7月11日、LangChainが「OpenWiki Brains: Proactive Memory for AI Agents」と題した記事を公開した。この記事では、Gmail・Notion・Gitなど複数のソースを接続し、AIエージェントが能動的に参照できるローカルWikiメモリを生成・維持するOSSツール「OpenWiki Brains」について詳しく紹介されている。
「教えていないことも知っている」エージェントを作る
エージェントにコンテキストを持たせる方法として、ChatGPTやClaudeの組み込みメモリが広く使われている。しかしこれらはリアクティブ(受動的)だ。ユーザーが明示的に伝えた情報、あるいは会話から推測できる情報しか記憶しない。
問題は、実務上の重要な情報の大半がチャット外に存在することだ。Notionに落ちたミーティングメモ、Gmailのスレッドにあるプロジェクトのやりとり、Twitterでブックマークした技術記事——これらをエージェントが参照するには、毎回手動でコピペするか、その場で検索させるしかなかった。
OpenWiki Brainsはこの問題に対して「プロアクティブメモリ」という考え方で応える。接続したソースを定期的にクロールし、関連情報を自動でローカルのMarkdown Wikiに書き出す。エージェントはそのWikiを参照することで、ユーザーが明示的に伝えていないコンテキストにもアクセスできる。
なお、プロアクティブメモリはRAGやMemory-Augmented Agentと混同されやすいが、設計思想が異なる。RAGは「クエリが来たときに外部ストアを検索する」リアクティブな仕組みであり、Memory-Augmented Agentは過去の会話履歴を保持・要約するアプローチが中心だ。OpenWiki Brainsはそれらとは異なり、クエリとは非同期にバックグラウンドでソースをクロールしてWikiを継続更新する点が特徴で、エージェントが推論を始める前から文脈が用意されている状態を作ることを目指している。
対応コネクタと動作の仕組み
OpenWiki 0.1.0で新たに追加された「Personal Brain」モードが中心機能だ。セットアップ時に「何に注目するか」をプロンプトで指定すると、以下のソースから情報を収集してWikiを生成する。
- Gmail — 最近のメール
- Notion — ワークスペース内の関連ドキュメント
- Gitリポジトリ — 最近のコミット
- Twitter/X — タイムラインやブックマーク
- Hacker News — 最近の投稿
- Web検索
- (Slackは近日対応予定)
コネクタには2種類の動作モードがある。GmailやTwitter/Xのように確定的に取得できるもの(フィードをそのままフェッチ)と、NotionやWeb検索のようにエージェントが能動的に探索するものに分かれる。後者はユーザーが指定した「探すべきこと」に基づいてエージェントが検索を実行する。

ローカル動作だからこそ「常に最新」が成立する
Wikiはローカルのファイルシステム上にMarkdownで保存される。これにより、スケジュールジョブを走らせるだけでWikiを更新できる。サーバーのプロビジョニングも常駐プロセスも不要で、設定した間隔でコネクタから情報を取得してディスク上のWikiを更新する仕組みだ。
「一度設定して、あとはOpenWikiにバックグラウンドで維持させる」というのが想定ワークフローである。
Markdownを採用した理由についても言及がある。人間が読みやすく、エージェントが扱いやすく、ファイルシステム上で直接確認できる透明性が利点だという。将来的にはページ間リンクやセマンティック検索、よりリッチな構造化形式への発展も検討しているとされている。
コードベース向けの「Code Brain」は継続
OpenWikiはもともとコードベースのドキュメント自動生成CLIとして公開されていた(GitHub)。この機能は「Code Brain」として引き続き利用可能だ。Gitリポジトリ内で実行するとopenwikiディレクトリにWikiを生成し、コードの変更に合わせて更新し続ける。
Personal BrainとCode Brainは目的が異なるため分離して設計されている。Code Brainはリポジトリ構造・Gitの歴史・ファイル間の依存関係・コーディング規約に特化し、Personal Brainは業務全体の横断的なコンテキスト管理を担う。
すぐ試す
npmで即座に導入できる。
npm install -g openwiki@latest
openwiki personal --init
リポジトリはgithub.com/langchain-ai/openwiki、npmパッケージはnpmjs.com/package/openwikiで公開されている。
今後の改善予定
今後の改善予定としては、LangSmith トレースやClaude/Codexローカルセッションとの連携、フルテキスト検索・セマンティック検索・MCP(Model Context Protocol)による検索強化が挙げられている。
詳細はOpenWiki Brains: Proactive Memory for AI Agentsを参照していただきたい。