7月8日、Phoronixが「Wayland No Longer Considered Experimental For Linux Mint's Next Cinnamon Release」と題した記事を公開した。Linux MintのデスクトップシェルであるCinnamonにおいて、Waylandサポートが「実験的(experimental)」フラグを外れ、次期リリースでX11と並ぶ正式サポートに昇格することが明らかになった。
GNOMEが2022年のGNOME 42でWaylandをデフォルトセッションに切り替え、KDE PlasmaがPlasma 6(2024年)でWaylandファーストへ舵を切るなか、CinnamonのWayland対応だけが長らく「実験的」にとどまり続けていた。理由はシンプルで、CinnamonはX11を前提として深く設計されたデスクトップ環境だ。独自フォークのウィンドウマネージャーMuffin(MutterをベースにCinnamonがフォーク)やUI描画基盤のClutterとの統合、マルチモニター・HiDPI対応など、Wayland移行には多くのレイヤーでの作業が必要だった。それだけに、今回の「正式サポート」宣言はLinuxデスクトップ全体のWayland移行においてひとつの節目となる。
Linux Mintチームの公式見解
Linux Mintチームが公開した6月の開発サマリーでは、次期Cinnamonについて以下のように述べられている。
「Waylandに力を入れて取り組んだ結果、安定していてX11とほぼ同等の体験が得られるレベルに達した。Waylandサポートはもはや『実験的』とは見なさない。次期Cinnamonでは、X11とWaylandの両方が完全にサポートされる。」
今回実施された主な改善
今回のWayland対応で特に重要な改善を挙げる。
HiDPIの完全対応は、高解像度ディスプレイ環境でのWayland利用を現実的なものにする。これまでHiDPI環境ではX11セッションを使い続けるユーザーが多く、Wayland移行の実質的な障壁となっていた。
マルチモニターサポートの改善も、実運用上の障壁を下げる重要な変更だ。複数画面構成はWaylandコンポジター実装の難所として知られており、各デスクトップ環境が対応に時間をかけてきた領域である。
そのほか、以下の修正も実施された。
- ウィンドウ・メニューの正しいマッピング処理(画面上の座標とコンポジターの座標系のズレ解消)
- フォーカス移動の意図しない乗っ取り(focus stealing)防止の修正
- Cinnamon上でのWaylandクラッシュシナリオへの追加対処
- ハードウェアアクセラレーションの改善
- ウィンドウ進行状況(window progress)の対応(タスクバーにファイルコピーなどの進捗をアイコンバッジとして表示する機能)
- セッション関連の修正
Wayland固有の対応に加え、X11環境にも影響する共通部分の改善も行われた。具体的には、systemdのgraphical-sessionターゲット(ログイン後のグラフィカルセッション全体を管理するsystemdの単位)への対応と、MuffinがすべてのClutterアクター(UI要素の描画単位)の座標・サイズを丸め処理するよう変更された。後者はピクセル境界のズレによる描画崩れを防ぐためのものだ。
X11との並行サポートを維持する判断
Waylandが正式化されても、X11を廃止しない方針を明示している点は重要だ。次期Cinnamonでは「X11とWaylandの両方を完全サポート」する。
Linux Mintはシンプルさと安定性を重視するディストリビューションとして知られ、ユーザー層には長年X11環境で運用してきた利用者が多い。UbuntuがWayland-デフォルトに舵を切り、X11オプションを将来的に廃止する方向性を示しているのとは対照的に、Linux MintはX11ユーザーを切り捨てない選択をした。この判断は、安定性と互換性を重視する同ディストリビューションの姿勢と一貫している。
次期CinnamonおよびLinux Mintの具体的なリリース時期は今回の発表では明示されていないが、開発の進捗はLinux Mint公式ブログで随時確認できる。
詳細はWayland No Longer Considered Experimental For Linux Mint's Next Cinnamon Releaseを参照していただきたい。