7月7日、The Decoderが「OpenAI and Anthropic are giving away millions in computing power to attract startups」と題した記事を公開した。OpenAIとAnthropicがスタートアップの囲い込みを目的に、数百万ドル規模のコンピュートクレジットを無償提供している実態について詳しく紹介されている。
1社のオファーがシードラウンド並みの規模に
AIスタートアップ間でのエコシステム争奪戦が、想像を超えた規模になっている。
AIボイススタートアップ「Dialogus」の創業者Hans Ibaraは、複数のAI企業やクラウドプロバイダーから受け取った競合オファーの合計が、**$300万(約4.5億円、1ドル=150円換算)超**に達すると述べている。PitchBookによると、これは米国の平均的なシードラウンドの調達額に匹敵する水準だ。
AIコーディングツール「Cursor」も7月5日まで75%割引を提供していたという。
クラウド各社も参戦、Googleは最大$50万+DeepMindエンジニアへのアクセス
コンピュートクレジットを提供しているのはAIモデル企業だけではない。
Google Cloudは最大**$50万のクレジット**、Geminiモデルへの早期アクセス、さらにDeepMindエンジニアとの接点まで提供していると、同社スポークスパーソンが明かしている。MicrosoftとAWSも同様の特典を用意している。
各社の狙いは共通している——スタートアップを早期に自社エコシステムへ取り込み、後から乗り換えにくい状況を作ることだ。
Y Combinatorをめぐる入札合戦
特に争奪戦の焦点となっているのが、シリコンバレーの著名アクセラレーター**Y Combinator(YC)**の参加企業だ。
5月、OpenAIのSam Altmanがエクイティ(株式)と引き換えに$200万のトークンクレジットを提供すると発表。Anthropicはすぐにエクイティなしで$50万と対抗した(従来のオファーは$3万だったため、大幅な引き上げとなる)。OpenAIもエクイティなしの$50万に加え、希望者には株式と引き換えに追加で$150万を提供するパッケージを提示した。
YCは年4コホート、各200社規模で運営されている。単純計算で、OpenAIとAnthropicが合わせて最大$8億のクレジットを配布し得る規模になる。
背景:IPOを控えた利益率改善と競合圧力
こうした大盤振る舞いには、両社が置かれた事業環境が影響している。
OpenAIとAnthropicはいずれもIPOを視野に入れており、利益率の改善が急務だ。一方で、中国発を含むオープンソースモデルや安価なモデルとの競争が激化している。
Anthropicは昨年後半、Claude CodeとCoworkの好調により売上が急成長した。なお、Claude CodeはAnthropicが提供するターミナル上で動作するAIコーディングエージェント、Coworkは同社のチーム向けコラボレーション機能であり、いずれも開発者・企業ユーザーの獲得を牽引しているプロダクトだ。OpenAIは今年3月のGPT-4.1リリースで追随し、現在はCodexツールをスタートアップ向けに積極的に売り込んでいる。
スタートアップに大量のクレジットを配って使わせれば、開発者がそのAPIに慣れ、プロダクトのコードベースに深く組み込まれる。切り替えコストが高まったところで課金する——これがエコシステム戦略の本質だ。
詳細はOpenAI and Anthropic are giving away millions in computing power to attract startupsを参照していただきたい。