7月14日、Futurismが「US Companies Are Realizing That Chinese AI Models Are Way Cheaper, Ditch American Ones」と題した記事を公開した。米国企業がコスト削減を目的に中国製AIモデルへ乗り換える動きが加速しており、すでに使用量ベースでは中国製モデルが米国製大手を上回るという逆転現象が起きている。
中国モデルが米国モデルを使用量で逆転
主要AIモデルのワンストップアクセスとその利用統計を提供するプラットフォーム「OpenRouter」のデータによれば、**DeepSeekとZ.ai(中国のAIスタートアップ智谱AI傘下のサービス)の中国製モデルが、AnthropicのClaudeやOpenAIのChatGPTを使用量で上回っている**という。
AIプラットフォーム「Featherless AI」のCEO、Eugene Cheah氏はFTに対してこう語っている。
「中国モデルは"部屋の中の象"です。企業は気づき始めている——最高のモデルでなくていい、速くて安いモデルで十分だ、と。」
この「逆転」を受け、DoorDash、Airbnb、Siemensといった大手企業が中国製AIモデルの採用に踏み切っていると、Financial Timesが報じている。
膨らむAIコストが乗り換えを後押し
企業のAI利用コストは急速に膨らんでいる。Ramp AI Indexの調査によれば、AIに積極的な企業では月あたり従業員1人につき7,500ドルのAIコストがかかっているという。ある組織ではClaude利用料として1ヶ月に5億ドル(約750億円)を消費したという極端な事例もあるが、これは外れ値であり、全体としてもAIコストの高騰が経営上の課題になっている実態が浮かぶ。
DoorDashの共同創業者Andy Fang氏はX(旧Twitter)上で、中国スタートアップMoonshot AIのモデルで「低レベルな作業」を処理することで大幅なコスト削減を実現していると明かした。サンフランシスコのスタートアップLindyはAnthropicのツールを完全に廃止し、DeepSeekの最新V4モデルへ全面移行している。
ジョージタウン大学セキュリティ・新興技術センターのリサーチフェロー、Sam Bresnick氏はこう指摘する。
「AnthropicやOpenAIにプレミアム料金を払う理由はあるのか?多くのワークロードでは、中国モデルで十分機能する。」
コスト以外の理由:オープンウェイトが持つ意味
中国製モデルの多くが「オープンウェイト」である点も採用を後押しする要因だ。オープンウェイトとは、モデルの重みパラメータ(AIの判断基準となる数値)が公開されており、ユーザーが自社用途に合わせてファインチューニングできる形式を指す。クローズドなAPIとは異なり、センシティブな社内データをどう処理するかをより詳細に把握・制御できる点が、セキュリティ観点でも評価されている。
地政学的な信頼の揺らぎも追い風に
コストとは別の軸で、米国製AIへの信頼が揺らいでいる側面もある。トランプ政権がAnthropicの「Mythos」モデル(Anthropicが開発した政府・防衛向けの特定用途モデル)への海外アクセスを停止したことは、海外企業に米国製AIへの依存リスクを強く意識させた。
カナダのAI企業CohereのCEO、Aidan Gomez氏はFTにこう述べている。
「Mythosのアクセス禁止は最も具体的な出来事でした。突然アクセスを失った人々がいた。単一のエンティティにワークロードを依存するリスクを露わにした。」
米国製モデルが「最先端」という認識自体も変化しつつある。中国スタートアップZ.aiが先月リリースした「GLM-5.2」(智谱AIが開発する大規模言語モデルシリーズの最新版)は、シリコンバレーの主要人物から「米国製システムと同等かそれに近い」と評価されており、その認識の転換を象徴している。
AI利用コストの高騰という現実の前で、地政学的な競争構図は後景に退きつつある。詳細はUS Companies Are Realizing That Chinese AI Models Are Way Cheaper, Ditch American Onesを参照していただきたい。