7月14日、Leela Kumiliが「Google and Industry Partners Announce Agentic Resource Discovery Specification for AI Agents」と題した記事を公開した。GoogleとパートナーがAIエージェント向けのオープン標準「ARD仕様」を発表し、エージェント間のツール・API探索に共通基盤を提供しようとしている取り組みを詳報している。
AIエージェントが「道具を探す」問題
AIエージェントがツールを呼び出す方法は、MCP(Model Context Protocol)など既存のプロトコルで標準化が進んでいる。しかし「そもそも、どのツールが存在するかをエージェントはどうやって知るのか」という、より手前の発見レイヤーの問題は手つかずのままだった。
ARD(Agentic Resource Discovery)仕様は、このギャップを埋めるために設計されたオープン標準だ。MCPやOpenAPIを置き換えるものではなく、それらの上に重ねる「発見レイヤー」として機能する。
既存技術との対比で言えば、DNS-SDやmDNSがローカルネットワーク上のサービス探索を担うように、ARDはAIエージェントが組織横断でツールを動的に発見する仕組みを提供する。OpenAPI Discovery(/.well-known/openapi.json等)が特定APIのスキーマを記述するのに対し、ARDはその上位レイヤーとして「どこに何があるか」をインデックス化・集約する点が異なる。
Google Cloudのディスティングイッシュトエンジニア(Distinguished Engineer:技術的影響力を認められた上位職)、Srinivas Krishnanは動機をこう語る:
問題はシンプルに言えるが、解決は難しい。特にエンタープライズでは「とりあえず動くものを見つけろ」では済まない。ガバナンスがあり、セキュリティとアイデンティティが後付けではなく最初から組み込まれていなければならない。
仕様の核心:カタログとレジストリ
ARDは2つの構成要素を中心に設計されている。
- カタログ(catalog):組織が自ドメイン上に
ai-catalog.jsonというマシンリーダブルなファイルを公開する。ここにはツール、API、スキル、エージェントのエンドポイントなどの情報が記述される。 - レジストリ(registry):複数のカタログを集約し、エージェントが「タスクの意図」をもとに検索できるようにする。ハードコードされた統合や静的なエンドポイントリストに依存しない形で、組織をまたいだリソース探索が可能になる。
信頼性の検証も設計の中核に位置づけられている。ドメインベースの所有権確認メカニズムにより、エージェントは発見したリソースの正当性を接続前に検証できる。自律的に動くエージェントがサードパーティのサービスや企業システムをまたいで処理を実行する場面では、これが重要なリスク低減策となる。
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ARDの仕組み(出典:Google Blog Post)
業界横断で策定、早期実装も登場
ARD仕様はMicrosoft、GitHub、Hugging Face、Cisco、Databricks、GoDaddy、NVIDIA、Salesforce、ServiceNow、Snowflakeが共同で策定に参加した。
早期実装もすでに動いている。GitHub CopilotのAgent FinderとHugging FaceのDiscover Toolは、いずれもARDを使ったランタイム時の能力発見を実装済みだ。
MicrosoftでAI担当のプリンシパルエンジニアを務めるJennifer Marsmanは、ARDの立ち位置をこう整理する:
目標は全リソースを網羅する単一のグローバルカタログを作ることではない。インデックスする対象、サービスを提供する相手、ランク付けの方法がそれぞれ異なる、多くのディスカバリーサービスが存在することになる。ARDはAIクライアントが能力を発見するのを助けるが、認証・認可・ガバナンス・組織的な信頼の判断を代替するものではない。
コミュニティの反応
元記事によれば、開発者コミュニティでは標準化そのものの価値を評価する声が上がっている。統一されたベースラインプロトコルがあれば、数多くの独自形式のドキュメントを解析せずとも代替実装を構築しやすくなるという点が支持されている。
一方で、「仕様の有効性は結局、公開されるツールの品質や、そのアクセス・価格モデルに依存する」という指摘も出ており、標準だけが独り歩きしても意味がないという冷静な見方もある。
現在の状態と今後
ARD仕様は現在、参照実装とドキュメントが公開済みで、組織はカタログの公開やフェデレーションモデルの実験をすぐに始められる。スキーマ定義、信頼メカニズム、相互運用のガイドラインが含まれており、仕様のリポジトリもGitHubで公開されている。
今後はコミュニティからのフィードバックによってスキーマやガバナンスモデルの拡張が進む見込みだ。
詳細はGoogle and Industry Partners Announce Agentic Resource Discovery Specification for AI Agentsを参照していただきたい。