7月14日、Wiredが「Siri AI Is Becoming Apple's Everything Tool」と題した記事を公開した。この記事では、iOS 27公開ベータで刷新されたSiri AIの主要機能と、Appleがアシスタントをスマートフォンの基盤として再設計した経緯について詳しく紹介されている。
デバイス丸ごとインデックスが、Siriを別物にした
今回の刷新で最も注目すべき変化は、UI上の見た目ではなく、デバイス全体をオンデバイスでインデックス化する仕組みだ。
iOS 27でSiri AIを有効にすると、iPhone内部でインデックス処理("Optimizing Search and Siri"と表示される)が始まる。これは写真・テキスト・メール・カレンダーなどを横断した、端末内の検索可能なデータベースを構築するプロセスだ。記者の実機(iPhone 16 Pro Max)では完了まで1週間強かかった。
このインデックスが完成すると、Siriは端末上の文脈を一気に活用できるようになる。記事内の具体的なデモでは、「今週の予定を教えて」とSiri AIに尋ねると、グループチャットで話題になっていた映画のチケット購入を勧めたり、TikTok Shopからの荷物の到着日を通知したり、誕生日パーティとライブの予定をカレンダーから拾ったりと、複数のアプリをまたいで文脈を結合して回答を返した。
デジタルデザインエージェンシーのBig MediumのプリンシパルであるJosh Clarkは次のように述べている(以下は編集部による日本語訳):
「Siri AIはChatGPTやClaudeが簡単には持てない種類のコンテキストにアクセスできる。SiriはOSに組み込まれているからだ」
この発言が示すように、クラウド上でユーザーとやり取りするだけの汎用AIと、OSレベルで端末に根を張るSiriとでは、アクセスできる文脈の質が根本的に異なる。
一方でChatGPTやClaudeが標準で備えるユーザー情報のメモリー機能は現時点では未実装だ。たとえばビーガン向けレシピを探す際、毎回「自分はビーガンだ」と伝え直す必要がある。デバイス内の文脈は強力でも、会話をまたいだ個人の好みや属性の記憶は今後の課題として残る。
アプリ単位でSiriによる学習をオフにすることも可能だ。設定 → Siri AI → App Access と進み、対象アプリの「Learn from this App」を無効化すれば、そのアプリのデータはSiriに使われなくなる。
チャットアプリ化、画面認識、カメラ統合
新しいSiriアプリ
ChatGPTやClaudeに似たチャットUI形式の専用アプリが追加された。過去の会話履歴の確認や継続が主な用途だ。会話の保存期間は設定から「永久」「1年」「30日」の3択で変更できる。
ただし記事著者によれば、Siriはすでにホーム画面を下にスワイプして起動するSpotlight検索に統合されており、専用アプリを開いてチャットを始めるユースケースはあまり多くなかったとのことだ。
画面認識(Onscreen Awareness)
以前から「Visual Intelligence」として存在していた機能が、Siri AIに統合された形で引き続き利用できる。現在画面に表示されているコンテンツをSiriが参照できるため、代名詞だけで会話が成立する。
記事内の例では、Blueskyで歌手のLordeがMetaのAIスマートグラスを批判したという投稿が流れてきた際、投稿を画面に表示したまま「彼女はどこでそれを言ったの?」と尋ねると、SiriはLordeが誰かを確認するまでもなく、マドリードのフェスティバルでの発言であることと、ソースリンクを返した。
カメラ統合
カメラアプリに「Siri」タブが追加され、カメラで捉えた映像をリアルタイムでSiriに分析させることができる。ボタン構成は以下の3つだ:
- 中央ボタン:映像を解析してSiriが自動でテキスト要約を生成
- 左のメッセージアイコン:画像をSiriにアップして追加プロンプトを入力可能
- 右の画像検索アイコン:関連するウェブリンクを検索
対応デバイスと生態系への展開
Siri AIはiPhone 15 Pro以降が対象だ。iOS 27自体がインストールできても、旧モデルでは新Siriは利用できない。
iPad・Mac・Vision Proへの展開も行われており、MacにはSiriへの専用ショートカット、iPadにはスクリーンショット連携が追加されている。Apple生態系全体を横断して文脈が積み上がっていく設計は、単一デバイスで完結するアシスタントとは異なる方向性を示している。
AndroidのGeminiとの比較
IDCのシニアリサーチディレクターであるNabila Popalは「Androidデバイス、特にPixelやSamsungでは、GoogleのGeminiが同様のタスクをすでに実現していた」と指摘する。一方で「平均的なAppleユーザーは、Androidにどんな機能がすでにあるかまだ知らない」とも述べており、Siri AIは競合に追いついた側面もある。ただしAppleの巨大なiPhoneユーザー基盤に対してこの体験が展開される点は、業界全体への影響として無視できない規模感を持つ。
試すには
- Apple Beta Software ProgramでiOS 27公開ベータに登録
- ダウンロード前にデバイスのバックアップを取ること
- インストール後、設定からSiri AIのウェイトリストに登録し、通知を待つ
インデックス処理に1週間程度かかるため、すぐに全機能が使えるわけではない点は念頭に置く必要がある。
Geminiへの「追いつき」という観点では、今回の刷新で一定の水準に到達したと言える。残るメモリー機能の欠如や、処理完了までの長い待機時間をAppleがどう解消していくかが、次の評価軸になるだろう。
詳細はSiri AI Is Becoming Apple's Everything Toolを参照していただきたい。