7月14日、The Next Webが「Microsoft emissions jumped 25% as AI data centres grow」と題した記事を公開した。Microsoftは2020年に「2030年までにカーボンネガティブを達成する」と高らかに宣言したが、直近の会計年度における温室効果ガス排出量は前年比25.1%増を記録した。誓約から5年、数字は誓約とは逆方向に動き続けている。
排出量は1年で16.2→20.3百万トンへ
Microsoftの2026年版サステナビリティレポート(※後述の信頼性注記を参照)によると、直近の会計年度における排出量は16.2百万トンから20.3百万トンへ、25.1%増加した。これは、2020年のカーボンネガティブ宣言時のベースライン比で、すでに約58%上回っている水準だ。
2030年まであと4年。現時点では誓約とは逆方向に数字が動いている。
※編集部の考察:本文中でリンクしたMicrosoftサステナビリティレポートのページは、記事公開時点(2025年7月)において最新版へのアクセスを想定しているが、URLの正式公開状況は変動する可能性がある。数値の一次確認はMicrosoftの公式IR・サステナビリティページから行うことを推奨する。
数字が膨らんだ理由:一部は「正直になった結果」
ただし、この増加分の全てが新たな排出というわけではない。
Microsoftはこれまで、電力グリッドに実質的な再生可能エネルギーを追加しない短期型の再生可能エネルギー証書(REC)を購入することで、排出量の見かけ上の数値を抑えていた。今回はその会計上の「下駄」をやめた。
その影響が数字に端的に表れている。スコープ2排出量(購入電力由来)の全排出量に占める比率が、前年の1.6%から13.3%へと1年で急変している。この数値はいずれも同一会計年度間の比較であり、2020年のベースライン比ではなく前年度対比の変化だ。会計手法の変更により、これまで表に出ていなかったデータセンターの実態が財務報告に追いついてきた結果といえる。
スコープ2:事業者が購入した電気・熱・蒸気などの使用に伴う間接排出。スコープ1(自社の直接排出)、スコープ3(サプライチェーン全体)と合わせてGHGプロトコルの分類体系を構成する。
残りは本物の増加:AIインフラが化石燃料を押し上げる
会計処理の変更では説明できない増加分もある。AIおよびクラウドインフラの建設加速だ。新設データセンターには電力だけでなく、鉄鋼やコンクリートも大量に必要となる。
特に目を引くのが、ディーゼル・原油の使用量が51%増加している点だ。一方で天然ガスや自動車用燃料は削減できており、重機・発電機の稼働を中心とした建設現場での消費増が主因とみられる。
Microsoftが強調する取り組み
同社は悪化した数字だけを開示しているわけではない。レポートでは以下の成果も示している。
- 効率化・再生可能エネルギー契約がなければ排出量は約3,400万トンに達していたと試算
- 年間電力使用量の100%を再生可能エネルギー調達で相殺
- 1,400万立方メートル超の水を還元(取水量を上回る)
- 廃棄サーバーの92%を再利用またはリサイクル
最高サステナビリティ責任者のMelanie Nakagawaは「このスケールのイノベーションには、同じスケールの責任が伴わなければならない」と述べている。ただし、これらの取り組みが実績として認められるとしても、2030年という期限に向けた軌跡は依然として逆方向を示している。
Microsoft一社の問題ではない
AI投資に伴う排出量増加は業界全体の傾向だ。Amazonは前年比16%増、Googleは約25%増を記録しており、ともにAIを主因として挙げている。MetaはLouisianaのHyperionキャンパスが500億ドル超に膨張し、地元コミュニティを二分した。
データセンター建設ラッシュは、米国では史上最大規模のガス発電所建設ブームを引き起こし、ラストベルト地域の電気料金を押し上げ、ニューヨーク州が新規データセンターの建設凍結措置を講じる事態にも至っている。洋上にデータセンターを浮かべる構想を検討する企業まで出てきている。
「エネルギー効率の改善曲線がやがて排出量を押し下げる」という業界の主張は変わらない。Microsoftにはその意志も資金もある。ただし、自社レポートが示す数字は今もなお上昇を続けている。
詳細はMicrosoft emissions jumped 25% as AI data centres growを参照していただきたい。