7月11日、The Decoderが「OpenAI's GPT-5.6 Sol autonomously post-trained the smaller Luna model with a "fairly underspecified prompt"」と題した記事を公開した。OpenAIの最新モデルGPT-5.6 Solが、小型モデルLunaのポスト学習を曖昧な指示だけで自律的に完遂し、RSI集計スコアでGPT-5.5を16.2ポイント上回る結果を出したという。「AIがAIを訓練する」という構図が、実験室の仮説から実際の研究業務へと踏み込んだ事例だ。
AIがAIを訓練する——GPT-5.6 Solが自律的にLunaをポスト学習
OpenAIの新フラッグシップモデルGPT-5.6 Solが、小型モデルLunaのポスト学習(事前学習後の追加訓練)を自律的に実施した。OpenAIの研究者がSolに与えたのは、「fairly underspecified prompt(かなり曖昧な指示)」だけだった。
具体的には、Codexプラットフォームを通じて渡されたその指示は、「適切なトレーニング設定を見つけ、GPUを選択し、学習スクリプトを起動し、正常に動作しているか確認せよ」という内容のものだ。指示の詳細は一部が伏せられた状態で公開されている。

GPT-5.6 SolへLunaのポスト学習を指示するために使われた(一部伏せ字の)プロンプト。トレーニング設定、GPU選択、スクリプト起動、実行確認が含まれる。|画像: OpenAI
Solはこの指示を受け、人間の介入なしにトレーニング設定の選定からスクリプトの実行・監視までを完遂した。その結果、Lunaの性能は実際に向上した。OpenAIの研究者であるKathy Shi氏はプレゼンテーションの中でこう述べた。
「以前はOpenAIのシニアリサーチャーのチームが取り組んでいた作業が、今や自動化された研究者として非常に近いところまで来ていると感じる」
RSIベンチマークでGPT-5.5を16点上回る
この能力を定量的に評価するため、OpenAIは実際のAI研究タスクをベースにした内部評価スイートを構築した。対象タスクは、研究システムのデバッグ、カーネルや学習レシピの最適化、機械学習実験の実行、そして別モデルの改善など、研究業務の実態に即した内容だ。
RSI(Recursive Self-Improvement)インデックスは、AIシステムが自分自身または他のAIシステムを改善する能力を定量評価するためにOpenAIが用いている内部指標で、この記事ではGPT-5.6世代の評価軸として使われている。※なお、RSIという概念自体(AIが自己改善を繰り返すフィードバックループ)はAI安全研究において長年議論されてきたものだが、ここで示されるスコアはOpenAI独自の評価スイートによるものであり、外部標準とは異なる点に留意されたい。(※編注)
OpenAIによれば、GPT-5.6 SolはこのRSI集計スコアでGPT-5.5より16.2ポイント高いスコアを記録した。ベンチマーク上の序列はSol、Terra、Lunaの順となっており、Terra・LunaはいずれもGPT-5.6ファミリーのバリアント(能力規模の異なる派生モデル)として位置づけられている。これらGPT-5.6の各バリアントがGPT-5.5、GPT-5.4を上回る形だ。

GPT-5.6 SolのRSI集計スコアはGPT-5.5を16.2ポイント上回る。|画像: OpenAI
なお、競合のAnthropicは6月初旬に「完全な再帰的自己改善はまだ達成されていない」と表明しつつも、「ほとんどの機関が準備できているより早く到来しうる」と警告している。Anthropicのこの見解はブログ記事として公開されており、ClaudeはすでにAI研究の主要パラダイムシフト間における漸進的な作業を担えるようになっており、人間が方向性の意思決定に関与する割合は一桁台のパーセンテージにとどまるという。OpenAIのSolによる今回の事例は、そうした業界全体の方向性と軌を一にしている。
研究者1人あたりのトークン出力が2倍超に
OpenAIは、社内の研究者がGPT-5.6 Solをデバッグ、学習システム最適化、実験の実行、結果の読み取りまで開発サイクル全体で使用していると説明する。内部テスト中でも、アクティブな研究者1人あたりの1日平均トークン出力はGPT-5.5が記録した従来ピークの2倍超に達した。研究者あたりのプルリクエスト数や実験数も増加し、アイデアから結果への転換速度が上がったとしている。
過去6か月の社内導入数字も示されており、内部コーディング推論に割り当てられたコンピューティングの割合は100倍増、エージェントベースのトークン使用量は約22倍増となった。OpenAI自身もこれらの指標が研究の進捗を直接測るものではないと認めているが、AI支援作業のスケールアップがいかに速いかを示すものとしている。
詳細はOpenAI's GPT-5.6 Sol autonomously post-trained the smaller Luna model with a "fairly underspecified prompt"を参照していただきたい。