7月14日、The Next Webが「AI is cutting older workers' careers short, study finds」と題した記事を公開した。この記事では、ChatGPT登場後にAIの影響を受けやすい職種で55歳以上の労働者が失業率を高めているという研究結果について詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。
「AIに強い職種」の高齢者ほど、職を失っている
AIと雇用をめぐる議論はこれまで、大卒の新卒層への影響に集中しがちだった。しかしボストン大学退職研究センターのGeoffrey Sanzenbacher氏による新研究は、別の集団に焦点を当てる。55歳以上の、いわゆる「AIに代替されやすい職種」に就く労働者だ。
研究はアメリカの現在人口調査(Current Population Survey)のデータと、タフツ大学のDigital Planet Initiativeが作成したAIエクスポージャー指数(AIが各職種のタスクをどの程度こなせるかを測る指標)を組み合わせて分析している。「その職が消えるかどうか」ではなく、「AIがどれだけうまく仕事をこなせるか」を尺度にしている点が特徴だ。
比較の基準点はChatGPTが公開された2022年11月。それ以前と以後で、AIエクスポージャーの高い職種と低い職種の退職・離職パターンがどう変わったかを追っている。
「逆転」が起きた
研究で最も重要な発見は「逆転」だ。
ChatGPT登場前、AIエクスポージャーの高い職種に就く高齢労働者は、同世代の他の労働者と比べてむしろ離職率が低かった。デスクワーク中心で体への負担が少なく、給与も高い。長く働き続けやすい条件が揃っていた。
ChatGPT登場後、そのアドバンテージはほぼ消えた。離職率の上昇幅が、それまでの「有利さ」を相殺するほどに達したのだ。
そして重要なのは、彼らが「引退」ではなく「失業」として統計に現れていることだ。自ら退いたのではなく、仕事を探しながら職がない状態に置かれている。
職種別の数字:プログラマーは25%超の増加
職種ごとの予測離職率の変化を見ると、ダメージの大きさが鮮明になる。
- コンピュータープログラマー:8.7% → 11.1%(**+25%超**)
- 会計士・監査士:9.9% → 12.1%(**+約22%**)
- 塗装工(低エクスポージャー):約+2%
エクスポージャーが低い塗装工への影響がわずか2%にとどまる一方、プログラマーや会計士は20%以上の上昇を記録している。
これは従来の「自動化は工場労働者から奪う」という図式を完全に反転させる。今回の波は、学歴が高く、給与水準の高い職種から始まっている。
エクスポージャーの高い職種の労働者は、白人比率が高く、大卒以上の比率が2倍超で、週収入も平均1,410ドルと、低エクスポージャー層の869ドルを大きく上回る。
なぜ高齢者が特に不利なのか
Sanzenbacher氏は離職が起きるメカニズムを3つに整理している。
- 直接置換:AIが仕事そのものを代替し、失業または労働市場からの退出につながる
- 適応拒否:キャリア後半で新技術を学ぶことへの抵抗から自発的に離職する。個人用コンピューターが普及した時代にも同様のパターンが観察されている
- 生産性向上:AIが生産性を高め、賃金上昇とより充実した業務への集中を可能にし、むしろキャリアが延びる
現実がどちらに傾いているかは、生成AIの利用率に表れている。50〜64歳の生成AI利用率は**約18%**で、30〜40代の利用率を大きく下回る。AARPの調査では、55歳超でAIを「純粋に機会」と見る人が18%、「純粋に脅威」と見る人が28%だった。
研究の限界と正直な読み方
著者は過大解釈に慎重だ。影響は絶対値としては「緩やか」であり、今後変わり得る2つの要因も指摘している。
政府の研究予算削減がAIエクスポージャーの高い職種を直撃して影響を誇張している可能性と、逆に現在のAIスタートアップブームがデータサイエンティストへの需要を下支えして影響を過小評価させている可能性だ。
正確な読み方としては「崩壊」ではなく「格差の縮小」だ。AIは、高賃金の仕事と低賃金の仕事のキャリア長の差を、上から埋める方向で縮めている。
「58歳での失業」が意味すること
58歳で職を失うことは、28歳で失うこととは質的に異なる。キャリア後半の非自発的な離職は、誰も選ばなかった早期退職に直結し、準備できていない年金生活の開始を意味する。
各国政府が「もっと長く働け」と退職年齢の引き上げを提案する一方で、AIはその逆方向に静かに圧力をかけている。この矛盾は政策上の直接的な衝突だ。
GMが600人のIT人材をAIスキルへの転換を名目に削減したように、企業はすでにAIを前提に人員を再構築している。「経験」は、自分が持つことを期待されていないスキルに置き換えられるとき、有効な防御にならない。
過去40年間、「学位を取り、デスクワークに就き、体を壊す仕事は避けろ」というアドバイスに従った人々が、まさにその選択ゆえに最初のターゲットになっている。サム・アルトマンが「AIによる雇用の黙示録は起きにくい」と語っても、59歳の会計士が最後の働き盛りの10年を奪われる現実には、黙示録は不要だ。
詳細はAI is cutting older workers' careers short, study findsを参照していただきたい。