7月5日、Steef-Jan Wiggersが「Claude Reaches GA on Microsoft Foundry: European Enterprises Cannot Deploy It」と題した記事を公開した。この記事では、ClaudeがMicrosoft Foundryで正式GA(一般提供開始)を迎えたものの、データレジデンシーの問題により欧州企業が実質的に利用できない状況について詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。
ClaudeがMicrosoft FoundryでGA——しかし欧州では使えない
AnthropicとMicrosoftは、Claude Opus 4.8およびClaude Haiku 4.5のMicrosoft Foundryにおける正式GA(General Availability)を発表した。Azureネイティブな認証(Entra ID)・課金・ガバナンスと統合されており、既存のMACC(Microsoft Azure Consumption Commitment)の消費枠でそのまま利用できる。数日後にはClaude Sonnet 5も追加され、8月31日まで入力100万トークンあたり$2、出力100万トークンあたり$10のプロモーション価格で提供されている。
調達プロセスや新規ベンダー契約の壁に阻まれていたチームにとって、既存のAzure契約の枠内で使えるという点は確かに実務上の障壁を取り除く。
ところが、この発表に対するLinkedInやRedditのエンジニア・アーキテクト層の反応は、「データはどこに行くのか」という一点に集中した。
欧州データゾーンが存在しない
CETINのTransformation責任者であるJiri Formanがこう問いかけた(LinkedIn上で49件のリアクションを集めた):
Hosted on Azure with all data processing possible within EU?
(Azure上でホストされているが、EUの範囲内でデータ処理できるのか?)
SobiのグローバルAIチームリードであるMurat Yasartasの回答は明確だった:
Unfortunately it's not, data zone is only US based for now.
(残念ながらそうではない。データゾーンは現時点でUSのみだ)
Microsoftの公式ドキュメントもこのアーキテクチャを裏付けている。「Azure上でホスト」のオプションを選択しても、プロンプトと出力に対してAnthropicが独立したデータプロセッサーとして機能する。デプロイオプションは「Global」または「DataZone」のみで、Claudeモデル向けの欧州データゾーンは現時点で存在しない。また、自動セーフガードがコンテンツをAnthropicのTrust & Safetyレビューにフラグする可能性があり、例外的にAzure境界外にデータが出る場合もある。
Redditでは、オランダの金融サービス企業を担当するエンジニアがこう述べた:
My client, a big Dutch bank, does not allow the use of Anthropic models through Foundry due to this reason.
(クライアントである大手オランダ銀行は、この理由からFoundry経由のAnthropicモデル利用を許可していない)
スウェーデンのエンドポイントが割り当てられてはいるが、「Global Standard」デプロイのため推論処理は米国インフラにルーティングされる可能性がある。
OpenAIモデルとの決定的な差
この問題がより鮮明になるのは、AzureネイティブのOpenAIモデルとの比較だ。MTS(Member of Technical Staff)のGregor BeusterはLinkedInで指摘した:
Still a marketplace model with Anthropic being the operator, which will ruffle some feathers in German enterprise. OpenAI models being Azure native are much easier to get approved.
(依然としてAnthropicがオペレーターのマーケットプレイスモデルだ。ドイツ企業では波紋を呼ぶだろう。AzureネイティブのOpenAIモデルの方がはるかに承認を得やすい)
構造上の差異は明確だ。AzureのOpenAIモデルはMicrosoftが推論を運用しデータがAzureの信頼境界内に留まるファーストパーティ提供であり、EU向けデータゾーンデプロイも利用可能だ。一方、Foundry上のClaudeはAnthropicが推論を運用するサードパーティのマーケットプレイス提供であり、Anthropicが米国企業である以上、米国CLOUD法の適用対象となる。
さらに、AWS BedrockやGoogle Vertex AIでClaudeを使う場合には提供されているデータレジデンシー保証が、Foundryには現時点で適用されない。Anthropicのドキュメントがサードパーティデプロイのデータレジデンシーガイダンスとして言及しているのはVertex AIとBedrockのみで、Foundryは明示的に除外されている。
AnthropicのリージョナルコンプライアンスページにはMicrosoft Foundryの欧州対応について「Coming 2026」と記載されているが、具体的な日付はない。2026年4月に投稿されたMicrosoftのQ&A質問——より具体的なタイムラインを求めるもの——は、3ヶ月経った今も回答ゼロのままだ。
BDOのデジタルプロダクト管理責任者Alistair Doranは辛辣にこう述べた:
It is very, very disappointing to see it's not available in the European or UK region. And considering what's going on between Anthropic and the US government, you would have thought they might have started prioritising Europe a little bit more.
(欧州・英国リージョンで使えないのは非常に失望した。AnthropicとUS政府との関係を考えれば、もう少し欧州を優先し始めてもよかったはずだ)
「GA」なのにキャパシティ申請が必要
データレジデンシーとは別に、キャパシティ問題も指摘されている。Microsoft MVPのJannik Reinhardはこう述べた:
For me it is GA if there is capacity in the MS data centers. For now I always have to request this via a form and need luck to get it approved. This is for me not a professional service.
(フォームで申請して承認を祈る必要があるのなら、私にとってGAとは言えない。これはプロフェッショナルなサービスではない)
GDPRや金融規制、医療データ要件のもとで動く欧州企業にとって、今回の発表は実質的に何も変えない。Foundryの正式GAは、厳格なデータレジデンシー要件を持たない米国企業にとっての進展であり、欧州企業向けの「Coming 2026」がいつになるのかは依然不明のままだ。
詳細はClaude Reaches GA on Microsoft Foundry: European Enterprises Cannot Deploy Itを参照していただきたい。