7月2日、Addy Osmaniが「Agentic Autonomy Levels」と題した記事を公開した。この記事では、AIエージェントの自律性を「エージェンシー」と「オーケストレーション」の2軸で捉える6段階フレームワークについて詳しく解説されている。
1軸モデルの限界と2軸への拡張
AIエージェント自律性の議論では、Steve Yeggeが「Welcome to Gas Town」で提示した単軸のはしご型モデルがよく参照されてきた。「AIをどれだけ信頼するか」を1つの数値で表す、シンプルで直感的なモデルだ。

しかしOsmaniは、単軸モデルには根本的な問題があると指摘する。「1つのエージェントにどこまで任せるか」と「複数エージェントをどう束ねるか」という、本質的に別の問いを混同しているというのが核心だ。
そこで提案されるのが、エージェンシー(1つのエージェントをどこまで自律させるか)とオーケストレーション(複数エージェントをどう協調させるか)の2軸モデルだ。

3つのフェーズと6つのレベル
この2軸は実用上、3つのフェーズに対応する6段階として整理される。

フェーズ1:アシスト(人間が主導)
- Level 0 - Assist:エージェントは提案するだけ。インラインサジェストやチャットでの相談がこれにあたる。コストの高いミスや、自分の判断を形成したい場面で使う。
- Level 1 - Supervised Action:エージェントが実際にコード編集やコマンド実行を行うが、重要な操作の前に必ず確認を求める。多くの人のデフォルト姿勢だ。失敗パターンは「承認疲れ」——承認が増えるほど、内容への注意が薄れる。
フェーズ2:エージェント主導(人間が監視)
- Level 2 - Scoped Task Delegation:明確なゴールと完了条件を持つタスクをエージェントに委任する。ソフトウェアエンジニアリングの現在の重心がここだ。検証は人間の目視から、テスト通過・型チェック・スクリーンショットといった「エージェントが生成できるエビデンス」へと移行しつつある。
- Level 3 - Goal-driven Autonomy:「ページのTTIを1秒以下に削減せよ」のような目標を与え、条件を満たすまでエージェントが自律的にplan→act→test→reviewを繰り返す。Claude Codeの
/goal、/loop、Codexの「Goal mode」がこれに相当するとされているが、これらの機能は各ツールのバージョンによって提供状況が異なる場合があるため、利用時は公式ドキュメントで現行バージョンの対応状況を確認することを推奨する。停止条件が自動計測できるものでなければ機能しない点に注意が必要だ。「UXを全般的に改善する」のような曖昧な目標は不可。
フェーズ3:オーケストレーション(例外管理)
- Level 4 - Parallel Delegation:複数のエージェントを並列に走らせ、それぞれが独立したコードスライスを担当する。失敗パターンは「偽の並列性」——スライスが重複していると、成果物の増加ではなくマージコンフリクトと重複決定が生まれる。各エージェントはファイルとステータスを独立して所有する必要がある。またエージェント数に比例してトークンコストが増加する点も考慮が必要だ。
- Level 5 - Managed-by-exception Orchestration:マネージャーエージェントがトリガー(新しいIssue、スケジュール等)で起動し、ワーカーエージェントに仕事を割り振り、進捗を監視し、失敗時にリトライ・エスカレーションし、最終的にPRなどの成果物を返す。イシュートラッカーが入力、マージ済みPRが出力の「ソフトウェアファクトリー」だ。OpenAIはこの設計のためにSymphonyというオーケストレーション仕様を提案しており、各IssueがLinearボード上の独自エージェントワークスペースを持つ構成を採用している。
自律性の上限はリスクと可逆性で決まる
Anthropicの研究では、約23万5000人・40万セッションのClaude Code利用データを分析した結果、人間が計画判断の約70%を担い、Claudeが実行の約80%を担うという分担が明らかになっている(数値はいずれも同研究論文より)。高い自律性とは「人間をループから外すこと」ではなく、「一つひとつのステップを実行することから、次の方向を決める役割へ移行すること」だとOsmaniは述べる。
エージェントに高い自律性を与えてよいかを判断する際、常に問うべき3つの問いがある:
- 間違いをどれだけ早く検知できるか?
- 実行内容をどれだけきれいに取り消せるか?
- 正しいことを何で証明できるか?
3つすべてに対して「すぐには無理」「取り消しが困難」「サマリーを信頼するだけ」なら、それは高い自律性を与えるべきタスクではない。
エージェント実行前の「契約」
Osmaniは、エージェントを動かす前に以下の要素を定義する「コントラクト」を設けることを推奨している:
- ゴール:活動や手法ではなく、達成すべきアウトカム
- スコープ:対象領域と許可する手法
- 非ゴール:目的に含まれないこと
- ツールと権限
- 停止条件:理想は計測可能な変数
- エビデンス:エージェントから独立して成功を確認できる具体的なテスト・ログ・スクリーンショット等
- エスカレーション条件
- バジェット:時間・トークン・試行回数・並列度の上限
避けるべき4つのアンチパターン
記事の末尾ではアンチパターンも整理されている。特に「自律性をステータスにすること」——高い自律性レベルを能力の証明として扱い、検証が追いついていないのにエージェントを高い温度で動かすこと——が最初に挙げられている。自律性レベルはタスク名ではなく、検証プロセスの成熟度に従うべきだというのが一貫したメッセージだ。残る3つのアンチパターン(停止条件の曖昧化、スコープ境界の未定義、エビデンス不在での成功判定)も含めた全容は元記事で確認できる。
詳細はAgentic Autonomy Levelsを参照していただきたい。