7月8日、RuntimeWireが「Google adds background tasks and remote MCP to Gemini Managed Agents」と題した記事を公開した。GoogleがGemini APIのManaged Agentsにバックグラウンド実行を追加したことで、長時間タスクのタイムアウト問題に対処し、本番環境での運用を現実的な選択肢にしつつある。リモートMCPサポート・ファンクションコーリング・クレデンシャルリフレッシュも同時に追加され、エージェント基盤としての整備が一段と進んだ。
Managed AgentsとInteractions APIとは
Managed Agentsは、Gemini APIが提供するエージェント実行基盤だ。LLMの推論・ツール呼び出し・コード実行・ファイル操作といったエージェントループの管理をGoogle側が担い、開発者はその制御ロジックを自前で実装せずにエージェントを動かせる。
このManaged AgentsへのアクセスはGoogleが「今後の主軸」と位置付けるInteractions API経由で行う。旧来の generateContent APIは引き続きサポートされるが、エージェント関連の新機能はInteractions APIに集約される方向性が示されている。Interactions APIはセッション(Environment)の生成・再接続・状態管理といった概念を持ち、単発の推論リクエストとは異なる設計になっている点が特徴だ。
バックグラウンド実行が本番運用のカギを握る
今回のアップデートで最も実務的な変更はバックグラウンド実行の追加だ。
従来、エージェントが調査・コード実行・多段階タスクを処理する間、HTTPコネクションを開き続ける必要があった。長時間のエージェント実行はリクエストタイムアウトを超えることが多く、本番アプリケーションでの運用上の課題になっていた。
新しいAPIでは、リクエストに background: true を設定するだけで対応できる。APIはすぐにインタラクションIDを返し、アプリケーション側はその後にステータスをポーリングしたり、進捗をストリームしたり、後から再接続したりできる。サーバー側でジョブの実行が継続される仕組みだ。
Googleは今回の目的を、Managed Agentsを「デモ用のサンドボックスから、実際のワークロードに対して動かし続けられるもの」にすることと説明している。Google AI StudioおよびGemini APIのプロダクトリードであるLogan Kilpatrick氏はX(旧Twitter)上で、エージェントを本番投入する際の「コスト・摩擦・複雑さを減らす」ことが目標だと述べ、すでに「数千の顧客」がAPIを利用していると明かした(同社発表の数字であり、第三者による検証は行われていない)。
リモートMCPでプライベートなツールサーバーと接続
二つ目の本番向け変更がリモートMCP(Model Context Protocol)サポートだ。
MCPはAnthropicが提唱したオープンな標準仕様で、AIエージェントが外部ツールやデータソースと接続するためのプロトコル。Managed Agentsではリクエスト内に mcp_server ツールタイプを指定することでリモートMCPサーバーをツールとして登録できる。サーバーはStreamable HTTP上で動作し、名前・URL・オプションのヘッダー・許可ツールのリストを渡す形式になっている。
これにより、カスタムプロキシ層を自前で書かなくても、プライベートデータベース・社内サービス・サードパーティのツールサーバーへの標準的な経路が確保される。
ファンクションコーリング — カスタムロジックをエージェントループに組み込む
ファンクションコーリングも今回追加された。組み込みサンドボックスツールと並んでカスタム関数を追加できる仕組みだ。
組み込みツールはGoogleサイドで実行されるが、カスタムビジネスロジックは requires_action 状態に遷移し、開発者のクライアント側で関数を実行して結果を返す構成になっている。センシティブな処理を自社システム内に留めたいチームにとって、この実行場所の分離は重要な制御ポイントになる。
クレデンシャルリフレッシュ — 長期実行セッションの認証を維持する
長時間動作するエージェントにとって地味に重要なのがクレデンシャルのリフレッシュだ。既存の environment_id に新しいネットワーク設定を渡すことで、トークンの更新や短命なキーのローテーションができる。
ネットワークルールは新しいものに置き換えられるが、サンドボックス内のファイル・インストール済みパッケージ・クローンしたリポジトリは維持される。ヘッダー変換で注入されたクレデンシャルはイグレスプロキシで処理され、サンドボックス内にファイルや環境変数として露出しないとGoogleは説明している。
無料ティアとコストの問題
Kilpatrick氏は今回の発表で無料ティアでも利用可能であることを強調し、試用の敷居を下げる意図を見せた。ただしコストは依然として課題だ。
Googleの料金体系では、Managed Agentsはエージェントループ中に生成される中間入力・推論トークンを含む、基盤となるGeminiモデルの推論コストとして請求される。エージェントの単一リクエストが推論・ツール使用・コード実行・ファイル操作を繰り返しトリガーするため、トークン数が大きく積み上がることをGoogleも警告している。なお環境のコンピュートコストはプレビュー期間中は課金されない。
Kilpatrick氏はユーザーからの返信に対して、「銀行を破産させずに」エージェントを動かすことが目標だと認めつつ、「小さなモデルが助けてくれることを期待している」と答えており、コスト予測の難しさはまだ解決されていない課題として残る。
現時点ではまだプレビュー
Managed Agentsは引き続きプレビュー段階だ。Googleはドキュメントで、特にエージェントがデータを変更したり外部システムと連携したりするセンシティブなワークフローでは、アクションと出力を本番利用前にレビューするよう呼びかけている。今回の機能追加はその前提を変えるものではなく、実アプリケーションへの組み込みをより容易にした分、パーミッション・許可リスト・短命なクレデンシャルの設計がより重要になる。
詳細はGoogle adds background tasks and remote MCP to Gemini Managed Agentsを参照していただきたい。