7月1日、Prismaが公式ブログにて「Claude Generated 50 Websites Overnight with Prisma Compute」と題した記事を公開した。AIエージェントにPrismaのドキュメントとCLIを与え、一晩で50件のウェブサイトを自動生成・デプロイした実例を詳しく紹介している。
人間の承認を挟みつつ、朝には50サイトが完成していた
ブティック型ソフトウェアエージェンシーを運営するAli Fatemi氏は、AIエージェントを活用した新しいビジネス開発の仕組みを構築している。彼が取り組むのは、サービス業・代理店向けのアウトリーチ(営業接触)自動化システムだ。
このシステムの最大の特徴は二つある。一つは、エージェントが「Aliへの承認依頼」というステップを自ら挟む設計になっていること。もう一つは、その一連のループが実際にワンショット(一度の試行)でほぼ正常動作したことだ。この二点は本記事の後半で詳述するが、「AIが全自動で暴走する」のではなく、人間のチェックポイントを組み込んだ設計である点は最初に強調しておきたい。
処理フローは次のとおりだ:
- 特定の業種・地域でビジネスを探す
- ウェブサイトが存在しない、または古いものを特定する
- ビジネスを調査し、訴求角度を決める
- そのビジネス向けにカスタムサイトを生成する
- Aliに承認を求める
- サイトをデプロイして公開URLを取得する
- 「無料でサイトを作りました。ご覧ください」という内容のメールを送る
従来の営業メールが「お役に立てます」という約束から始まるのに対し、このシステムは先に価値を届けてから連絡するという逆転の発想で設計されている。Ali氏はこのメッセージをこう表現している:「あなたのビジネスには良いウェブサイトがないことに気づきました。無料版を作りました。見てみてください」。
このシステムを一晩走らせた結果、朝にはバンクーバーのスパ向けサイトが約50件生成されていた。
「生成」で終わらせない——公開URLまでを一つのループに
AIがコードを生成できることは今や珍しくない。問題は、生成されたコードを実際に動く場所に置けるかだ。モックアップや静的なHTMLファイルでは、ビジネスオーナーに見せられる「本物のURL」にはならない。
Ali氏がこの問題を解決したのがPrisma Computeとの組み合わせだ。
ここで一点補足しておく。PrismaといえばPrisma ORM——Node.js/TypeScript向けのデータベースORMとして広く知られているが、Prisma Computeはそれとは別の、比較的新しいホスティング・デプロイ機能だ。TypeScriptアプリをPrisma ORM・Prisma Postgresと同一のエコシステム内でデプロイ・運用できる仕組みを提供しており、CLIひとつで操作が完結する点がエージェントとの親和性を高めている。
手順はシンプルだった。ClaudeにPrismaのドキュメントを渡し、Prisma CLIをインストールさせ、デプロイスクリプトを自身で生成させた。生成された50件のウェブサイトは、一つのPrismaアプリ内にまとめてデプロイされ、それぞれが独立したURLを持つ形になっている。
Ali氏はこう語っている:
AIs are great with CLIs. I just told Claude: this is the docs, install the CLI and use the CLI to do stuff.
— Ali Fatemi
CLIはエージェントとの相性が良い。ドキュメントを読み、コマンドを実行し、出力を見てリトライする——そのサイクルをエージェントはそのまま実行できる。
セットアップの手間が「ループの速度」を左右する
Ali氏が特に強調したのは、セットアップの簡潔さだ。比較対象としてRailwayが挙がっており、「Prismaの方が動くURLを得るまでが簡単だった」と述べている。
Prisma was super simple to set up. I created an account and it was ready for me to deploy stuff.
— Ali Fatemi
It has been working pretty great. Claude almost one-shot this solution.
— Ali Fatemi
「ワンショット」とは、AIが修正なしに一度の試行で正しい出力を出すことを指す。デプロイ設定のような複雑な工程でこれが成立したことは、エージェントとインフラの接続コストが着実に下がっていることを示している。
Ali氏が次に目指しているのは、ジェネレーターアプリ自体をPrisma Compute上にデプロイし、自分のラップトップを開いていなくてもシステムが動き続ける状態だ。また、ウェブサイトを生成した先——どのビジネスに連絡済みか、何をデプロイしたかといった状態管理にはPrisma Postgresを使い、アプリと同じ場所にデータを置く構成を採っている。
アウトリーチ手法としての有効性と倫理的な文脈
「依頼を受けていないのにサイトを作って送りつける」という手法は、受け手によっては不快に映る可能性もある。スパムとの境界線や、無断で企業イメージを模したサイトを公開することへの懸念は、読者によっては感じるところだろう。
この点について記事内で明示的な言及はないが、フローの設計に注目すると、Aliへの承認ステップがデプロイ前に挟まっていること、また実際にメールを送る前に人間が内容を確認する構成になっていることは、完全な無人自動化との違いとして読み取れる。「AIが全自動で送信まで行う」のではなく、送付判断には人間が関与するループになっている。
※編集部の考察:未依頼のサイト制作を活用したアウトリーチ自体は、デジタルマーケティングの文脈で「バリューファースト」アプローチとして以前から議論されている手法だ。AIによってその実行コストが劇的に下がったことで、倫理的・法的な検討の必要性も改めて浮上する。受け手の同意取得や、無断公開の是非については、実務で応用する場合に各自で判断が求められる領域だろう。
AIエージェントがデプロイまでを担うとき、インフラに求められるもの
AIコーディングエージェントが普及するにつれ、生成されたコードの「その後」が課題になる。
- どこで動かすか
- 状態(ステート)はどこに置くか
- エージェントはどうやって変更をデプロイするか
- 失敗時の出力をどう検査するか
- 最終的にどう公開URLを得るか
これらのステップがベンダーをまたぐたびに、エージェントはコンテキストを失い、人間がつなぎ合わせる作業が発生する。Prisma Computeは、TypeScriptアプリのデプロイ、Prisma ORMによるデータモデリング、Prisma Postgresによるデータ永続化、そして一つのCLIでの操作をまとめて提供することで、この分断を減らす設計になっている。
I did not really think that was possible with AI, but it actually is working.
— Ali Fatemi
自分で試したい場合は、Prisma ComputeのクイックスタートからエージェントにドキュメントとCLIを渡して始められる。
詳細はClaude Generated 50 Websites Overnight with Prisma Computeを参照していただきたい。