7月4日、James Nanzoが「Texas Gov. Abbott says AI data centers must bring their own power, water, or stay out of rural Texas」と題した記事を公開した。テキサス州の農村部でAIデータセンター建設への反発が高まるなか、グレッグ・アボット知事が「電力も水も自前で調達しなければ農村には来るな」と業界に迫っている。住民の3分の2近くが反対するという世論調査の数字が、その背景の深刻さを物語っている。
「金も電気も水も自前で持ってこい」
6月30日、アボット知事はイーストテキサスのブラード(Bullard)での選挙運動中、「農村テキサスのコミュニティにAIデータセンターを建設することを禁じなければならない」と発言した(Texas Tribune報道)。
さらに今月初めに示した指令を改めて強調し、次のように述べている。
「テキサスへの進出を検討しているAIデータセンターは、自前の資金を持ち込み、自前の電力を持ち込み、水を再利用し、州民の電気代を下げる形で事業を行わなければならない。」
これは6月10日付の指令で示した要件——追加発電能力の自前調達・インフラ費用の自己負担・水の再利用・近隣住宅への影響を抑えるセットバック規制(建物と隣地の間に設ける離隔距離の規制)——をさらに踏み込んだ内容だ。なお、元記事の範囲では、この6月10日付の指令が法的拘束力を持つ規制なのか、あくまで知事としての政策的意向表明にとどまるのかは明確にされていない点には留意が必要だ。
なぜ今テキサスで問題になっているのか
背景にあるのは、テキサス州で計画されているデータセンター建設の急増だ。Texas Tribuneの分析によると、計画中の施設のうち約半数が非法人地域(unincorporated area=市町村に組み込まれていない農村部)への建設を想定しており、現状の12%から大幅に増加する見通しだ。
住民の反発も強い。テキサス大学/テキサス政治プロジェクトの最新世論調査では、近隣へのデータセンター建設に対する反対意見が広範に見られ、農村部では住民の3分の2近くが建設に反対している。
住民が懸念しているのは主に以下の点だ。
- 電力需要の増大による電気代の上昇
- 大量消費による水供給への圧迫
- 大気質への悪影響
AIと電力グリッドの関係は複雑でもある。AIは電力需要の予測精度向上や再生可能エネルギーの統合に貢献できる一方、AIモデルの学習・推論に使うサーバー群は膨大な電力と冷却水を消費する。この矛盾が、特にトランプ大統領を支持してきた農村の共和党支持地域で顕在化している。
州・自治体レベルでの対応
アボット知事は以前から、データセンター開発が「テキサス州民と地域コミュニティの犠牲の上に成り立ってはならない」と主張してきた。
自治体レベルでも動きが出ている。複数の郡がモラトリアム(開発一時停止)を検討したが、デベロッパー側からの法的圧力で難航している。一方、サンマルコス市(San Marcos)はテキサス州初のデータセンター建設禁止条例を制定したが、州議会議員からの異議申し立てに直面する可能性がある。
都市部は一般的にゾーニング(用途地域)規制の権限が強いが、農村部は手続きが複雑で対応に差が生じている。
インフラ規制の新たな潮流
「自前で電力と水を用意しろ」という要求は、データセンター業界にとって従来にない厳しい条件だ。大規模施設は通常、地域の電力グリッドや水道インフラに接続することを前提として立地を選定する。それを否定する形での州レベルの規制が現実味を帯びてきたことは、業界全体にとって無視できない先例となりうる。
テキサスの動向が注目されるのは、同州が全米でも有数のデータセンター集積地であるためだ。アボット知事の強硬姿勢が条例や法律として実効性を持つかどうかはなお不透明だが、住民の3分の2が反対するという民意の重さは、他州の政治家にとっても参照点になり得る。ジョージア州やバージニア州など、同様に大規模データセンターの建設ラッシュに直面している州でも、電力・水資源の負担をめぐる議論が活発化しており、テキサスの規制論議がその方向性に影響を与える可能性はある。業界側の公式な反応は元記事の範囲では明示されていないが、法的圧力を通じた自治体へのけん制という構図はすでに表れている。
詳細はTexas Gov. Abbott says AI data centers must bring their own power, water, or stay out of rural Texasを参照していただきたい。