加するリスクを指摘している。一方、規制推進側はコストが地域コミュニティと生態系に転嫁されていると反論する。
インフラ設計への影響
こうした規制環境の変化は、データセンターの設計思想そのものを変えつつある。
一つの方向性は分散化・小型化だ。ダブリンが示したオンサイト発電の義務化は、大規模集中型から分散型へのシフトを促す。エッジコンピューティングのアーキテクチャは、施設単体のフットプリント(電力・水・土地の占有)を抑えながら処理能力を確保する手段として、こうした規制環境と親和性が高い。
もう一つの方向性は冷却技術の転換だ。従来の空冷方式に代わり、液体冷却(液冷)技術はPUE(電力使用効率)の改善と水消費量の削減を両立できるとして注目されており、大手クラウドベンダーによる導入事例が増えている。規制強化が液冷導入の経済的インセンティブを押し上げる構図だ。
さらに、オンサイト再生可能エネルギーや蓄電池への投資も、事業者に迫られる選択肢となりつつある。アムステルダムやダブリンの事例が示すように、グリッドへの依存を前提とした従来のビジネスモデルは、今後の立地戦略の中核に据えられなくなる可能性がある。
データセンターの立地問題は、技術者やインフラ担当者だけでなく、政策立案者・住民・投資家を巻き込んだ多層的な議論へと広がっている。
詳細はNew York, Amsterdam, and Dublin Restrict Data Centers Amid AI Boomを参照していただきたい。