7月8日、The Decoderが「Copilot goes cheap as Microsoft phases out OpenAI and Anthropic models to cut costs」と題した記事を公開した。MicrosoftがExcelやOutlookなどのCopilot製品においてOpenAI・Anthropicのモデルを自社開発のMAIモデルへ段階的に置き換えている動きを報じており、その背景にはコスト削減という明確な動機がある。
MicrosoftがOpenAI・AnthropicモデルをCopilotで段階的に置き換え
Microsoftは、ExcelおよびOutlookを含む複数のCopilot製品において、OpenAIおよびAnthropicのモデルを自社開発のMAI(Microsoft AI)モデルに切り替えつつある。Bloombergの報道によれば、MAIモデルはすでにExcelとOutlookで週に数万件のリクエストを処理しており、両アプリはそれまでOpenAI・Anthropicのモデルに大きく依存していた。
現時点ではMAIモデルが処理するのは全体のごく一部に過ぎず、完全な置き換えではなく段階的な移行が進んでいる状況だ。MicrosoftはSatya Nadellaのもとで時間をかけてサードパーティへの支出を削減していく方針を示しており、MAIモデルはGitHub Copilotにも展開済みで、独自の音声文字起こしモデルがTeamsにも近く実装される見込みだ。
コスト削減が最優先――Suleyman発言が露骨に
この動きの背景には、コスト削減という明確な動機がある。MicrosoftのAI責任者であるMustafa Suleiman(ムスタファ・スレイマン)は6月に「Anthropicには多額の支払いをしている。我々の目標はそのコストを削減し、最終的にゼロにすることだ」と公言している。
特に矛盾を感じさせるのは、MicrosoftがOpenAIやAnthropicへのベンダーロックインを問題視し、自社をプラットフォーム中立な選択肢として打ち出してきたのと同時期に、このコスト削減方針を進めている点だ。
さらにCEOのSatya Nadellaは、AIの課金体系を定額サブスクリプションから使用量ベースの従量制へシフトする可能性を示唆している。ただしこれはあくまで示唆の段階であり、具体的な料金体系の変更は現時点で確定していない。想定されるシナリオとして、MAIモデルをデフォルトの安価な選択肢とし、OpenAIやAnthropicのモデルはプレミアムアドオンとして追加料金で提供する形が挙げられているが、実際にその構成が採用されるかは今後の発表を待つ必要がある。
「クリーンなデータ」の主張にも疑義
Microsoftは、MAIモデルが商業利用に適したライセンス済みデータで学習されており、企業利用に安全だと訴えている。しかし技術論文によれば、実際にはCommon Crawl(ウェブを広範にクロールした公開データセット)を使用しており、AI学習目的での利用は法的に決着していない。他社も同様の手法を採っているが、Microsoftが「特にクリーン」と強調している点で、主張との乖離が際立っている。
企業がCopilotを採用する際の判断材料として「ライセンス済みデータによる学習」を重視しているケースは少なくなく、この点はユーザー・法務双方の観点から今後議論を呼ぶ可能性がある。
MAIモデルの実力はどの程度か
Microsoftは5月のBuild 2026カンファレンスで7つの新AIモデルを発表し、その中には初の推論モデルMAI-Thinking 1も含まれていた。Microsoftは人間による評価でClaude Sonnet 4.6やOpus 4.6と同等の精度があると主張した(なお、これらのバージョン番号は元記事の記載に基づく)。
しかし当時公開されたベンチマークでは異なる結果が示されており、MAI-Thinking 1はOpenAIやAnthropicの競合モデルに大きく劣り、DeepSeek V3.2と同程度の水準にとどまっていた。
現状のベンチマーク結果を踏まえると、段階的な置き換えが進むにつれてCopilot・Officeのユーザーが受け取るAIの品質が変化する可能性は否定できない。
MicrosoftとOpenAIの資本関係という構造的矛盾
この動きをより複雑にしているのが、MicrosoftとOpenAIの資本関係だ。MicrosoftはOpenAIに対して130億ドル超を投資した最大の外部投資家であり、AzureをOpenAIの独占クラウドインフラとして提供する深い事業上の連携関係にある。それと同時に、OpenAIのAPIコストを削減し自社モデルへ置き換えるという今回の動きは、投資先への依存を戦略的に引き下げるものだ。
AnthropicについてもMicrosoftは直接の投資家ではないが、Azure上でのAnthropicモデル提供を通じてビジネス上の関係を持っている。Suleymanの「コストをゼロにする」発言は、こうしたパートナー関係とコスト最適化の間に生じた緊張を如実に示している。AIプラットフォームのビジネスモデルが今後どう変質していくかを考える上で、見逃せない動きだ。
詳細はCopilot goes cheap as Microsoft phases out OpenAI and Anthropic models to cut costsを参照していただきたい。
