7月13日、Hassan Mujtabaが「Korean AI Startup, Furiosa AI, Is Doubling Its Chip Production To 50,000 Units Next Year While Its Upcoming 2nm "Stork" Chip Challenges NVIDIA With The "World's Best Inference"」と題した記事を公開した。韓国のAIスタートアップFuriosa AIが2nmプロセスの次世代AIチップ「Stork」を開発しつつ、チップ生産量を来年5万個規模へ倍増させる計画について詳しく紹介されている。
推論特化で勝負——演算コア最小化・帯域幅特化の設計思想
AI推論市場でNVIDIAに挑む韓国スタートアップが具体的な数字を出してきた。
Furiosa AIは現行の第2世代LLM推論専用チップ「RNGD(Renegade)」の生産量を、今年の2万個から来年は4万〜5万個へ倍増させる計画だと、韓国メディアETNewsが業界関係者の話として報じた。すでにRNGDはSamsung SDSやLG AI Researchを顧客に持ち、量産フェーズに入っている。
Furiosa AIは2017年に設立された韓国のファブレス半導体スタートアップで、元Qualcomm・Samsungのエンジニアらが創業した。これまでに複数ラウンドの資金調達を実施しており、KakaoやSK Telecomなど韓国の大手企業も出資に参加している。国内ではSapeon(SK Telecom系)やRebellions(ANT Groupが出資)といった競合勢が台頭しているが、Furiosa AIはLLM推論への特化と独自アーキテクチャで差別化を図っている。
この生産拡大の背景にあるのは、Agentic AI(自律的にタスクを遂行するAIエージェント)の需要急増だ。トレーニングではなく推論の負荷が急増している現在のAI市場の構造が、同社の判断を後押ししている。
第3世代「Stork」——2nmとHBM4で構成するアーキテクチャ
5月に発表された第3世代アクセラレータ「Stork」は、BroadcomのAdvanced Packaging技術を活用した2nmプロセスで製造される。ティーザー画像からは以下の構成が確認できる。
- 2nmコンピュートチップレット × 2
- HBM4/4Eメモリスタック × 12(12-Hi 36 GBスタックを12基とすれば合計432 GB)
- IOコントローラ × 2
HBM4/4EはHigh Bandwidth Memory(高帯域幅メモリ)の最新世代規格であり、従来世代と比較してさらなる帯域幅の向上が図られている。GPUが大量のスレッド管理回路を必要とするのに対し、FuriosaのTensor Contraction Processor(TCP)アーキテクチャはそのロジックを省き、帯域幅とトークンスループットに特化した設計だと同社は主張する。
また、BroadcomのEthernetおよびPCIe IPを統合することで、ラックスケールのAIコンピュートクラスタ全体での高帯域ネットワーキングにも対応する。
開発者向けソフトウェアスタック
ハードウェア仕様と並んで、ソフトウェア面も特徴的だ。
FuriosaのSDKはPyTorchコードを自動的にシリコン上のオペレーションへマッピングする汎用コンパイラを提供する。さらに、より細かい制御が必要な開発者向けに「Virtual ISA」という宣言型プログラミングモデルを用意している。従来のGPUプログラミング(CUDAなど)に伴う非決定論的な複雑さを排除した設計だとしている。
共同創業者兼CEOのJune Paik氏は次のように述べている。
「BroadcomのインフラとFuriosaのTCP(Tensor Contraction Processor)アーキテクチャ、そして業界定義的なソフトウェアスタックを組み合わせることで、チップ単体を超えた包括的なソリューションを、トークンファクトリー時代に向けて提供できる。」
出荷時期と今後の展望
第3世代Storkチップのサンプル出荷は2028年前半を予定しており、次世代AIデータセンターの需要に応える形での量産を見込んでいる。
現時点ではNVIDIAのH100/B200シリーズが推論市場を圧倒しているが、TCPアーキテクチャによる「性能/ワット」と「コスト/トークン」での差別化を武器に、FuriosaはGPU以外の選択肢としてのポジションを狙う。韓国国内でもAI半導体への注目が高まるなか、同社が海外市場でどこまで存在感を示せるかが注目される。