7月14日、Anthropicが「How Claude's values vary by model and language」と題した記事を公開した。30万件超の実会話を分析し、Claudeが表現する価値観をモデル・言語別に定量化した研究を紹介している。
3,000以上の価値観を「4軸」に圧縮する
LLMの「キャラクター」はどこから来るのか。Anthropicはこの問いに対し、定性的な印象論ではなく実データで答えようとしている。
今回の研究の核心は、Claude.aiの会話309,815件を対象に、Claudeが表現する価値観を体系的に計測したことだ。対象はSonnet 4.6、Opus 4.6、Opus 4.7の3モデル×上位20言語から均等サンプリングされている。
なお、Sonnet 4.6・Opus 4.6・Opus 4.7はいずれもClaudeの同世代ライン(Claude 4系)に属するモデルだ。SonnetとOpusはグレード(性能・規模)の違いを示し、4.6と4.7はOpusのマイナーバージョン間の差を指す。
価値観の特定には、2025年4月に発表された先行研究「Values in the Wild」の成果が土台になっている。同研究ではClaudeの実会話から3,307個もの価値観が抽出・分類されたが、数が多すぎてモデル間・言語間の比較が困難だった。そこで今回は次元削減(dimensionality reduction)を用いて、共起しやすい価値観をまとめ、4本の「価値軸」に圧縮した。
この4軸が全変動の**15%**を説明する:
- Deference vs. Caution:ユーザーの要求に従う姿勢 ↔ リスクや害を警戒する姿勢
- Warmth vs. Rigor:共感・ポジティブさ ↔ 正確性・透明性
- Depth vs. Brevity:深く掘り下げて説明する ↔ 簡潔に用件だけ返す
- Candor vs. Execution:自分の不確実性を正直に示す ↔ 磨かれた成果物を出す
各軸は「どちらかしか表現できない」という意味ではない。ただ実際には、一方の端に寄るほど反対側の価値観は出にくくなる傾向がある。
モデルごとの「価値プロファイル」
3モデルの違いは、ユーザーがすでに感じていた印象と一致している。

Sonnet 4.6(全会話平均からのズレ):Deference +0.14σ、Warmth +0.17σ、Brevity +0.14σ
- ユーザーのアイデアを肯定する、ユーモアや遊び心がある、相手のトーンに合わせる
Opus 4.6:Rigor +0.10σ、Deference +0.09σ、Brevity +0.08σ
- 要点だけ答える、リクエストのスコープから外れない
Opus 4.7:Caution +0.24σ、Depth +0.23σ
- 誤った前提に反論する、頼まれなくてもリスクを指摘する、自分のエラーや限界を認める、推論のプロセスを説明する
Opus 4.7の「Caution」への傾きが0.24σと最も大きく、他の軸・他のモデルと比べても突出している。安全性への配慮がトレーニングに強く反映された結果と読める。
言語によって変わる「Claudeの顔」
モデル間の差よりも興味深いのが、言語間での変動だ。最も大きな差はWarmth vs. Rigourの軸で現れた。
- Warmth寄り:アラビア語、ヒンディー語
- Rigor寄り:英語、ロシア語
英語のClaudeはCaution・Rigor・Depth・Candorに傾くのに対し、アラビア語のClaudeはWarmth・Deference・Brevity・Executionに傾く。同じモデルでも、会話言語によって別の「キャラクター」が出てくる。
Anthropicの以前のシステムカードでもClaudeの言語間挙動の差異は指摘されていたが、今回の研究はその差を「4軸スコア」として初めて定量化した。
この変動の原因として考えられるのは、トレーニングデータの言語ごとの分布の偏り、あるいは言語に紐づいた文化的コンテキストの影響などだが、今回の研究では原因の特定には至っておらず、今後の分析課題としている。
手法の透明性と限界
分析には、Anthropicが開発したプライバシー保護分析ツール「Clio」を使用。会話内容をClaudeが自動ラベリングする仕組みのため、「Claudeが自分自身を評価する」という循環的な構造になっている点は留意が必要だ。詳細な手法・プロンプト・追加分析・限界については付録PDFに記載されている。
また4軸が説明するのは全変動の**15%**に過ぎない。残り85%の変動は会話のトピック・ユーザーの価値観・タスクの種類など他の要因によるものであり、この4軸がClaudeの価値観の全体像を表すわけではない。
詳細はHow Claude's values vary by model and languageを参照していただきたい。