7月12日、The Decoderが「Grades dropped from 96 to 48 percent when a Brown professor made students take the exam without AI」と題した記事を公開した。ブラウン大学の経済学教授がAIなし・監督付きの試験を実施したところ、クラス平均点が96%から48%に急落した。この数字が示すのは、AI時代における「成績」という指標そのものの信頼性の危機だ。
AIなしで試験を受けたら、平均点が半分以下になった
ブラウン大学でゲーム理論・数理経済学を専門とする経済学教授Roberto Serranoは、86名の受講生のほぼ全員がAIを使って試験に不正行為をしたと疑っている。対象は学部上級生向けの経済学コースで、数学的証明を多用する性質上、AI生成回答との照合が比較的容易だった。
問題の発端は持ち帰り式の中間試験だ。クラス平均は**96%**だった。同コースの過去の平均は65〜80%の範囲で推移しており、96%という数字は明らかに異常だった。Serranoが試験問題をChatGPTに投げてみると、学生の回答とほぼ同一の答えが返ってきた。さらに、多くの学生が、より直接的で自然なアプローチではなく、ChatGPTが選ぶような迂回した数学的証明を使っていた。
Serranoは学生に警告したうえで、期末試験を監督付きの対面式に変更した。結果は以下のとおりだ。
- 18名が履修を取り下げ、9名は試験に現れなかった
- クラス平均は**48.6%**に落ち込み、コース史上最低の成績
- 19名が不合格
- 中間試験に近いスコアを維持できた学生はごく少数
Serranoは中間試験を無効とし、期末試験の配点をコース全体の**80%**に引き上げた。
大学側の対応は「及び腰」
Inside Higher Edによると、Serranoは大学側の対応を「meek(腰が引けている)」と評した。管理部門は不正行為を個別に報告するよう指示するにとどまり、Serranoは「ridiculous(馬鹿げている)」と切り捨てた。
Serranoはより強い立場からの対応を求めており、「優秀な若者の相当数がカンニングをしても構わないと思うような社会は許容できない。それは衰退した社会、失敗した社会につながる」と述べた。現在も大学との議論は継続中だという。
2つの大規模研究が同じパターンを裏付ける
Serranoのケースは孤立した事例ではない。複数の研究が同様の傾向を示している。
中国・中部地域での研究(The Decoder既報)では、中学・高校生2万6,000人以上を30ヶ月にわたって追跡調査した。AI利用開始から6ヶ月後、宿題のスコアは18%上昇し、完了時間は64分から45分に短縮された。一方、試験スコアは20%低下した。入学試験では18〜24%の長期的な損失が確認され、その影響が完全に現れるまでに約2年かかることがわかった。長期利用者の約81%がこのパターン(宿題は速く・高得点、試験は低得点)に当てはまり、成績上位層ほど打撃が大きく、24%のパフォーマンス低下を記録した。
大規模成績データを用いた研究(同)では、米国の大規模研究大学における50万件以上の成績データを分析した。ライティングやプログラミング課題が多いコースでは、ChatGPT登場後にA評価の割合が13ポイント上昇した。この効果は監督のない宿題に集中しており、宿題の比重が高いコースでは、監督付き試験が中心のコースと比べてA評価が16ポイント高かった。
「宿題の点数」は何を測っているのか
今回のケースが示しているのは、AIツールが普及した環境における成績評価の機能不全だ。持ち帰り式課題の点数が学習到達度を反映しなくなりつつある状況は、教育機関だけの問題ではない。
2つの大規模研究が共通して示すのは、「AIによる宿題の外注」が短期的には成績を押し上げながら、試験という検証の場でその乖離を露わにするという構造だ。Serranoのデータはその乖離を1つのコースで可視化した事例だが、同様のパターンが数万人規模・数十万件規模の調査でも再現されているという点は重い。採用選考や資格認定において「学業成績」を参照するすべての場面で、その数字が何を根拠としているかを問い直す必要が生じている。日本の大学・企業においても、成績証明書や学習履歴の信頼性をどう担保するかは、すでに他人事ではない問いになりつつある。※編集部の考察
詳細はGrades dropped from 96 to 48 percent when a Brown professor made students take the exam without AIを参照していただきたい。
