7月10日、CNBCが「Meta's stock heads for best week since early 2024 as optimism builds around AI strategy」と題した記事を公開した。MetaのAI戦略への期待感を背景に同社株が週間で15%上昇し、2024年初頭以来最高の週間パフォーマンスを記録しつつあることを報じている。わずか1週間で主要AIモデルを2本リリースし、自社チップ開発の具体的なスケジュールも明らかになるなど、複数の材料が重なった形だ。
1週間で2つの主要AIモデルをリリース
今週のMetaの動きは速かった。火曜日に画像生成AIモデルMuse Imageを、木曜日にはコーディングとエージェント処理に特化したMuse Spark 1.1をそれぞれ発表した。
※なお、Muse Image・Muse Spark 1.1はいずれも元記事中に登場する製品名をそのまま使用しているが、Metaの既存製品ブランド体系(MetaAI、Llamaシリーズ等)との関係については元記事の範囲外であり、詳細は元記事および公式発表を確認されたい。
Muse Imageはクリエイターや広告主を新しいサブスクリプションサービスへ誘導するための施策と位置づけられている。Metaは月額7.99ドルからのAIサブスクリプションをテスト中であり、広告収益への依存から脱却し、収益源の多様化を模索する戦略の一環だ。直接課金モデルへの移行が本格化すれば、Metaのビジネス構造に大きな変化をもたらす可能性がある。
Muse Spark 1.1は、OpenAIやAnthropicが先行するAIコーディング市場への参入を明確に示したモデルだ。その開発を主導しているのが、Meta Superintelligence Labsである。同ラボは2026年に入ってから業界で大きな注目を集めた組織再編の産物で、データラベリング・AI評価インフラ大手Scale AIの創業者であるAlexandr Wangをトップに招聘して設立された。Wangの移籍は2026年における大型人材移動として広く報道されており、MetaがAI研究体制を根本から作り直す意志の表れと受け止められている。Metaが自社のファウンデーションモデル(基盤となるAIモデル)を初めて公開したのは今年4月のMuse Spark初版が最初であり、そこからわずか3ヶ月でのメジャーアップデートとなる。このスピード感自体が、同ラボの本気度を示す指標として市場に評価された面もある。
自社AIチップ「Iris」が9月製造開始へ
株価上昇のもう一つの要因は、自社開発AIチップに関する報道だ。Reutersの報道によれば、MetaはコードネームIrisと呼ばれる独自チップの製造を9月に開始する予定だという。
元記事では、Metaが来年中に14ギガワット(GW)の電力容量を目標に掲げていると報じられている。データセンターのインフラ規模は通常メガワット(MW)単位で語られることが多く、14GWという数値はその1,000倍に相当する極めて大規模な目標値だ。元記事の表記をそのまま使用しているが、単位の正確な意味については元記事原文を参照されたい。Irisはこのデータセンター拡張計画の中核を担う位置づけとされている。
コスト面でも具体的な分析が出始めている。Bank of Americaのアナリスト、Justin Postは以下のように述べている。
「Metaはコスト削減を大幅に実現し、MWあたりの設備コストを我々やアナリスト予測を大きく下回る水準に抑えた可能性がある」
独自チップの開発は、NVIDIAへの依存を減らしコスト構造を改善する意図がある。同様の取り組みはGoogleのTPUやAmazonのTrainiumでも見られる流れであり、大手テック各社が共通して進める方向性だ。MetaがIrisで一定の成果を出せれば、AI推論・学習コストの構造的な引き下げにつながり、長期的な収益性改善の根拠として市場に受け入れられやすくなる。
株価は年初来マイナスを脱出、ただしNasdaqには大きく遅れ
今回の上昇でMetaの株価は年初来でプラス2%超に転じた。ただし、同期間にNasdaqが**13%**上昇していることを考えると、絶対的な水準ではまだ遅れを取っている状況だ。
今週の一連の発表は、MetaがAI競争において単なる追随者ではなく独自の戦略を持つプレイヤーであることを改めて示す内容だったと言える。モデル開発のスピード、サブスクリプション課金への布石、そして自社チップによるインフラ内製化という三つの柱が同時に可視化されたことが、投資家センチメントの転換点になった可能性がある。OpenAI・Anthropic・Googleという先行勢に対してどこまで追いつけるかは依然として問われ続けるが、少なくとも市場はMetaの方向性を以前より肯定的に評価し始めている。
詳細はMeta's stock heads for best week since early 2024 as optimism builds around AI strategyを参照していただきたい。