7月14日、The Next Webが「The AI memory crunch won't ease until 2028」と題した記事を公開した。AIブームによってメモリ市場の従来のサイクルが崩壊し、供給不足が2028年まで続くとの見通しと、その後に訪れる可能性のある史上最大規模の市場崩壊について詳しく論じた内容だ。メモリ価格の高騰はすでに一般消費者のデバイス購入やAI開発コストにまで波及しており、「いつ安くなるのか」という問いへの答えは想像以上に遠い。
「安くなるはず」のメモリがなぜ高騰しているのか
DRAMとNANDフラッシュは長年、典型的なコモディティとして振る舞ってきた。新工場が稼働して供給が増えれば価格が下がり、需要が追いつけばまた上がる——その周期は数十年にわたって繰り返されてきた。
だが今、そのサイクルが壊れた。
本来なら、2025〜2026年はダウンサイクルのはずだった。供給が需要に追いつき、価格は下落に向かうはずの局面だ。実際には逆が起きている。AIサーバー(GPUサーバー)が膨大な量の高帯域幅メモリ(HBM)、DDR5、NANDを消費し続けており、市場の在庫が根こそぎ飲み込まれている。HBMはGPUダイに直接積層する構造を持ち、通常のDDR系メモリとは製造ラインが分離されるため、AI需要の急増が既存のDRAM供給全体を圧迫するという連鎖が生じている。
その余波は一般消費者にまで届いている。スマートフォンの低価格帯モデルが事実上消滅しつつあり、Appleもメモリコストの上昇を理由にMacとiPadの価格を引き上げたと元記事は伝えている。
一方、メモリメーカーにとってはボーナンザだ。SK HynixとMicronは1年で売上高を約3倍に伸ばし、Samsungも約2倍に達した。
新工場は「最短でも3年後」
解決策は新工場の建設だ。資金は動き始めている。6月、韓国のイ・ジェミョン大統領はSK HynixとSamsungが主導する5760億ドル規模の投資計画を発表した。Micronも先週、米国内のサプライチェーン強化に最大30億ドルを投じると表明し、シンガポール・台湾・日本への追加投資も予定している。
しかし、どれも即効性はない。
メモリ工場(ファブ)の建設は、製造業の中でも特に難易度が高い部類に入る。許認可の取得、超純水システムの整備、数カ月単位で調整が必要なリソグラフィ装置——今日着工しても、稼働まで最低3年かかる。フル生産能力に達するにはさらに時間が必要だ。調査会社IDCは、供給不足が緩和されるのは2028年まで待たなければならないと予測している。
下流のすべてが割を食う
2028年まで、コストは川下のプレイヤーに転嫁され続ける。
AIインフラを借りているモデル開発者にとっては、レンタルコストの上昇が直撃する。元記事によれば、AWSはメモリ不足を理由にGPU料金を引き上げているという。AIラボ各社はこの4年間で数千億ドルの資本を費やしてきたが、「1トークンあたりのコストを黒字化する」という命題は、メモリが高騰するほど困難になる。
ハードウェアメーカーも設計で対応を迫られている。Samsungは搭載DRAMを省いた廉価版SSD——いわゆるDRAMレスSSD——の投入を準備していると元記事は報じている。この構成では、SSD内部に専用のDRAMキャッシュを持たず、代わりにホスト側のシステムメモリをキャッシュとして利用するHMB(Host Memory Buffer)技術を活用する。HMBはNVMe仕様でサポートされており、コスト削減には有効だが、高負荷時のレイテンシがDRAMキャッシュ搭載モデルに劣る場合がある点は留意が必要だ。
誰も価格に折り込んでいない「次の崩壊」
ここが核心だ。
メモリメーカーは、ブームの勢いを担保に巨大ファブの建設資金を調達する。そして彼らも熟知している——新キャパシティが一斉に立ち上がれば、市場が溢れて価格が崩壊する、と。それが従来のサイクルだ。AIブームはそのスイングをさらに大きくしただけで、構造は変わっていない。
この全体像は一つの前提の上に成り立っている。AI需要が伸び続けることだ。もし新工場の立ち上がりと同時にAI需要が失速すれば、元記事が引用するThe Registerの表現を借りれば「bust to end all busts(史上最大の崩壊)」が待っている。
問題は、メモリ供給とAI需要のどちらが先に限界を迎えるかだ。ファブが稼働する前にAIバブルが萎むのか、需要が持ちこたえるのか。現在の設備投資ラッシュは、その賭けの上に成立している。
記事はこう締めくくる。「RAMpocalypse(RAMの終末)は、メモリメーカーにとっては好機だ。それ以外の全員にとっては不安な時代であり、清算は先送りされただけで、キャンセルされたわけではない」。
詳細はThe AI memory crunch won't ease until 2028を参照していただきたい。