7月12日、CNBCが「'Almost unlimited': Execs says AI demand remains strong even as enterprises move to 'valuemaxxing'」と題した記事を公開した。この記事では、チップ株の乱高下が続く中でもAI需要は依然として旺盛であり、企業側の支出姿勢が「トークンマックス」から「バリューマックス」へと移行しつつある市場動向について詳しく紹介されている。
「AI需要はほぼ無限」——幹部たちの見立て
チップ株をめぐる株式市場の不安定な動きが、AI需要の鈍化懸念を呼び起こしている。MetaがAI計算リソースの余剰分を外部へ売り出すと発表したこと、Elon MuskのxAIも余剰キャパシティを貸し出していることが売り材料となった。Samsungの株価も、12カ月で360%超という急騰の後、好業績の発表にもかかわらず下落した。
しかし、今週CNBCのインタビューに応じた複数のAI業界幹部は、需要鈍化論を真っ向から否定した。
2024年末にIntelを退任した元CEOで、現在はPlayground Globalのジェネラルパートナーを務めるPat Gelsingerは、こう断言した。
「AI需要はほぼ無限だと思っている。あらゆる産業で知性を高めることで得られる経済的価値はほぼ無限だ。唯一の制約はエネルギーの供給だ。」
NvidiaのGPUを使ったデータセンターを構築するクラウドインフラ企業NebiusのChief Revenue Officer、Marc Boroditskyも同様のトーンで語っている。
「私たちが経験している需要は異常なほど旺盛だ。履行できる量をはるかに超える需要があり、それはしばらく続いている。」
AI向け独自チップを開発し今年上場したCerebras SystemsのCEO Andrew Feldmanも「業界全体では、コンピュート需要が利用可能なキャパシティを大幅に上回っており、データセンターが不足している」と述べ、MetaやxAIの余剰売りは「特殊なケース」と位置づけた。
韓国のチップスタートアップで、SamsungとSK Hynixが出資するRebellionsのCEO Sungyun Parkも「AIインフラのモメンタムはまだ巨大だ」と語り、大手ハイパースケーラーが過剰投資しているサインではないとの見方を示した。
データセンター内の光接続製品を手がけるLumentumは、製品が今後5年分売り切れの状態だと明かした。同社株は過去12カ月で約600%上昇している。
「トークンマックス」から「バリューマックス」へ
需要の総量とは別に、企業のAI支出の「質」をめぐる議論も起きている。
これまで企業の間では「トークンマックス(tokenmaxxing)」と呼ばれるアプローチが広まっていた。成果に関わらず、社員にOpenAIやAnthropicといったフロンティアモデルをとにかく使わせるという戦略だ。しかし、DeepSeekやAlibaba(BABA)のようなオープンソース系モデルが性能面で急速に追い上げる中、割高なフロンティアモデルへの支出の正当性が問われ始めている。
NebiusのBoroditskyはこの流れを「バリューマックス(valuemaxxing)」への移行と表現した。
「CFOがコスト削減の圧力をかけるなら、本来は価値創出を追求するべきだ。AIは支出を正当化できる価値を生み出すために使われなければならない。」
Cerebras' Feldmanはモデルの使い分けについて、こんな比喩を使った。
「食料品の買い物に大型バスを使う必要はない。」
つまり、高度な問題にはフロンティアモデル、単純なタスクにはより軽量なモデルを使い分けるというアーキテクチャが、今後の企業AI導入の標準的な形になるという見立てだ。
整理すると
- AI向けインフラ需要は供給を上回っており、データセンター不足は継続している
- MetaやxAIの余剰キャパシティ売りは業界全体の過剰供給を示すものではない、というのが業界幹部の共通認識だ
- 企業のAI支出は「とにかく使う」から「ROIを出す」へとフェーズが移っている
- フロンティアモデルとオープンソースモデルの使い分けが、コスト最適化の鍵になる
市場のボラティリティと現場の需要感には、依然として大きなギャップがある。日本企業においても、AI投資の「正当化」圧力は今後強まる一方とみられる。「とにかく導入した」フェーズを終えた国内企業にとって、バリューマックスへの移行は他人事ではなく、ROI設計をどう組み込むかが競争力の分岐点になりうる。
詳細は'Almost unlimited': Execs says AI demand remains strong even as enterprises move to 'valuemaxxing'を参照していただきたい。