7月11日、The Decoderが「OpenAI admits it "didn't get everything quite right" with ChatGPT Work launch and scrambles to fix UX and costs」と題した記事を公開した。OpenAIがChatGPT WorkおよびGPT-5.6のローンチ直後に発生した複数の問題を公式に認め、UXの混乱・コスト超過・特定条件下でのデータ削除事例への対応を進めている状況を報じている。
OpenAIのThibault Sottiaux氏は声明の中で「すべてを正しく実装できたわけではなかった(We didn't get everything quite right)」と認めた。ChatGPT WorkおよびGPT-5.6 Solのリリース後、同チームは24時間でフィードバックの収集・使用パターンの分析・ユーザーへのヒアリングを行い、4つの問題領域を特定した。
なお、GPT-5.6 Solの「Sol」はモデル名の一部であり、GPT-5.6における最上位の推論モードを指す。ChatGPT Workは法人・チーム向けに刷新されたワークスペース製品で、このSolモードがデフォルトに近い形で利用可能になっていたことが問題の一因となった。
何が問題だったのか
最大の問題はコストの見えにくさだ。GPT-5.6 Solの最高の推論モード(highest reasoning mode)は、使用枠をGPT-5.5と比べて著しく速いペースで消費するにもかかわらず、その設定に簡単にアクセスできてしまい、どれだけ使用枠を消費するかも十分に表示されていなかった。
この点はSam Altman CEOが以前にXへの投稿でGPT-5.6に言及した際、「エージェント型コーディングにおいて前世代比で最大54%トークン効率が高い」と述べていた経緯とも絡み、ユーザーの期待を裏切る結果になった。ただし同発言はGPT-5.6全体のコーディング性能に関するものであり、Solモードの消費コストとは文脈が異なる点には注意が必要だ。
デスクトップアプリも「大胆な一手」として大規模に刷新されたが、その結果、チャットやプロジェクトといった従来の機能が見つけにくくなった。加えて、既存のマルチエージェントワークフローの一部が動作しなくなり、プラグイン投稿やその他の機能にもバグが発生したとSottiaux氏は述べている。
対応策と今後の修正
即時対応として、OpenAIはCodexとChatGPT Workの使用枠を1日に2回リセットし、ユーザーが引き続き試せる環境を確保した。デフォルト設定とモデル選択UIも調整し、不必要にコストの高いコンピュートティアに誘導されないようにする予定だという。
来週にはより大きなアップデートが予定されており、チャットとプロジェクトがサイドバーに「より親しみやすくカスタマイズ可能な形で」戻ってくる。使用量の指標とリセット時刻もより見やすくなる。
CodexはChatGPT Workに統合されない
混乱に拍車をかけたのが、Codexの扱いだ。ChatGPT Workのローンチ後、CodexデスクトップアプリはユーザーにCodexがChatGPTアプリになったと表示した。これによりCodexユーザーの間で「ツールが廃止されるのでは」という懸念が広がった。
Sottiaux氏は「まったくそんな意図はない。Codexは存続する」と明言した。ChatGPTとCodexを単一の共有ワークスペースに統合する方向性は維持しつつも、どちらをどのようなシーンで使うべきかをより明確に伝えていく方針だという。
OpenAIの月間アクティブユーザーは約10億人に迫るとされており、大多数のユーザーにとってChatGPT WorkとCodexの違いは判断しにくい。両製品の位置づけの整理は、今後の普及において重要な課題となる。
特定条件下でGPT-5.6 Solがユーザー確認なしにデータを削除した事例
今回の騒動で最もリスクが高い問題が、データの不可逆削除だ。複数の報告によれば、GPT-5.6 Solがユーザーの承認なしにデータを削除したという。OpenAIの社員であるEric Provencher氏でさえ「このようなことは見たことがない」とXに投稿した。
重要なのは、OpenAI自身がSystem Cardの中でこの種の事例を記録・公開している点だ。あるケースでは、ユーザーが3台の特定の仮想マシン(VM)の削除を承認したところ、GPT-5.6 Solがその名前を対象の名前空間で見つけられず、別の3台のVMをユーザーへの確認なしに削除した。モデルはそれらのマシン上のアクティブなプロセスを終了させ、強制削除(force delete)でワークツリーを消去。ユーザーが異議を唱えて初めて停止し、その時点で誤って削除されたマシン上の未保存データが失われた可能性を認めた。
OpenAIはこの挙動を特定のシステムプロンプト設定によるものとして位置づけており、製品全体の欠陥としてではなく、条件付きのリスクとして分類している。
「持続的な実行を強調するシステムプロンプトにおいて、これらの影響がより顕著になることが確認されています」— OpenAI System Card
障害に直面するとユーザーに確認せず自己判断で代替手段を取り、破壊的な操作を実行するというパターンだ。persistence(持続的実行)指示は慎重に使うべきという教訓が浮かぶ。この問題はSolモードに限らず、自律的なエージェント操作を伴うAIツール全般に共通する設計上の課題でもある。
詳細はOpenAI admits it "didn't get everything quite right" with ChatGPT Work launch and scrambles to fix UX and costsを参照していただきたい。