7月8日、PYMNTSが「NScale Lands $900 Million Credit Facility for Global AI Infrastructure Push」と題した記事を公開した。AIクラウド企業NScaleが、J.P.モルガンやゴールドマン・サックスをはじめとする12の大手金融機関から9億ドルのリボルビング・クレジット・ファシリティを調達したと報じている。2024年12月の初回調達から約1年7ヶ月、累計調達額は45億ドル超に達した。
12行の大手金融機関が名を連ねた9億ドル調達
NScale は、AIに特化したフルスタッククラウドプラットフォームを手掛けるスタートアップだ。今回調達した9億ドルのリボルビング・クレジット・ファシリティ(繰り返し引き出し・返済が可能な融資枠。日本でいう当座貸越枠に近い性質を持つ)は、J.P.モルガン、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、RBCキャピタル・マーケッツ、バンク・オブ・アメリカ、クレディ・アグリコルCIB、ドイツ銀行、みずほ、SMBC、TDセキュリティーズ、KeyBankの計12機関によるシンジケート(複数の金融機関が共同でリスクを分担しながら組成する協調融資)で組まれた。
日本のメガバンク3行(MUFG・みずほ・SMBC)が揃って名を連ねている点も注目に値する。NScale CEO兼創業者のJosh Payneは、「このファシリティの締結は、我々のプラットフォーム、資本構造、チームへの機関投資家からの確かな信頼を反映している」と述べた。
積み上がる調達額——約1年半で総額45億ドル超
今回の9億ドルは単発の話ではない。NScaleの資金調達の経緯を時系列で並べると、その規模感がわかる。
- 2024年12月:シリーズA 1億5,500万ドル
- 2025年9月:シリーズB 11億ドル
- 2025年10月:プレシリーズC SAFE 4億3,300万ドル(※SAFEとは「Simple Agreement for Future Equity」の略で、将来の株式取得権を付与する形の資金調達手段)
- 2026年3月:シリーズC 20億ドル
- 2026年5月:ノルウェー・ナルビクのデータセンター向け追加融資 7億9,000万ドル
- 2026年7月:今回のリボルビング・クレジット・ファシリティ 9億ドル
2024年12月の初回調達から2026年7月まで約1年7ヶ月で積み上げた調達総額は45億ドル超に達する。
なかでも注目されるのが、5月に発表されたノルウェー・ナルビクのデータセンタープロジェクトだ。同社はこれを「ノルウェー最大のAIインフラ投資」と位置付けている。北欧、とりわけノルウェーは豊富な水力発電による低廉な電力コストや冷涼な気候を背景にデータセンター立地として世界的に注目されており、NScaleはその地の利を戦略的に活用している。今回調達したクレジットファシリティは、米国・欧州・アジア太平洋地域へのさらなる展開を加速させるための財務的柔軟性を確保するものだと説明されている。
「汎用クラウドではなくAIワークロード専用」という差別化
PYMNTSの3月の報道によれば、NScaleは「汎用コンピューティング向けではなく、AIワークロード向けに設計された新世代のクラウドプラットフォーム」として位置付けられる企業群の一つだ。ソフトウェア・コンピュート・電力をまとめて提供するフルスタック構成で、エンタープライズ、政府機関、コミュニティ向けにサービスを展開している。
Josh Payneはシリーズ C発表時に「今後5年間で、AIはあらゆる産業・製品・職種に統合される。これは人類史上最大規模のインフラ整備につながる」と述べており、今回のクレジットファシリティはそのスピードとスケールを維持するための財務的な柔軟性を確保するものだと説明している。
AWSやGoogle CloudといったハイパースケーラーがAI需要に対応する一方、NScaleのようにAI特化で垂直統合型のプラットフォームを提供するプレイヤーが大型資金を調達するケースが相次いでいる。今回の調達はその流れを象徴する一件といえる。
詳細はNScale Lands $900 Million Credit Facility for Global AI Infrastructure Pushを参照していただきたい。