7月15日、Ramish Zafarが「Samsung Reportedly Lands Anthropic as Foundry Customer, Looking to Reverse its Chip Deficit With 2nm AI Orders」と題した記事を公開した。SamsungファウンドリがAnthropicのAIチップを2nmプロセスで受託製造する契約を獲得したとされる報道について詳しく紹介されている。
AnthropicがカスタムAIチップの内製化へ、製造はSamsungに
Google(TPU)やAmazon(Trainium)、OpenAIに続き、Anthropicもカスタムシリコンの設計・調達に動いている。AIモデルの推論・学習コストが増大する中、NVIDIAのGPUに依存しない自社チップの開発は、大手AI企業にとって避けられない選択肢になりつつある。
こうしたカスタムシリコンへの移行は、2010年代半ばにGoogleがTPUの開発を本格化させて以降、業界全体に広がったトレンドだ。Googleは汎用GPUでは非効率な行列演算を専用回路で処理することで学習・推論コストを大幅に下げることに成功し、AmazonやMicrosoftもそれに続いた。Anthropicがこの流れに乗るのは自然な帰結といえる。
韓国メディアのNewsWorksが業界関係者の話として伝えたところによると、SamsungファウンドリはAnthropicのAIチップ製造を受注したという。内部関係者は「同部門がAnthropicのチップ生産を決定した」と述べており、この受注がファウンドリ事業の赤字解消と成長フェーズへの転換をもたらすと見込まれている。
Anthropicの調達戦略とSamsungの立ち位置
背景となるのは、2025年5月に完了したAnthropicのシリーズH資金調達ラウンドだ。Anthropicはこのラウンドで「戦略的インフラパートナー」として複数企業を発表しており、メモリ大手のSamsung、SK hynix、Micronがその名を連ねた。Anthropicはこれらのパートナーが「顧客の必要とするペースでコンピューティングリソースを確実にスケールさせる」支援をすると説明している。
業界関係者によれば、Anthropicのインフラパートナーの中で、メモリ以外の半導体(ロジックチップ)を製造できるファウンドリを持つのはSamsungのみであるため、チップ製造の受注先としてSamsungが有力視されるのは自然な流れだという。
TeslaのAI5チップとの連続性——Samsung 2nmへの信頼回復
今回の報道は、SamsungがTeslaのAI5チップのテープアウト(チップ設計の最終工程。完成した設計データ=マスクデータをファウンドリに送付し、製造を開始する段階)を進めているという直近の発表とも重なる。
SamsungファウンドリのシニアエンジニアであるKim Jeong-gon氏がLinkedInに投稿した内容によれば、「Tesla-Samsung AI5チップはテープアウト段階に入った」とし、「このチップはテキサス州テイラー工場にて2nmプロセスを用いて製造される予定であり、まもなくTeslaの最新製品に搭載される」としている。
Tesla CEOのElon Muskは2025年1月、AI5チップについて「NVIDIAのBlackwellおよびHopperシリーズと競合しながら、大幅にコストと消費電力を削減できる」と発言していた。
ファウンドリ競争の構図——Samsungにとっての意味
Samsungのファウンドリ事業は、TSMC優位の市場構造の中で苦境が続いていた。TSMCが先端プロセスで圧倒的なシェアと歩留まり実績を誇る一方、Samsungは主要顧客の一部をTSMCに奪われる形で受注を失ってきた経緯がある。先端プロセスでの歩留まり改善は同社ファウンドリ事業の最大の課題とされており、今回のAnthropicおよびTeslaという2つのAI大手との取引は、その懸念を払拭する上でも象徴的な意味を持つ。
2nmプロセスでTeslaとAnthropicという2つのAI大手を顧客として確保できれば、製造能力と歩留まりへの市場の信頼回復につながる可能性がある。AIチップの内製化トレンドが加速する中、どの企業がどのファウンドリを選ぶかは、半導体業界の勢力図に直結する問題だ。GoogleやAmazonがTSMCを主軸に据えている状況で、SamsungがAnthropicやTeslaを取り込めれば、先端ファウンドリ市場における競争軸が変わりうる。
詳細はSamsung Reportedly Lands Anthropic as Foundry Customer, Looking to Reverse its Chip Deficit With 2nm AI Ordersを参照していただきたい。