7月12日、The Decoderが「Claude Cowork's biggest use case is the mundane office work nobody wants to own, Anthropic says」と題した記事を公開した。Anthropicがチャットエージェント「Claude Cowork」の120万件のセッションを分析した結果、企業でのAI利用の約半数が「誰も担当したがらない地味な事務作業」に費やされていることが判明した実態を詳しく伝えている。
Claude Coworkは、Anthropicがビジネスユーザーをターゲットとしてリリースしたチャット型AIエージェントだ。会話を通じて業務タスクを処理することに特化しており、同社の開発者向けツールであるClaude Codeとは用途が異なる。
120万セッションの分析が示す「企業AIの実態」
AnthropicはClaude Coworkの実際の利用状況を分析した。対象は2026年5月11〜31日の120万件の匿名セッション(60万以上の組織が対象)で、自動分類システムが各セッションを20の業務カテゴリに振り分けた。
結果が示したのは、「AIは高度な技術作業より、誰も主担当になりたがらない周辺業務に使われている」という実態だ。
使用量の約半分を占める2カテゴリ
最大カテゴリは**「ビジネスプロセス・業務運営」で33.4%**。バラバラな進捗報告を1本のレポートにまとめる、オンボーディングチェックリストを作成する、スプレッドシートの突き合わせをする——といった作業が含まれる。
2位は「コンテンツ作成・コピーライティング」で16.4%。下書き、スライドデッキ、投稿文、提案書などが対象だ。この2カテゴリだけで全利用の「約半数」をAnthropicは占めると説明する。
Anthropicはこれらを「connective in nature(つなぎの性質を持つ作業)」と表現する。スプレッドシートは散在するデータを1か所にまとめ、スライドは背景知識の異なる聴衆に意思決定を伝え、オンボーディングチェックリストは組織の暗黙知を新入社員に渡す。どれも誰かの「本業」とは言い難いが、どの職場にも存在する作業だ。
コーディング系の利用は意外なほど少ない
残りのカテゴリの内訳は以下のとおりだ:
- ソフトウェア開発:8.7%
- DevOps・インフラ:7.0%
- リサーチ:6.4%
- データ分析:5.8%
- ドキュメント処理:4.1%
- 営業オペレーション:4.0%
- 個人アシスタント:3.8%
- 教育:2.4%
- ミーティング分析:1.8%
コーディング系の比率が低い点について、Anthropicは「インターフェースがモデルの使われ方を大きく左右する」という自社の主張を裏付けるものだと見ている。開発者がコードを書いたりデバッグしたりする作業には引き続きClaude Codeが使われており、Coworkでは開発作業を取り巻くコミュニケーション業務を処理するという棲み分けが自然に生まれているのだ。
「ブランクスクリーン問題」をCoworkが解消
Anthropicは3つの具体例でCoworkの使い方を説明している。弁護士は書類の整形・提出をCoworkに任せて法律分析に集中できる。採用担当者は面接スケジュール調整と評価サマリーをCoworkに処理させ、候補者の評価に時間を使える。チームリードは難しい意思決定を説明するスライドをCoworkに作らせることで、決断そのものに時間を充てられる。
「空白のスクリーン」が最初のハードルであり、Coworkはアイデアやバラバラな情報を最初のドラフトに変えることでその壁を取り除く——とAnthropicは説明する。
分析の限界と今後
Anthropicはデータの限界も自ら認めている。サンプリングは1時間あたりの最大セッション数が固定されているためピーク時が過小評価されており、数値はあくまでシェア(%)であって絶対量は不明だ。また全セッションの約5%は趣味や雑談などの個人利用であり、純粋に業務用途のみを反映したデータではない。
カテゴリ設計にも課題がある。「ビジネスプロセス・業務運営」は職種ではなく活動を分類したもので、マーケティング・財務・HRといった職種は個別カテゴリを持たず、この大カテゴリに吸収されている。これが33%という高比率の一因とAnthropicは見ている。
Coworkは最近デスクトップアプリからWebおよびスマートフォンにも展開され、Mac・Windowsのデスクトップを直接操作する機能も追加されている。Anthropicは引き続き分析をアップデートする方針だ。
なお元記事では、Meta・スタンフォード大学・イリノイ大学によるレビュー論文にも言及している。同論文はClaude CodeやCowork、OpenAIのCodex(「ChatGPT Work」として提供されているサービスで、かつてのコード補完モデルとは別物)をAIエージェントの基盤的トレンドの代表例として取り上げており、コードはもはや最終成果物ではなくAIエージェントが動く「動作レイヤー」だと論じている。今回のAnthropicの分析はその議論の実データ的な裏付けとして文脈に置かれている。
詳細はClaude Cowork's biggest use case is the mundane office work nobody wants to own, Anthropic saysを参照していただきたい。
