7月14日、IEEE Spectrumが「The AI Arms Race in Technical Interviews Is Escalating」と題した記事を公開した。技術面接でAIを使って回答をリアルタイム生成する候補者と、AIでそれを検知しようとする採用側——その「AI vs AI」の構図が急速にエスカレートしている実態を、複数のエンジニアや採用担当者の証言をもとに詳述している。
AIで戦うのは候補者だけではない
リモートの技術面接で、候補者がAIアシスタントを使って回答やコードをリアルタイム生成する——そんな光景が珍しくなくなっている。Final Round AI、Interview Coder、ParakeetAIといったツールは、面接音声をリアルタイムで処理し、回答を即座に生成する。画面上に重ねて表示しても「検知不能」を謳う製品もある。
MetaのソフトウェアエンジニアMudit Sarafはこう表現する。「リアルタイムで届く答えを読み上げるだけでいい。少し演じれば済む話だ」。
これに対し、採用側も黙っていない。AIを使ったAI検知ツールの導入が進んでいる。SarafとMicrosoftエンジニアのShraddha Sunilが共同創業したGingerは、初回スクリーニング面接を担当するAI音声リクルーターだ。事前に定義した質問とリアルタイム生成のフォローアップ質問を行いながら、目線の動き、応答の一貫した遅延、タブ切り替え、AIらしい語句や文体といったシグナルを追跡し、AI利用者を検知する。
こうして「AI vs AI」の構図が生まれている。
なぜここまで過熱したのか
この問題が2025年時点で急速に過熱している背景には、構造的な要因がある。COVID-19以降のリモート面接の一般化により、候補者がAIツールを利用することへの物理的な障壁がほぼ消滅した。加えて、2024〜2025年にかけてテック大手・中堅を問わず続くレイオフの波が求職競争を激化させ、「手段を選ばず内定を取る」という動機を強めている。
AI採用ストラテジストのTatiana Teplovaは、この現象を「AIによるレイオフの嵐と求人不足のなかで生まれた猫と鼠のゲーム(cat-and-mouse game)」と表現する。企業がAIで履歴書をスクリーニングし始めると、候補者はそれへの対抗手段としてAIを面接に持ち込むようになった。
技術系リクルーティング会社CalTek StaffingのArchie Payneはこう説明する。「企業がAIで応募を大量フィルタリングし始めた。候補者はそれに気づき、自動化された選考プロセスへの対抗策としてAIを使い始めた」。
Navy Federal Credit UnionでシニアAIデータエンジニアを務めるRavi Kiran Pagidiは、この悪循環をより根本的な問題として捉えている。「プロセスが、実際の能力よりも『アルゴリズムをいかに最適化するか』の競争になりかねない」。
AI検知ツールにも限界がある
採用側のAIツールも万能ではない。Payneは「精度がまだ十分ではなく、優秀な候補者が誤検知(false positive)で弾かれるケースも出ている」と指摘する。採用難の状況でトップ人材を理由なく排除することは、企業にとって深刻な損失だ。
さらに深刻なのがバイアスの問題だ。スタンフォード大学のHuman-Centered AI研究所(Stanford HAI)による研究では、340万人の実際の求職者データを追跡した結果、AIスクリーニングツールがアジア系・黒人応募者に対して不利な影響をもたらすことが確認されている(※元記事に論文タイトル・公開年の記載なし。Stanford HAIの公開研究一覧はこちらから確認できる)。Teplovaは「プロセスのどこかに必ず人間を介在させ、公平性を担保すべきだ」と訴える。
「AIを使わせて評価する」という第三の道
一部の企業は検知に走る代わりに、AI利用を前提とした面接設計に転換している。MetaはすでにAI利用を許可しており、AI開発プラットフォームのFactoryも同様だ。
Factoryで技術採用を統括するVarin Nairはこう語る。「面接プロセスを、候補者が実際の仕事でAIを使う現実に合わせたい」。候補者は1時間以内にAIコーディングエージェントを使って本番品質のシステムを構築するか、実際のコードベースをフレームワーク移行する課題に取り組む。評価軸はテストの通過数や完成度ではなく、計画力・AIへの指示の出し方・デバッグ・解の説明能力だ。
「AIは使う人の判断力と同レベルにしかならない。弱い候補者はAIに考えさせ、それが詰まった瞬間に止まる。強い候補者はAIを使って速度を上げ、アーキテクチャやトレードオフの議論に集中する」とNairは言う。
CalTekのPayneも同方向の見解を示す。「最近見た優れた技術評価は、コードベースのウォークスルーやアーキテクチャ議論を含む協働型だ。こうした形式はAIで突破するのが難しく、候補者の本当の思考力が出やすい」。
記事全体の論調としては、AI検知という「いたちごっこ」には構造的な限界があり、AIを前提とした評価設計への転換が現実的な解として浮かび上がっている。
候補者へのリスク
一方、面接でAIを使う候補者へのリスクも現実だ。「技術コミュニティは人々が思っているより狭い。AIの使用が発覚すれば長期的なキャリアに影響する」とPayneは警告する。AIを使って準備することは問題ないが、面接本番での利用は「リスクとメリットを天秤にかけるべきだ」とし、そのリスクが候補者に有利に働くことはほとんどないと結論づけている。
詳細はThe AI Arms Race in Technical Interviews Is Escalatingを参照していただきたい。